第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

プレホスピタルケア

[O2] O2群 プレホスピタルケア

Fri. Oct 4, 2019 10:20 AM - 11:30 AM 第6会場 (3F 中会議室303)

座長:坂田 司(徳島赤十字病院)

[O2-4] CNS-FACEⅡを用いたプレホスピタルからICUまでの家族看護の一事例

宇野 翔吾 (株式会社日立製作所 日立総合病院 救命救急センター)

【目的】
 ドクターカー要請事案において、プレホスピタル現場または初療室、ICUでCNS-FACEⅡを用いて患者家族のニードとコーピングを評価する。各時期に不足しているニードとコーピングに対し看護介入を行い、その効果を明らかにする。

【方法】
 ドクターカーが出動し、A病院に救急搬送された患者の家族1組を対象に、プレホスピタル現場または初療室、ICUの各場面においてCNS-FACEⅡを用いてニードとコーピングを評価し、継続的な看護を行った結果を再評価する。

【倫理的配慮】
 データ分析は個人が特定されることがないよう配慮し、プライバシーの保護に努めた。

【結果】
 交通外傷で搬送された10代女性。意識障害および頭蓋骨陥没骨折疑いでドクターカー出場。家族と同居しており、本人は学生。事故当時は、友人と旅行中であった。初療室到着時より、緊急手術が必要な状態であった。自宅は隣県であり、病院到着には数時間かかることが予想された。急を要するため、父親に対し電話で簡単に状況を説明し、医師へ引き継いだ。顔の見えない状況下であったが、落ち着いて話すことを心がけ、混乱させないよう簡潔に説明した。CNS-FACEⅡの結果は、社会的サポート1.0、情緒的サポート1.14、安楽・安寧1.0、情報1.6、接近1.0、保証1.2、情動的コーピング1.08、問題志向的コーピング1.21であったことから、看護問題を#家族役割喪失に伴う家族機能障害リスク状態、#急性混乱リスク状態とし、ICU看護師へ申し送った。
 ICU入室後、約48時間時に再評価した。母親は動揺がある中、父親は面会時、落ち着いており、タッチングや声をかける姿があった。モニターの数字について質問があり、看護師は1つ1つ丁寧に説明した。患者本人は、家族の面会時興奮してしまう状態にあったが、父親は冷静に対応し、「興奮したら治らないから安静にね」などの声掛けをしていた。CNS-FACEⅡの結果は、社会的サポート1.75、情緒的サポート2.0、安楽・安寧1.0、情報3.0、接近2.6、保証3.6、情動的コーピング2.08、問題志向的コーピング2.47と、「安楽・安寧」以外はすべてのニードとコーピングで数値が上昇していた。

【考察】
 「情報」では、プレホスピタル/初療室での状況を電話で伝えることにより、顔の見えない状況下で交わされた説明に対し、実娘の状況に関する情報が入ってきたことがニード6要素の内上位であった結果であると考える。父親は、状況が理解できていない印象が強く、実娘に対して援助を求めるような発言や詳しい状況は聞かれなかった。「接近」「保証」「社会的サポート」「安楽・安寧」では、実娘と直接会っていない点、唐突に得た情報であり、医療者と直接会って会話していない点が低下の原因としてあげられる。コーピングでは、感情を露わにすることなく、電話というコミュニケーション手段の中で冷静に状態を聞くという態度であった父親の姿が反映されていると考えられる。一方で冷静な態度というのは、理解しているという捉え方の他に、電話口での会話であり正確な状況はわからないため、上の空または放心状態であると考える。
 ICUでは、母親の動揺が強く、父親にも少なからず影響があることが予測される。父親は冷静な対応をする反面、不安も強いと考える。「安楽・安寧」の数値が横ばいなのは、家族間の不安度合いの差が影響していると考える。最も高い数値は、「保証」であった。謙虚な対応であった父親が、看護師に対し質問をする場面が度々あったことが、数値上昇に繋がっていたのではないかと考える。