第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O19] O19群 看護教育⑤

2019年10月5日(土) 11:10 〜 12:00 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:船木 淳(神戸市看護大学 急性期看護学分野)

[O19-1] CPR実施者の身体的特徴が心肺蘇生技術に及ぼす影響

濱田 歩2, 田中 美里1, 山本 小奈実1, 山勢 博彰1, 田戸 朝美1, 佐伯 京子1 (1.山口大学大学院医学系研究科保健学専攻臨床看護学講座, 2.山口大学附属病院, 3.大阪医科大学附属病院)

【背景】CPR(Cardio Pulmonary Resuscitation:以下CPR)の質は、傷病者の生存率や社会復帰に影響する。しかし、CPRの質には、知識と技術が必要であるが、CPR実施者の身体的特徴も影響するのではないかと考えた。
【目的】CPR実施者の身体的な特徴や性別がCPRの質に影響するのかを明らかにする。
【方法】研究デザイン:準実験研究 対象者:救急蘇生技術の授業を受けた研究者の所属する医学部保健学科30名(男性9名、女性21名)、1次救急救命処置のインストラクターなど資格を有する者は対象外とした。研究期間:2018年6月~9月
調査内容:2人ペアとなり1人が胸骨圧迫、もう1人が人工呼吸を担当し2分間のCPRをシミュレーション人形で実施。データの信頼性を保つため、対象者には実施中の胸骨圧迫深度や換気量などの測定結果が分からないように一重盲検化し、CPRを実施した。測定項目は、対象者の背景(年齢・性別・身長・体重・手挙周長・最大手挙長・握力/左右・背筋力)、CPR実施中の平均胸骨圧迫深度、十分な深さでの圧迫/十分に解除できた圧迫、平均換気量とした。分析方法:得られたデータは、測定項目ごとに記述統計を行い、対象者の背景と相関(Spearman検定)を分析した。さらに性差の違いをマン・ホイットニーのU検定で分析した。
【倫理的配慮】 本研究は、倫理審査委員会の承認を得て実施した。対象者は、学内で公募し、参加希望者には事前に同意を得た。
【結果】 「平均胸骨圧迫深度」と正の相関を示したのは、「性別」(r=0.58)、「体重」(r=0.58)、「手挙周長」(r=0.49)、「握力(右)」(r=0.54)、「握力(左)」(r=0.53)であった。「十分に解除できた圧迫」と負の相関を示したのは「性別」(r=-0.54)、「手挙周長」(r=-0.61)、「握力(右)」(r=-0.67))、「握力(左)」(r=-0.98)、「背筋力」(r=-0.49)であった。「十分な深さでの圧迫」と正の相関を示したのは、「性別」(r=0.55)、「身長」(r=0.46)、「体重」(r=0.64)、「手挙周長」(r=0.53)、「握力(右)」(r=0.61)、「握力(左)」(r=0.51)、「背筋力」(r=0.46)であった。「平均換気量」と正の相関を示したのは、「握力(左)」(r=0.57)、「背筋力」(r=0.53)であった。男女の比較では、女性よりも男性のほうが「平均胸骨圧迫深度」、「十分な深さでの圧迫」が有意に高かった(p<0.05)。しかし、「十分に解除できた圧迫」については、男性よりも女性の方が有意に解除できていた(p<0.01)。
【考察】圧迫深度では、体格が大きく、筋力のある人の方が深く圧迫できているが、圧迫解除では、体格が小さく、筋力の低い人の方が圧迫解除できていた。これは、体格が小さく、筋力の低い人は十分に圧迫できていないことを示していると考える。「平均換気量」には、「握力(左)」が影響していたことから、バックマスク操作時のマスクホールド時にマスクを支えるために握力を使っていることが考えられる。女性に比べて男性の方が身体面での全体スコアが高く、体格が大きいことからより深く胸骨圧迫できていたことが考えられる。したがって、体格の大きな実施者には、胸骨圧迫解除を意識づける指導を行い、体格の小さな実施者には胸骨圧迫を深く押す指導を行うことで、より質の高いCPRの実践が可能になると考える。