第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

終末期ケア

[O23] O23群 終末期ケア

2019年10月5日(土) 13:30 〜 14:10 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:谷島 雅子(自治医科大学附属病院 救命救急センター)

[O23-2] 救命救急センターICUにおけるグリーフケアパンフレットの活用状況と今後の課題

福井 美和子, 内田 里実, 山内 美咲, 池内 恵, 鴻巣 有加 (公益財団法人 筑波メディカルセンター病院)

<背景・目的>
 クリティカルケア領域における死は、予期していない突然の出来事であることが多く、家族は、心の準備をする間もなく近親者の死を迎えることとなる。予測不能な死別を経験した家族は複雑性悲嘆にいたるリスクが高いことが報告されている。このことからも、遺族に対する介入は重要である。しかし、本邦でのクリティカルケア領域における遺族ケアの取り組みについて、一部の施設でお悔み状の送付や電話相談などの報告がされているが、その報告数は少ない。
 A病院では、2016年から、ICU・救急外来において、退院後の遺族ケアとして「心のケアパンフレット」をお渡ししている。今回、パンフレット導入後、2年が経過しICUでのパンフレットの活用状況を調査し、今後の課題を明らかにすることを目的とした。
<研究方法>
 調査方法/診療録による単施設後向き観察研究、および自記式調査票による前向き調査
 データ収集期間/観察研究 2016年4月-2019年4月、前向き調査 2019年4月
 対象/A病院救命救急センターICUに勤務する看護師27名
 観察研究の調査項目/パンフレットを渡した事例、リエゾンチームへの相談の有無
 アンケート調査項目/経験年数、パンフレット・遺族ケアに関する内容
 分析方法/ 得られたデータは項目毎に、平均得点、選択肢の回答度数(%)を算出し、
      自由回答については、質的記述データとして内容を整理した。
 倫理的配慮/所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
<結果>
 遺族ケアを開始して以降、遺族へのパンフレットを渡した件数は、74件で、退院後、遺族からの連絡件数は、2件であった。内容は、「気持ちの整理がつかない」「専門家のカウンセリング希望」であった。ICU看護師へのアンケート回収は20名(回収率74%)で、看護師経験年数は、7年(±4)、ICU経験年数は、3年(±2)だった。遺族ケアに関する専門教育については、有りが8名(40%)であった。パンフレットの必要性は、全員が必要であると回答した。遺族会の必要性は、14名(70%)が「必要」と回答していた。終末期における家族へのケアとして、「その人らしく過ごせるように家族から情報を得る」などであった。パンフレットについての意見として、「パンフレットを渡されたご家族がどのように感じているのか」などであった。
<考察>
 今回の調査で、パンフレットについては、全員が必要と回答していた。退院後、遺族からの連絡が2件あり、専門家へ繋げることができていた。現在、本邦では、退院後の遺族に対して、サポート体制は確立していないため、パンフレットを渡すことは遺族のグリーフワークの助けになると考える。
 終末期ケアについては、人生最期の時をともに過ごすための時間や場所の確保などの支援が行われていた。ICUでは、予期悲嘆を十分に確保できない場合もあることや、さらに、患者の生死にかかわる意思決定を下さなければならないこともあり、家族の受けるストレスは計りしれない。しかし、傍で支えてくれる看護師がいることは、感情を整理することにつながり、退院後、悲嘆過程を正常に辿ることが可能であったことが報告されている。
 今回、遺族ケアの学習経験は、40%であり、半数以上が、個々の看護師の経験則での実践であることが明らかとなった。ICU経験年数は、平均3年であり、十分な遺族ケアができているとは言い難い。そのため、遺族に対しての看護を評価するためのデスカンファレンスや学習会等の開催は急務である。また、心のケアパンフレットを受け取った遺族からの評価を得られる方法を見出すことも課題である。