第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O18] O18群 看護教育④

2019年10月5日(土) 10:00 〜 11:00 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:山中 聖美(山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター)

[O18-1] 院内出張研修「正しい臨床判断に基づいた小児患者急変時に看護師が行うべきこと」の導入、その効果と今後の課題

森口 ふさ江1, 芝田 泰子2 (1.横浜市立大学, 2.国立成育医療研究センター)

目的:特に急変・重症化しやすい小児患者の病院内急変時において、ファーストレスポンダーとして対応することが多い看護師の患者急変時教育は重要である。今回、小児専門病院において、看護師が患者の症状を多角的にアセスメントし、正しい臨床判断に基づきより自律的かつ迅速な対応を取るための研修プログラムを考案し、講義型の全体研修ではなく、講師が各部署に出向く出張形式を取った受講者参加型研修を実施したので、その効果と今後の課題を報告する。

研修内容:
1)患者急変時研修プログラム「正しい臨床判断に基づいた小児患者急変時に看護師が行うべきこと:コース1患者の変化を見逃さない、およびコース2医師到着後に行うべきこと」を、受講希望者の所属する部署に講師が出向き研修を実施する。
2)研修時間は、90分で行われ、コース1,コース2共に、ミニレチャー、ビデオ演習またはハンズオン演習、チームシミュレーションで構成される。
研究方法
1)研修対象者:T県小児専門病院に勤務する小児病棟看護師で当該研修を
  受講した56名。
  選定条件:一般小児病棟看護師で、性別、経験年数は問わない。
  除外条件:手術室看護師、ICU、NICU看護師。
2)研修の前後に受講者に対する無記名式アンケートを実施し、その回答
  結果を後方視的に検討した。
  研修前のアンケートでは、所属部署、経験年数の他に、心肺蘇生研修
  受講歴、院内患者急変経験の有無、急変対応時の自信の程度などを
  質問した。研修後のアンケートでは、研修の理解度および満足度、
  今後の急変対応時の自信の向上度などを質問した。

結果:
 2018年3月から2019年4月の間に、コース1を39人、コース2を17人が受講した。
 研修受講前のアンケートでは、患者急変時の対応に自信がないと答えた受講者は96%であったのに対し、研修受講後のアンケートでは、今後の急変対応に自信がないままであると答えた受講者は12%であった。自信がないままであると答えた受講者の全員が、経験年数2年目以下であった。
また、研修受講後のアンケートにおいて、研修を受講して良かった、研修内容を急変時対応に役立てることが出来ると答えた受講者は100%、今後の患者急変時には、状況を予測しながら自発的に行動出来ると思うと答えた受講者は86%であった。


考察:
 新しい試みとして行われた本研修は、その目的において有効であったと考える。研修後も急変時の自信向上度が低かった経験年数の低い看護師には、研修方法の再検討が必要である。
また、出張形式をとったことにより、少人数制となり、受講者のニーズに合わせた研修内容にすることが出来たことが、受講者の満足度につなが
ったと考える。一方、研修の問題点として、受講希望者の勤務時間が延長することにより、開始時間が遅れたり、途中からの受講になったり、研修募集後半では、殆ど全ての小児病棟において超過勤務時間が長時間化した時期が続き、コース2の受講者が減少したという問題があり、勤務時間外における自己研鑽としての研修の限界と考え、今後の課題としたい。