第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

重症患者看護

[O21] O21群 重症患者看護②

2019年10月5日(土) 10:10 〜 11:00 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:桑村 直樹(公益社団法人日本看護協会 看護研修学校)

[O21-5] 3学会合同人工呼吸器離脱プロトコルを導入して見えた現状と課題

田中 秀明, 勝呂 美那, 向井 和樹, 植田 美幸, 畑 良典, 田畑 剛, 井木澤 祐子, 森谷 紀子, 倉持 洋志, 横山 奈緒実 (松戸市立総合医療センター)

【はじめに】
 A病院の救命救急センターHCUにおいて、抜管直後に再挿管となった事例を経験した。その際、抜管前の評価や観察項目が十分に記録されておらず事例を振り返ることが困難であった。この経験からスタッフ間で問題点について検討した。解決手段の1つとして人工呼吸療法を主導する3学会(日本集中治療医学会・日本呼吸療法医学会・日本クリティカルケア看護学会)が公開した「3学会合同人工呼吸器離脱プロトコル」(以下「プロトコル」とする。)をHCUに導入することとなった。試行錯誤しながらプロトコルを使用し1年が経過したところでこれまでの現状を振り返り、急性期病院での課題や傾向がみえてきたのでここに報告する。
【目的】
プロトコル使用の現状を明らかにして、施設における運用方法を検討する。
【方法】
 2018年8月から2019年1月の6ヶ月の間にHCUに入室した15歳以上の経口挿管または経鼻挿管された人工呼吸器装着中の患者について診療録の後方視的調査を行った。また2019年1月に救急科の医師と看護師を対象に、プロトコルの使いやすさやプロトコル運用上の感想についてアンケートを実施した。その後、得られた結果を単純分析し考察した。
【倫理的配慮】
 調査の承諾を可能な限り得るように努め、調査・分析の過程全てにおいて個人が特定されないように配慮した。本研究および発表に関しては、病院の看護局倫理委員会の承認を得た。
【結果/考察】
 調査期間の人工呼吸器装着患者数は25名でプロトコルを使用した人数は15名/25名中(60%)であった。プロトコルが使用されなかった理由は[生命予後が極めて悪く、抜管が見込めない状況]が6名 、[気管切開の適応]が3名、[抜管前に退室]が1名であった。調査期間の間に抜管後48時間以内に再挿管となる患者はいなかった。看護師によるプロトコルの各評価基準に沿った記録は12名/15名中(80%)がされていた。
 アンケート調査は救急科の医師5名と看護師26名に実施し、回収率は医師100%、看護師69%であった。アンケートから医師も看護師もほとんどがプロトコルを簡易的に用いることができたと考えているが、看護師の中には難しいと感じている人もいた。そのため、難しいと感じた理由を確認し誰でも簡易的にプロトコルを用いることができるように工夫していく必要がある。また看護師はプロトコルを使用することによって、呼吸評価の基準が明確になり、医師へ適切な報告がされるようになったと感じている人が多かったが、医師側はアセスメントの不足から看護師からの報告が適切だったと感じていない人もいた。今後、プロトコルを使った報告のあり方を検討していくことも課題の1つとなった。
 医師も看護師もプロトコルはHCU以外の部署で用いることで継続した治療ができると感じていた。また、プロトコルの継続のために必要なこととして、定期的な勉強会の開催・周知・慣れといった意見が多くあったため、今後院内での周知を図り定期的な勉強会や症例検討会を行い活用していけるようにすることが必要である。これまでのプロトコル使用の現状がわかったため、より施設にあったプロトコル運用に変更し評価・改善していく。