第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

トリアージ

[O20] O20群 トリアージ②

Sat. Oct 5, 2019 9:00 AM - 10:00 AM 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:中嶋 康広(東海大学 看護師キャリア支援センター)

[O20-3] 院内トリアージの質向上への取り組み~個人の推論力を高める事に焦点を当てて~

島崎 美佳, 平柳 和奈, 山本 由美 (高度・急性期医療センター公立昭和病院救命救急センター)

【はじめに】当院救急外来では院内トリアージの質向上を目指しトリアージ検証方法として独自作成の7つのカテゴリーに分類し事後検証を行ってきた。個人別で集計した結果、JTAS講習を受講しているスタッフ(以下トリアージナース群:A群)と、講習を受講していないスタッフ(以下非トリアージナース群:B群)では情報不足件数に差がみられた。更に要因分析を行った結果、B群はレッドフラグサインの見落としがあり、重大な疾患をルールアウトするための情報を得られていないことが明確となった。トリアージの妥当性を高めるには緊急度判定とともに、病態予測により緊急度判定後の行動を的確に行う必要がある。そこで、個々の問診技術、得た情報から病態を予測し批判的思考を活用しながらさらなる問診、フィジカルアセスメントを実施する能力(以下推論力)の向上を目指し、個々の推論力の差を減らす取り組み(以下新たな取り組み)を実践し、どのような効果をもたらしたのか明らかにしたため報告する。
【研究目的】新たな取り組みにより、A群とB群の情報不足数の差がなくなるかを明らかにする。
【研究方法】対象:救急外来受診しトリアージされた小児を含む患者と情報をトリアージした救急外来看護師13名。期間:平成29年4月1日から平成30年12月31日。方法:①新たな取り組みと推論力の向上に重点を置いた勉強会、トリアージ記録用紙の修正、検証後のフィードバック方法の変更②取り組み開始前後の情報不足数をA群とB群で単純集計。
【倫理的配慮】当院看護部倫理委員会(2019-4)の承諾を得た。
【結果】全体の情報不足数は、平成29年A群154件、B群337件(計491件)、平成30年A群52件、B群174件(計226件)と、前年度と比較すると減少した。また新たな取り組み前後の同月で、各個人トリアージ10症例をランダムに選出し情報不足数をA群とB群で比較すると、明らかな差の減少は見られなかった。
【考察】新たな取り組みにより全体の情報不足数は、両軍ともに改善傾向となった要因として、トリアージ記録用紙にOPQRSTT記入欄、レッドフラグサインのチェックボックスを追加したことや2次検証症例を全員が閲覧できるようにしたことで、他者の推論方法を知り、臨床推論の方法を理解することができたと考える。一方、A群とB群の比較ではA群66%減少、B群48%減少でありA群の情報不足数はより減少傾向を示した。この要因は、A群ではJTAS講習にて臨床推論の学習機会を得ているため、臨床推論力を活かす新たな取り組みの必要性が理解できた結果と考える。一方、B群はこれまで経験値で判断していた内容の暗黙知が新たな取り組みにより形式化でき、情報の取り方に工夫が必要であるという思考の強化につながった。しかし、減少率がA群を下回った要因としては、取り組みの期間が短く臨床推論の学習機会が少なかったためだと考える。臨床推論に重点を置いた勉強会の実施により、院内トリアージにはJTASシステムの使用と臨床推論を合わせて行うことの理解が深まり新たな変化が見えてきたが、ランダム抽出による結果においては明らかな変化は見られなかった。また新たな取り組みでの両群の情報不足の差は、両者減少傾向にあったが両群の差がなくなったとは言えない。これは調査数が少ないことによるもので研究の限界である。研究結果から今後の課題として、推論力の差を埋めるためには、症状別の臨床推論を学ぶ機会を増やすなど取り組みを強化すること、データ数を多く取り、その変化を見ていくことが必要だと考える。