第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

プレホスピタルケア

[O2] O2群 プレホスピタルケア

2019年10月4日(金) 10:20 〜 11:30 第6会場 (3F 中会議室303)

座長:坂田 司(徳島赤十字病院)

[O2-7] A病院ドクターカー看護師の病院前看取りの現状と課題~プレホスピタルケア看護師の役割から~

福士 博之, 比嘉 徹, 鈴木 晴敬 (中津川市民病院病院前救急診療科)

【はじめに】A病院、病院前救急診療科ドクターカー(以下A病院ドクターカー)は、医師1名または、看護師1~2名同乗の出場体制をとっている。ドクターカー出場件数が年間約500件、月平均約40件であり、その中で積極的に病院前看取り症例も出場してきた。A病院ドクターカー事業が開始された平成26年3月から平成30年12月までのドクターカー出場件数は1792件で、その中で病院前看取り症例は494件であった。病院前看取り症例数を年度別にみると、平成26年(開設1年目)は年間44件であったが、平成30年(5年目)では146件と増加している。A病院では、過去に「自宅お看取りした遺族の思い」「ドクターカー運用による看取り診療の実態」に関して報告しているが、病院前看取りにおける看護師の役割に関しては調査されていない現状であった。【目的】A病院ドクターカー看護師の病院前看取りの実態を調査し、その役割を明らかにする。【倫理的配慮】A病院倫理審査委員会の承認(承認番号20180030)を受け実施した。【方法】1、対象期間中の症例に関して後ろ向き実態調査法を用いた。調査項目は病院前看取り症例の内、医師のみ出場群(以下D群)と医師・看護師出場群(以下D・N群)の病院前看取り時の処置件数比較をχ2検定法で分析した。2、B消防救急救命士30名に対して、病院前看取り活動時におけるD群とD・N群の現場活動への影響をVAS(Visual Analogue Scale)による留置法アンケート調査を実施した。【結果】1.平成28年1月から平成30年12月までの病院前看取り出場件数は357件で、そのうちD群は166件(46%)、D・N群は191件(54%)であった。D群とD・N群の病院前看取り時の処置件数比較で、D群に有意差を認めた処置は骨髄針で、D群46件(28%)、D・N群27件(14%)(P<.01)であった。一方D・N群に有意差を認めた処置は、末梢静脈路確保でD群21件(13%)、D・N群46件(24%) (P<.01)、血液ガス分析検査は、D群24件(14%)D・N群56件(29%)(P<.01)、超音波検査はD群5件(3%)、D・N群19件(10%)(P<.01)、血糖測定、D群30件(18%)D・N群59件(31%)(P<.01)、乳酸測定、D群28件(17%)D・N群59件(31%)(P<.01)であった。2.B消防救急救命士への病院前看取り活動時におけるD群とD・N群の現場活動への影響調査で、D群よりD・N群で行いやすいと回答に差が生じた設問は、<医師の診療補助・救急処置実施・介助>でD群59%、D・N群89%、<物品や薬剤の管理、記録の実施>がD群62%、D・N群93%であった。【考察】病院前看取り処置件数の比較で、D群の骨髄針が有意に多かったことは、医師1名での出場では人員的、物品準備の時間的な要因、簡便さから骨髄針選択が多かったと推察できる。D・N群で末梢静脈路確保が有意に多かった事からも、病院前看取り症例における看護師の末梢静脈路確保の必要性が明確になった。D・N群で各血液検査や、超音波検査が有意に多かったことは、病院前看取り症例における診断に有効な検査が看護師がいることで行えた結果と判断できる。そのことは、救急救命士を対象にしたアンケートからも、<医師の診療補助・救急処置実施・介助>の項目で、D・N群の方が行いやすいと回答が高かったことは、A病院の病院前看取りにおける看護師の役割の一つを証明した結果と考える。