第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O18] O18群 看護教育④

2019年10月5日(土) 10:00 〜 11:00 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:山中 聖美(山口大学医学部附属病院 先進救急医療センター)

[O18-3] 病棟内教育で初期治療室看護を経験した訓練生の思い

須永 準里, 中田 哲也, 寺内 浩美, 寺﨑 順子 (獨協医科大学病院)

【はじめに】
 A大学病院救命救急センターは2013年から初期治療室看護師の教育プログラムを導入している。教育プログラムは教育を受ける看護師(以下訓練生)が時期や段階に応じて、目標を確認できる構成になっている。実際に初期治療室に搬送された患者を担当する段階では症例に対して症例レポートを作成し、指導看護師とともに症例の振り返りを行なっている。今回症例レポートを分析し、訓練生の思いを抽出した。

【目的】
 A大学病院救命救急センターの病棟内教育で、初期治療室を経験した看護師が、症例を通してどのような思いを抱いたのかを症例レポートから明らかにすること。

【方法】
 2013年2月から2018年3月31日にA大学病院救命救急センターに新卒で配属され、訓練生となった看護師8名を対象とした。対象者に対して口頭と文章で研究内容を説明し、同意を得た。症例レポートは訓練生が研修期間中、1回の研修につき1症例、患者情報、症状など項目に沿って自由記載している。この症例レポートの感想項目から思いを含む文章を抽出し、1記録単位とした。記録単位を内容の類似性にそって分類しサブカテゴリー、カテゴリー【】を命名した。分析・命名の過程では、救命救急領域で初期治療室経験のある看護師複数名で話し合い検討した。

【倫理的配慮】
 個人が特定されないように情報の取り扱いに配慮した。獨協医科大学病院看護部倫理審査で承認を得た(病看29061)。

【結果および考察】
 対象者8名に対して説明し、8名の同意が得られた。59症例の症例レポートがあり、感想項目が未記入の4症例を除いた55症例の症例レポートから抽出した119記録単位を分析対象とした。記録単位は29サブカテゴリーに分類され、9カテゴリー【事前準備・介助・関わり・アセスメントを振り返り、できなかったと意味づけする】31記録単位(26.1%)、【初期治療室看護師としての技を伝承する】28記録単位(23.5%)、【情報収集・援助・アセスメントを振り返り、上手くいったと意味づけする】13記録単位(10.9%)、【理想の初期治療室看護師像を思い描く】13記録単位(10.9%)、【初期治療室看護師としての取るべき行動を思い描く】12記録単位(10.1%)、【未経験な状況に遭遇して焦り、戸惑う】9記録単位(7.6%)、【症例を通して具体的な課題を設定する】8記録単位(6.7%)、【症例を通して気づきや学びを再確認する】3記録単位(2.5%)、【自分の行動の傾向を分析する】2記録単位(1.7%)に統合された。
 症例レポートからの感想では、感情表現した記録は119記録単位中9記録単位(7.6%)で認められ、ネーミングされたカテゴリーは【未経験な状況に遭遇して焦り、戸惑う】であった。20%以上の記録単位で構成されたのは、【事前準備・介助・関わり・アセスメントを振り返り、できなかったと意味づけする】、【初期治療室看護師としての技を伝承する】であり、不安などの感情表現を示した記録は少なかった。
 症例レポートから訓練生は初期治療室看護師教育を受ける中で、多くの「できなかった」を経験するが、指導看護師からの助言やこうすると良いという工夫を取り入れ、看護の技を身につけようとしている実態が分かった。また、【初期治療室看護師としての取るべき行動を思い描く】、【理想の初期治療室の看護師像を思い描く】に統合されるように、研修を通して初期治療室看護師としての看護観も形成されていることがわかった。