[O23-1] 患者家族の危機を捉えた急性期における看取りの看護~デスカンファレンスが救急看護師に及ぼす効果~
【目的】当院は神戸市の基幹病院として365日24時間体制の救急医療・高度医療を提供している。その救急部は、救急外来・救急病棟・第2救急病棟・MPU(精神科身体合併症病棟)の4部署で構成され約130名の看護師を有する。看護師は4部署をローテーションしており、患者を継続して担当することが難しく看護実践を振り返る機会が少ないと感じている。今回、救急外来から救急病棟に入院後1週間で亡くなった患者家族の看取りの看護についてデスカンファレンスを実施した。そこで明らかとなった患者家族の危機的状況に合わせた看護実践及び看護師の心理的変化をもとに、今後の救急部の看護の示唆をえる。
【方法】事例研究
デスカンファレンスの内容をもとに、患者家族の各時期における看護実践及び看護師の心理的変化について検討した。
【事例紹介】A氏壮年期女性。仕事中に意識消失あり視床出血、脳室穿破の診断。入院後1週間で死亡した。夫と二人暮らし。妹と母の面会あり。
【倫理的配慮】患者の夫に対し、個人が特定されないよう配慮し個人情報の守秘を保証することを説明し口頭と文書で同意を得た。
【結果】デスカンファレンスの内容を検討した結果、A氏の家族はフィンクの危機理論の段階をふんでいることがわかった。
<救急外来看護師の語り>
救命目的の脳室ドレナージ術に対して、来院していた妹と来院していなかった夫との間で意見の相違があった。救急外来看護師は医師と共に、手術を希望していない妹の動揺した姿《衝撃》を見て、家族間で手術を行うか話し合う時間が必要と考え待つことにした。最終的に、家族間で合意形成がはかれ手術に向かうことができた。救急外来看護師は、この話し合いの時間がもてたことで「家族のわだかまりがなく最期までいい関係で看取ることができてよかった」と話した。
<救急病棟看護師の語り>
術後に担当した病棟看護師は、家族の心理的背景を考慮してA氏と過ごす時間をもつことを優先した。入院3日頃より、家族から検査の結果や治療内容などに関する質問が多くなり、看護師は家族の求める情報を提供するために医師に説明を依頼した。その後、夫は、以前の脳梗塞の時の治療内容について後悔している思い《防御的退行》を表出した。また、看護師と一緒にA氏の趣味や性格などの話をし、笑顔でA氏に話しかけており、看護師は家族の変化《承認~適応》を感じていた。看取りの際にかかわった看護師は、夫から1週間という時間があってよかったと聞き、「この時間があったからこそ家族の中で考える時間と一緒に過ごす時間が取れて良い看取りとなったのだと感じた」と話した。デスカンファレンスに参加した看護師に対して後日、心理的変化について聞き取りを行うと、「他看護師の看護や良い看取りとなったことを聞き刺激となりもっと頑張ろうと感じた」「カンファレンスの大切さを感じた」という声があった。
【考察】デスカンファレンスでの看護師の語りから、A氏の家族は危機に直面し1週間の中でフィンクの危機理論の4段階をふんでいた。その時々で、看護師が的確に患者家族の危機の段階を見極め関わっていたことが、受容のプロセスにつながったと考えらえる。担当看護師は日々交代していたが、継続して患者家族に必要な看護がおこなわれていたことがわかった。また、デスカンファレンスにより、自身がおこなった看護が、患者家族の危機的状況に合わせた看護実践であったと実感できた。救急外来・救急病棟では短期間での関わりであり、看護を振り振り返る時間も充分にもてないことが多いが、今回の結果より事例を振り返る機会を意図的に設けることが有効であると考える。
【方法】事例研究
デスカンファレンスの内容をもとに、患者家族の各時期における看護実践及び看護師の心理的変化について検討した。
【事例紹介】A氏壮年期女性。仕事中に意識消失あり視床出血、脳室穿破の診断。入院後1週間で死亡した。夫と二人暮らし。妹と母の面会あり。
【倫理的配慮】患者の夫に対し、個人が特定されないよう配慮し個人情報の守秘を保証することを説明し口頭と文書で同意を得た。
【結果】デスカンファレンスの内容を検討した結果、A氏の家族はフィンクの危機理論の段階をふんでいることがわかった。
<救急外来看護師の語り>
救命目的の脳室ドレナージ術に対して、来院していた妹と来院していなかった夫との間で意見の相違があった。救急外来看護師は医師と共に、手術を希望していない妹の動揺した姿《衝撃》を見て、家族間で手術を行うか話し合う時間が必要と考え待つことにした。最終的に、家族間で合意形成がはかれ手術に向かうことができた。救急外来看護師は、この話し合いの時間がもてたことで「家族のわだかまりがなく最期までいい関係で看取ることができてよかった」と話した。
<救急病棟看護師の語り>
術後に担当した病棟看護師は、家族の心理的背景を考慮してA氏と過ごす時間をもつことを優先した。入院3日頃より、家族から検査の結果や治療内容などに関する質問が多くなり、看護師は家族の求める情報を提供するために医師に説明を依頼した。その後、夫は、以前の脳梗塞の時の治療内容について後悔している思い《防御的退行》を表出した。また、看護師と一緒にA氏の趣味や性格などの話をし、笑顔でA氏に話しかけており、看護師は家族の変化《承認~適応》を感じていた。看取りの際にかかわった看護師は、夫から1週間という時間があってよかったと聞き、「この時間があったからこそ家族の中で考える時間と一緒に過ごす時間が取れて良い看取りとなったのだと感じた」と話した。デスカンファレンスに参加した看護師に対して後日、心理的変化について聞き取りを行うと、「他看護師の看護や良い看取りとなったことを聞き刺激となりもっと頑張ろうと感じた」「カンファレンスの大切さを感じた」という声があった。
【考察】デスカンファレンスでの看護師の語りから、A氏の家族は危機に直面し1週間の中でフィンクの危機理論の4段階をふんでいた。その時々で、看護師が的確に患者家族の危機の段階を見極め関わっていたことが、受容のプロセスにつながったと考えらえる。担当看護師は日々交代していたが、継続して患者家族に必要な看護がおこなわれていたことがわかった。また、デスカンファレンスにより、自身がおこなった看護が、患者家族の危機的状況に合わせた看護実践であったと実感できた。救急外来・救急病棟では短期間での関わりであり、看護を振り振り返る時間も充分にもてないことが多いが、今回の結果より事例を振り返る機会を意図的に設けることが有効であると考える。