第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

トリアージ

[O20] O20群 トリアージ②

Sat. Oct 5, 2019 9:00 AM - 10:00 AM 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:中嶋 康広(東海大学 看護師キャリア支援センター)

[O20-2] A病院救急センターにおける敗血症初期対応アルゴリズム導入後の現状と今後の課題

岡村 紀子 (勤医協中央病院 救急センター)

【はじめに】
2016年の敗血症の新定義では早期発見・治療のために、一般病棟や救急外来で感染症が疑われる患者に対し、qSOFAによる簡易的スクリーニングが提唱された。A病院でも2018年5月より院内トリアージにおいてqSOFAスコアリングを行い、迅速に医師の診断に繋げるよう敗血症初期対応アルゴリズム(以下アルゴリズム)を作成し活用しているが、現状の検証は行われていなかった。
【目的】
敗血症初期対応アルゴリズムが緊急度・重症度の高い患者の見落としを防ぎ、初期対応の質向上とチーム医療において有益であるかを明らかにすると共に今後の課題を見出す。
【方法】
1)期間:2018年5月~12月
2)対象:救急センターにウォークインで受診した感染症疑いの患者
3)方法:電子カルテから対象者の年齢、性別、qSOFAスコアとトリアージ区分、SOFAスコア含む初期診療経過と転帰について後ろ向きに調査し検証した
4)倫理的配慮:A病院倫理委員会の承認を得た
【結果】
対象患者は1207名でqSOFA項目に該当する患者は276名(23%)、平均年齢は81歳で、男性132名(48%)、女性144名(52%)であった。qSOFA2点以上は54名(20%)、全て緊急の判定で入院の転帰(100%)であった。qSOFA1点で準緊急の判定は222名(80%)で、免疫抑制剤使用中や重度の呼吸困難などで緊急と判定された患者10名を含む147名が入院の転帰(66%)であった。トリアージから診察開始までの時間は、qSOFA2点以上の場合平均12分、1点の場合平均24分であった。qSOFA2点以上でSOFAスコアリング記載ありは22名で遵守率41%、qSOFA1点でも10名に記載され入院の転帰であった。診察後は早期に血液培養含めた採血、輸液蘇生や酸素投与、画像診断が行われており、診察開始から診断までの時間は平均100分であった。診断から抗菌薬投与までは平均33分で、敗血症性ショック患者では昇圧剤の必要性や輸液反応を平均血圧、乳酸値を用いて評価していた。
【考察】
敗血症の死亡率は25~35%と高く、迅速な認知と介入が重要である。トリアージでは患者背景も加味したqSOFAスコアに基づく区分判定が行われており、設定時間内に診察が開始されていることから、看護師内ではアルゴリズムは定着していると評価できる。一方、SOFAスコアリングの遵守率は低く、医師への定着は不十分と評価できるが、スコアリング漏れはアルゴリズム導入後4ヶ月迄に多く、周知不足が要因と考えられ、今後も継続した呼びかけが必要と考える。診察開始から診断までの時間や記録内容からは、検査部門の協力の下必要な諸検査は早期に実施できていたと考えられ、診断から抗菌薬投与までの時間、輸液反応に対する対応を含めるとSurviving Sepsis Campaign hour-1bundleもほぼ実施できていたと推察する。
qSOFA2点以上の高入院率からも、アルゴリズムの活用により緊急度・重症度の高い患者を見落とさず、迅速に治療を開始することができたのではないかと考える。また、qSOFA1点でもSOFAスコアリングで敗血症と診断された事例や敗血症ではないが肺炎や尿路感染など入院治療が必要な患者が多いことから、qSOFA該当者は入院高リスクとして捉える必要があると考えられた。敗血症初期対応アルゴリズムを活用することで診療の流れが可視化でき、看護師からも必要な指示を仰ぎ易くなり、系統的かつ統一的に、より円滑に診療が行え、初期対応の質の向上やチーム医療においても有効なものであると考える。