第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

救急外来看護

[O14] O14群 救急外来看護③

2019年10月4日(金) 16:20 〜 17:20 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:新田 直巳(市立札幌病院 救命救急センター)

[O14-3] walk in患者に対する ERトリアージシステムの導入と検証

田尻 雄三, 丸林 美代子 (国家公務員共済組合連合会浜の町病院)

【目的】
A病院ERの看護師配置は一名体制で、ER混雑時は救急車搬送患者の対応が優先となる傾向があり、walk in患者の初期評価までの時間が長く、対応が遅れることが問題視された。2015年から独自に作成した緊急度判定シートを用いたトリアージシステム(以下トリアージ)を導入したが、定着していない。
今回、迅速評価を取り入れたトリアージを導入し、walk in患者に対し、受付から15分以内に看護師が初期評価を行うシステムを構築した。2018年4月より導入し、前後の評価と今後の課題について検証したので報告する。
【方法】
<A病院トリアージ>
①walk in患者受付から15分以内に下記6項目の初期評価を行い、優先診療の必要性を検討する
迅速評価項目:呼吸>30回/分、努力呼吸、冷汗などショック兆候、意識レベル低下(会話不可など)、活動性出血、吸気性喘鳴
②優先診療が困難な場合、過去に作成した緊急度判定シートにて評価を行い、JTASレベルに応じ、再評価を行う
③非該当の場合、すぐに診察が不可能であれば、30分以内の再評価を繰り返す
初期評価記録は、テンプレートを作成し、評価と記録の統一を図った
導入前後のwalk inから入院or転院に至った患者(以下患者)の初期評価までの時間と導入後の迅速評価該当率を評価し、課題を検証した。
導入前:2017年4月1日〜3月31日 対象370名(walk in1994名)
導入後:2018年4月1日〜3月31日 対象376名(walk in1749名)
【倫理的配慮】
得られたデータや分析結果は、個人が特定できないように配慮した
【結果】
患者の初期評価までに要した時間(分)は、2017年度が平均±SD=5.13±0.92(分)、2018年度が平均±SD3.52±0.48(分)であり、前後比較で有意差を認めなかった。診察まで待ち時間を要した患者を対象に、初期評価時間に対し比較検証を行った結果、2017年度対象171/370名:平均±SD=11.37±1.52(分)、2018年度対象191/376名:平均±SD=6.58±0.56(分)であり、前後比較で有意差を認めた(P<0.01)。患者の迅速評価該当率は、376人中92人(24.4%)。非該当患者の内、主訴が疼痛の患者は278人中81名(29.1%)であった。トリアージ導入後、全ての患者が30分以内に診察が開始されていた。
【考察】
診察待ち時間を要した患者において、トリアージ導入により初期評価までの時間短縮に繋がっていた。また、トリアージ導入後、最大待ち時間の減少(40分⇒10分)とほとんどの患者が10分以内に初期評価を実施されていたことが分かった。これはJTAS緊急レベルで推奨される評価時間であり、トリアージ導入により救急看護の質向上に繋がっていることが伺えた。迅速評価項目を提示し、記録のテンプレートを作成したことで、スタッフ間での差が少なく、導入から早期にシステム定着ができた結果と考えている。
トリアージ感度では、迅速評価の該当率は24.4%であり、多くの入院患者に該当していないことが分かった。より緊急性を示唆する状況を想定していた為、経過観察目的などでは該当しないことが要因と考えられた。感度は低いものの、迅速評価項目に対するアンダートリアージ症例は認めなかった。しかし、項目にない「疼痛」に着目した所、29.1%は迅速評価に該当しておらず、中にはwalk inから緊急手術となった症例も含まれていた。今後、疼痛評価を加えたシステムの再構築とスタッフ教育が課題である。