[O15-3] 救急初療で死別を経験する患者家族に対する看護実践上の困難さ
<研究の背景・目的>
救急初療で死別を経験する患者家族へのケアは、家族と信頼関係を築く間もないまま展開されるが、その短期間の関わりがその後の家族の悲嘆過程に影響するという意味で高度かつ重要な看護実践である。現場では看護師個々の判断に委ねられ、結果救命の場で看取りを繰り返し体験する看護師自身の不全感やバーンアウトという問題が生じている。本研究は、急性・重症患者看護専門看護師(以下CCNS)が捉えた救急初療で死別を経験する患者家族に対する看護実践上の困難を明らかにすることを目的とした。
<研究方法>
研究デザイン:質的記述的研究デザイン
研究参加者:救急初療での実務経験のあるCCNS10~20名
調査期間:2018年2月
データ収集と分析方法:インタビューガイドに基づき半構造的フォーカスグループインタビュー(以下FGI)を行い、内容分析を行った。
倫理的配慮:本研究は日本救急看護学会研究助成第56号の助成を受けて日本救急看護学会倫理委員会の承認を得た。データは個人が特定できないよう連結不可能匿名化を行った。
<結果>
研究参加への同意が得られ、かつFGIに参加可能であった11名のCCNSへ120分間のFGIを実施し計16のサブカテゴリが生成された。CCNSが捉えた困難は<初療という限られた環境の中でケアを行う難しさ><初療という限られた時間の中で悲嘆ケアを行う難しさ><受傷機転から死亡までの経緯がよくわからない患者家族に対応していく困難さ>といった限られた環境と時間、情報の中で対応しなければならない難しさをベースに抱えていた。そして<事故や自殺など予期悲嘆の経過を辿らない死が多いため、死に至るまでの過程にトラウマを伴う家族へ関わる難しさ>という特徴的な状況に対し、<強い衝撃を受けている家族が、家族自身の力で危機を乗り越えていけるかどうかを見極める難しさ>といった介入の判断の難しさを感じていた。また、患者との面会前から家族の反応を予測し、<死亡した患者と家族を引き合わせる前の難しさ><患者の外見への家族の衝撃を緩和させる難しさ>を感じていた。<初対面で家族の今の思いを捉える難しさ><自責の念や無念の思いが強い家族への対応の難しさ><家族が発する言葉の意図を考えて返答しなければならない難しさ><蘇生中止を受け入れられない家族への対応の難しさ><初療で急変して亡くなった際に泣き崩れる家族への対応の難しさ><亡くなるという状況を伝えた際に発狂し錯乱した行動をする家族への対応の難しさ>は、多様な家族の反応に即座に対応する困難感であった。CCNSは、初療だけでの家族看護に限界を感じ、死亡退院後の継続的な家族支援のためにアプローチしようとしていたが、そこでは<ケアサポートを紹介したことに対し家族が猜疑心を感じた際の関わりの難しさ><初療以降の支援にどのように繋いでいくかという難しさ>といった繋ぐこと自体に対する難しさも生じていた。さらに、<家族がいない中で、医療者が蘇生をやめるタイミングを決める難しさ>といった倫理的な課題を含む困難も見られた。
<考察>
救急初療で死別を経験する患者家族に対する看護実践上の困難は、突然の死で家族が予期悲嘆の経過を辿ることができないことに留まらない複雑なものであった。情報も時間も少ない中でパニック状態に陥った家族、強い自責の念を抱いた家族、自殺現場の目撃や外観が大きく変化した患者に会う衝撃など、家族自身がトラウマを受けているという複雑さである。さらに、退院後にいかに遺族ケアを継続するか、その糸口と方法の模索にも困難と課題を抱いていた。
救急初療で死別を経験する患者家族へのケアは、家族と信頼関係を築く間もないまま展開されるが、その短期間の関わりがその後の家族の悲嘆過程に影響するという意味で高度かつ重要な看護実践である。現場では看護師個々の判断に委ねられ、結果救命の場で看取りを繰り返し体験する看護師自身の不全感やバーンアウトという問題が生じている。本研究は、急性・重症患者看護専門看護師(以下CCNS)が捉えた救急初療で死別を経験する患者家族に対する看護実践上の困難を明らかにすることを目的とした。
<研究方法>
研究デザイン:質的記述的研究デザイン
研究参加者:救急初療での実務経験のあるCCNS10~20名
調査期間:2018年2月
データ収集と分析方法:インタビューガイドに基づき半構造的フォーカスグループインタビュー(以下FGI)を行い、内容分析を行った。
倫理的配慮:本研究は日本救急看護学会研究助成第56号の助成を受けて日本救急看護学会倫理委員会の承認を得た。データは個人が特定できないよう連結不可能匿名化を行った。
<結果>
研究参加への同意が得られ、かつFGIに参加可能であった11名のCCNSへ120分間のFGIを実施し計16のサブカテゴリが生成された。CCNSが捉えた困難は<初療という限られた環境の中でケアを行う難しさ><初療という限られた時間の中で悲嘆ケアを行う難しさ><受傷機転から死亡までの経緯がよくわからない患者家族に対応していく困難さ>といった限られた環境と時間、情報の中で対応しなければならない難しさをベースに抱えていた。そして<事故や自殺など予期悲嘆の経過を辿らない死が多いため、死に至るまでの過程にトラウマを伴う家族へ関わる難しさ>という特徴的な状況に対し、<強い衝撃を受けている家族が、家族自身の力で危機を乗り越えていけるかどうかを見極める難しさ>といった介入の判断の難しさを感じていた。また、患者との面会前から家族の反応を予測し、<死亡した患者と家族を引き合わせる前の難しさ><患者の外見への家族の衝撃を緩和させる難しさ>を感じていた。<初対面で家族の今の思いを捉える難しさ><自責の念や無念の思いが強い家族への対応の難しさ><家族が発する言葉の意図を考えて返答しなければならない難しさ><蘇生中止を受け入れられない家族への対応の難しさ><初療で急変して亡くなった際に泣き崩れる家族への対応の難しさ><亡くなるという状況を伝えた際に発狂し錯乱した行動をする家族への対応の難しさ>は、多様な家族の反応に即座に対応する困難感であった。CCNSは、初療だけでの家族看護に限界を感じ、死亡退院後の継続的な家族支援のためにアプローチしようとしていたが、そこでは<ケアサポートを紹介したことに対し家族が猜疑心を感じた際の関わりの難しさ><初療以降の支援にどのように繋いでいくかという難しさ>といった繋ぐこと自体に対する難しさも生じていた。さらに、<家族がいない中で、医療者が蘇生をやめるタイミングを決める難しさ>といった倫理的な課題を含む困難も見られた。
<考察>
救急初療で死別を経験する患者家族に対する看護実践上の困難は、突然の死で家族が予期悲嘆の経過を辿ることができないことに留まらない複雑なものであった。情報も時間も少ない中でパニック状態に陥った家族、強い自責の念を抱いた家族、自殺現場の目撃や外観が大きく変化した患者に会う衝撃など、家族自身がトラウマを受けているという複雑さである。さらに、退院後にいかに遺族ケアを継続するか、その糸口と方法の模索にも困難と課題を抱いていた。