[O20-5] ACSを疑うwalk in患者に対するトリアージ内容の検討 -患者背景の調査から-
【はじめに】
急性冠症候群(以下、ACS)は、主に胸痛を主訴として急性心筋虚血を呈し、最悪の場合死に直結する病態である。そのため急性冠症候群ガイドラインでも迅速な対応が求められている。しかし、ACS患者は救急搬送だけでなく、他の軽症患者と同じようにwalk inで受診に来る。そこでA病院では、24時間walk in患者に対し,トリアージを実施して心原性胸痛を疑った時点で、トリアージレベル2緊急以上として対応をしている。その結果、walk inでのACS患者を抽出できている一方、結果的にACSの診断ではない患者も同様のトリアージレベルとなっている。そこで、ACS患者とそうでない患者(以下、非ACS患者)の違いについて検討した。
【目的】
胸痛患者に対する質の高いトリアージへとつなげていくため、胸痛を主訴としたwalk in患者の中でACS患者と非ACS患者の背景を比較し調査する。
【倫理的配慮】
本研究は、個人が特定されないように配慮し、A病院の倫理員会の承認を得た。
【方法】
2018年4月1日から2019年3月31日に胸痛を主訴としてA病院にwalk in受診した患者を対象とした後ろ向き研究を実施した。電子カルテにより患者の年齢、冠危険因子(高血圧、糖尿病、喫煙、家族歴、高コレステロール)、発症様式、随伴症状(失神、呼吸困難感、悪心、放散痛、冷汗、外観不良)を調査しΧ二乗検定で比較した。
【結果】
期間中、walk in受診した患者は20591名であり、胸痛患者は290名であった。その内の21名がACS患者であり、非ACS患者は269名であった。患者背景において、年齢、随伴症状、冠危険因子に関して有意差は認められなかった。発症様式に関してはACS患者においてはsudden onsetが14名、acute onsetが2名、gradually onsetが5名、非ACS患者がsudden onsetが85名、acute onsetが64名、gradually onsetが120名でありACS患者においてsudden onsetが他の発症様式と比べ優位に多かった。(p=0.001)。
【考察】
ACSは冠動脈が狭窄、または閉塞する疾患のため発症は突然おこり、sudden onsetの患者は優位に多かったと考えられる。そのためトリアージの時点でonsetの問診は重要である。しかしその情報は、“ACSらしさ”という確定のために使えるが、実際にgradually onsetであってもACSであった患者が5名いたため、一概に発症様式のみでACSを否定する事はできない。また、急性冠症候群ガイドラインにおいて冠危険因子は、ACSのリスクとされている。しかし、今回の研究では有意差は認められなかった。これは、冠危険因子自体が生活習慣病の項目が多く、患者数も多いため非ACS患者でも多数該当したためと考えられる。そのためトリアージにおける問診で冠危険因子を聴取する事によって、ACSの確立は変動されないと考えられる。また、外観不良やバイタルサイン異常を認めた患者が少なかったのはwalk in患者の特長ではあるが、冠危険因子を聴取するためにトリアージに時間をかけるのは患者にとって不利益である。今回の研究ではsudden onsetのみが有意となったが、高齢者や糖尿病患者では特に非典型的な症状であることもあるため、sudden onsetでなくとも心原性胸痛を疑った時点でトリアージレベルを下げるのではなく、やはりレベル2緊急以上として対応すべきである。
急性冠症候群(以下、ACS)は、主に胸痛を主訴として急性心筋虚血を呈し、最悪の場合死に直結する病態である。そのため急性冠症候群ガイドラインでも迅速な対応が求められている。しかし、ACS患者は救急搬送だけでなく、他の軽症患者と同じようにwalk inで受診に来る。そこでA病院では、24時間walk in患者に対し,トリアージを実施して心原性胸痛を疑った時点で、トリアージレベル2緊急以上として対応をしている。その結果、walk inでのACS患者を抽出できている一方、結果的にACSの診断ではない患者も同様のトリアージレベルとなっている。そこで、ACS患者とそうでない患者(以下、非ACS患者)の違いについて検討した。
【目的】
胸痛患者に対する質の高いトリアージへとつなげていくため、胸痛を主訴としたwalk in患者の中でACS患者と非ACS患者の背景を比較し調査する。
【倫理的配慮】
本研究は、個人が特定されないように配慮し、A病院の倫理員会の承認を得た。
【方法】
2018年4月1日から2019年3月31日に胸痛を主訴としてA病院にwalk in受診した患者を対象とした後ろ向き研究を実施した。電子カルテにより患者の年齢、冠危険因子(高血圧、糖尿病、喫煙、家族歴、高コレステロール)、発症様式、随伴症状(失神、呼吸困難感、悪心、放散痛、冷汗、外観不良)を調査しΧ二乗検定で比較した。
【結果】
期間中、walk in受診した患者は20591名であり、胸痛患者は290名であった。その内の21名がACS患者であり、非ACS患者は269名であった。患者背景において、年齢、随伴症状、冠危険因子に関して有意差は認められなかった。発症様式に関してはACS患者においてはsudden onsetが14名、acute onsetが2名、gradually onsetが5名、非ACS患者がsudden onsetが85名、acute onsetが64名、gradually onsetが120名でありACS患者においてsudden onsetが他の発症様式と比べ優位に多かった。(p=0.001)。
【考察】
ACSは冠動脈が狭窄、または閉塞する疾患のため発症は突然おこり、sudden onsetの患者は優位に多かったと考えられる。そのためトリアージの時点でonsetの問診は重要である。しかしその情報は、“ACSらしさ”という確定のために使えるが、実際にgradually onsetであってもACSであった患者が5名いたため、一概に発症様式のみでACSを否定する事はできない。また、急性冠症候群ガイドラインにおいて冠危険因子は、ACSのリスクとされている。しかし、今回の研究では有意差は認められなかった。これは、冠危険因子自体が生活習慣病の項目が多く、患者数も多いため非ACS患者でも多数該当したためと考えられる。そのためトリアージにおける問診で冠危険因子を聴取する事によって、ACSの確立は変動されないと考えられる。また、外観不良やバイタルサイン異常を認めた患者が少なかったのはwalk in患者の特長ではあるが、冠危険因子を聴取するためにトリアージに時間をかけるのは患者にとって不利益である。今回の研究ではsudden onsetのみが有意となったが、高齢者や糖尿病患者では特に非典型的な症状であることもあるため、sudden onsetでなくとも心原性胸痛を疑った時点でトリアージレベルを下げるのではなく、やはりレベル2緊急以上として対応すべきである。