第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

家族ニーズ

[O16] O16群 家族ニーズ

Sat. Oct 5, 2019 11:00 AM - 12:00 PM 第6会場 (3F 中会議室303)

座長:西塔 依久美(東京医科大学)

[O16-3] 救命救急センターに緊急入院となった患者のキーパーソンのニーズ~重要度・満足度の年齢による比較~

野村 桂子 (公立能登総合病院)

【目的】
 救命救急センターに緊急入院された患者のキーパーソン(以下KPとする)におけるニーズの重要度と満足度について、年齢による違いを明らかにする。
【方法】
 単一回答法・自記式を用いた質問法による量的研究。対象者はA病院の救命救急センターに入院し、3日目~5日目が経過した患者のKPとした。データ収集方法はCritical Care Family Needs Inventory Japanese Versionの項目を使用し作成した。得られた回答は4段階リッカート法を用いてスコア化した。基本属性としてKPの性別・年齢・患者との関係・患者の診療科について調査し、自由記載はありのままに記載した。データの分析は、質問紙の回答を点数化した。年齢を30~64歳(壮年期)と65~80歳(老年期)に分け、重要度・満足度を項目別に平均値を求め、それぞれをマンホイットニーのU検定で分析。統計学的水準は1%未満とした。
【倫理的配慮】
 A病院の倫理審査委員会の規定に沿って審査を受け、承認を得て実施した。
【結果】
 一人暮らしや高齢者世帯が多い地域に住むKP 9名のうち、同意・回答を得られたのは8名、有効回答率は7名で87.5%であった。対象者の概要は壮年期が3名(42.9%)、老年期が4名(57.1%)であった。重要度の比較では「保証」・「サポート」のニーズが老年期に比べて壮年期の方が優位に高かった。満足度の比較では「保証」のニーズが壮年期に比べて老年期の方が優位に低かった。自由記載については壮年期では、「面会フリーの方が嬉しい。」老年期では、「患者が努力すれば改善できる予想も交えて希望の光も残し、最悪の状態も話してほしい。」等の回答があった。
【考察】
 「保証」のニーズの重要度では壮年期の方が有意に高く、その一方で満足度が有意に低かった。壮年期は社会的地位を獲得し、家族の生活を支えるため奔走する時期である。また、社会・家庭において責任と重圧がかかる時期であり、よりはっきりとした保証を求める傾向があると考えられる。「保証」のニーズの満足度に関しては、老年期の方が有意に高かった。老年期は、独り暮らしや高齢者の夫婦で生活している場合が多く、親族が遠方に住んでおり、身寄りがない場合が多い。KPが治療や介護を受けている場合も多く、患者の入院がKP自身の健康状態の悪化につながりやすい。さらに、患者の状態の説明や入院の手続きが複雑で戸惑うことも多い。老年期は、治療や看護に関して「おまかせします。」と医療者に委ねる傾向がある。看てもらえるだけでもありがたいという心理から、現状で満足している傾向があると考えられる。また、医療者との関係を良好に保ちたいという感情から、本心が言えないということも考えられる。「サポート」のニーズの重要度では、壮年期の方が有意に高かった。近年、核家族・三世代世帯は減少傾向であり、さらに小規模化・多様化している。親世代と同居が多い時代に比べ協力が得られにくい等の理由から、支援を必要とする傾向があるのではないかと考えられる。また、壮年期の自由記述から「面会フリーの方が嬉しい。」と回答がみられた。これは社会的な問題から、定められた時間での面会が困難なことが理由として考えられる。