第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

家族ニーズ

[O16] O16群 家族ニーズ

Sat. Oct 5, 2019 11:00 AM - 12:00 PM 第6会場 (3F 中会議室303)

座長:西塔 依久美(東京医科大学)

[O16-5] 救急看護師が体験した外傷死をきたした患者家族への支援

永野 のぞみ1, 中村 惠子2, 菅原 美樹2 (1.札幌医科大学附属病院, 2.札幌市立大学看護学部看護学科)

1.はじめに
 救急領域での死の特徴として突然死がある。突然死とは、内因死と外因死に分けられ、外因死には外傷死が含まれる。外傷死をきたした患者家族は、突然の出来事に大きな衝撃を受け、死別後には複雑性悲嘆に陥りやすい特徴がある(原田,2006)。救急看護師にとって、外傷死をきたした患者家族への支援は非常に重要な役割がある。文献検討の結果、外傷死の家族支援について明確な記載がある文献は見当たらなかった。そのため、救急看護師が体験した外傷死をきたした患者家族への支援内容と困難を明らかにしたいと考えた。
2.目的
 救急看護師が体験した外傷死をきたした患者家族への支援内容と困難を可視化する。
3.方法
 看護師経験3年以上の看護師5名を対象に、インタビューガイドを用いて半構成的面接によりデータ収集を行った。分析方法は、逐語録作成後、支援内容と支援する際の困難をコード化し、サブカテゴリー、カテゴリー、コアカテゴリーを生成した。札幌市立大学大学院看護学研究科倫理審査会の承認を得て実施した。
4.結果
 データ収集期間は平成30年3月〜4月である。分析の結果〈238コード〉《108サブカテゴリー》[19カテゴリー]【7コアカテゴリー】を抽出した。7コアカテゴリーのうち、外傷死をきたした患者家族への支援は5コアカテゴリーで【複雑性悲嘆を予防するための支援】【不安を助長しないための支援】【限られた時間で支援するための工夫】【死別期の支援】【身体疲労への支援】で構成した。【複雑性悲嘆を予防するための支援】には[身体損傷のある患者の人権を守るための支援][身体的損傷による家族の衝撃を緩和する支援][自責の念を軽減するための支援]という外傷死の特徴的なカテゴリーを抽出した。支援する際の困難は2コアカテゴリーで【時間や空間が限定されている困難】【家族の心情を慮ることができない困難】で構成した。
5.考察
 本研究の結果から、外傷死のコアカテゴリーとして【複雑性悲嘆を予防するための支援】が明らかとなり、[身体損傷のある患者の人権を守ための支援][身体的損傷による家族の衝撃を緩和する支援]という外傷死の特徴的なカテゴリーが含まれていた。先行研究では、外傷死をきたした患者家族は、死別後には複雑性悲嘆に陥りやす特徴があり(原田,2006)、悲嘆のプロセスを阻害する背景の一つに身体損傷がある(坂口,2015)。家族が複雑性悲嘆に陥らないようにするためには,家族が悲しみを表出することが重要である(原田,2014)と述べられている。患者家族が、患者の身体損傷を目の当たりにすることは、突然の死別による悲痛に加え、より一層の衝撃を与えることになる。本研究で明らかとなった、身体損傷による家族の衝撃を緩和する支援と身体損傷のある患者の人権を守るための支援は、外傷死の特徴である複雑性悲嘆を予防するために重要な家族支援であると言える。また、[自責の念を軽減するための支援]に関して先行研究では、家族が自責の念を抱くことは悲嘆反応のひとつであり,その反応を理解し傾聴的に関わることが必要である(吉田,2016)と述べている。突然の死別による精神的な特徴として、自責の念を抱く事を念頭に置き、外傷死をきたした患者家族と関わることが重要であると考える。
 外傷死では、時間や空間が限定されていることから、患者家族へ支援する際には困難を抱きやすいが、救急看護師は外傷死をきたした患者家族に対して、限られた時間内で支援ができるよう工夫をしながら様々な支援を行なっていることが明らかとなった。