第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

救急外来看護

[O12] O12群 救急外来看護①

Fri. Oct 4, 2019 2:00 PM - 3:00 PM 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:望月 桂(杏林大学医学部付属病院)

[O12-3] 救急外来から始める早期退院支援への取り組み -退院支援問診票を活用しての現状と課題-

伊丹 香織, 長谷 恵, 竹谷 奈緒子 (徳島県立三好病院)

【はじめに】A病院が位置する医療圏は高齢化率37.7%という地域であり、平成29年度A病院の入院患者の高齢化率は78.6%であった。入院する患者は認知症や複数の疾患を合併する高齢者が多く、碓井らは「救命を意識した状況下において、退院支援の優先度は低くなるが、救命の先には患者の生活を見据えた看護が必要であり、退院支援の重要度は高く、可能な限り早期からの退院支援介入は必要である」と述べている。特に高齢者にとって入院環境の変化はリロケーションダメージが起こりやすくなることから早期退院支援が重要となる。このことから平成28年10月より入院前の生活状況などを救急外来看護師が聴取して、退院支援問診票(以下、問診票と略す)に記載し、入院時に病棟看護師に申し送る「救急外来から始める退院支援」に取り組んできた。
【目的】病棟看護師が退院支援を行う際に、退院支援問診票の重要視する項目と活用度を把握し、今後の課題を明らかにする。
【方法】
1.研究対象:A病院病棟看護師 98名(看護師長と緩和ケア病棟で勤務する看護師を除く)
2.調査方法:平成30年6月21日から平成30年7月5日の期間に、独自に作成した質問紙を用いて調査した。項目別に単純集計、比率、経験年数別によるカイ二乗検定、順位尺度を用いて集計した。
3.倫理的配慮:対象者には質問紙と共に研究の主旨や目的、方法についての説明文を配布し、回答は無記名式、参加は自由であり不参加でも何ら不利益を被らないことを記載した。質問紙の回収をもって同意を得たとした。また、発表にあたりA病院の倫理委員会の承認を得た。
【結果】質問紙の回収率は85.7%である。入院時に問診票の申し送りができていたのは78.3%であった。問診票は、病棟看護師が行う退院支援が必要な患者のアセスメントと抽出、入院前のイメージ、入院後の患者ケアに71.0%が役立っていると答え、患者や家族との対話に62.3%が活用していた。また、日常生活援助に関わる病棟看護師にとって最も重要視する項目は、1位から順に「移乗・移動」「認知機能」「排泄」「食事」「家族の状況」であった。しかし、問診票の情報をもとに直接ケアマネジャーなどに連絡して情報提供を求めることや、他部署・多職種との情報共有に活用したのは39.1%であった。
【考察】退院支援には「患者の情報」が必要である。救急外来では患者の処置・検査・診察介助の合間の限られた時間の中であっても、患者本人や家族・介護支援専門員や施設職員などから看護師が直接入院前の自宅での生活状況などの情報を聴取し、問診票へ記入して病棟看護師へと申し送っている。その中でも特に、日常生活援助に関わる病棟看護師にとって「移乗・移動」「認知機能」「排泄」「食事」「家族の状況」は最も重要視する項目であることが分かった。患者の病態に合わせて可能な限り入院前のADLの維持や、入院中のADL低下を予防する必要がある。問診票には、ADLについて「自立」「全介助」といった大まかな一次チェックをしているが、援助が必要な項目については詳細な情報を聴取し、具体的に記載しておく必要がある。そして、得られた情報から患者の生活背景がイメージでき、個々に合った環境やケアを提供することが求められる。そのため救外来看護師は情報収集能力を向上させることが必要である。また、問診票が病棟看護師だけでなく、医師や医療ソーシャルワーカー、理学療法士や薬剤師などの多職種に問診票の認知度、活用度、問診票に対する意見などを聴取し、早期退院支援の連携ツールにすることが今後の課題と考える。