第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

終末期ケア

[O23] O23群 終末期ケア

2019年10月5日(土) 13:30 〜 14:10 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:谷島 雅子(自治医科大学附属病院 救命救急センター)

[O23-4] 三次救急外来における終末期患者家族ケアに関する全国調査:看護管理者による評価および提供体制の実態とその関連

伊東 由康1, 尾花 美幸2 (1.兵庫県立大学看護学部, 2.横浜市立市民病院)

【目的】本研究では、わが国の三次救急外来における終末期患者の家族へのケアに対する看護管理者の評価と提供体制の実態について明らかとするとともに、その関連からケアの提供に求められる組織的体制について検討することを目的とした。【方法】研究デザイン:自記式質問紙を用いた横断研究デザイン。対象:2018年4月1日時点に日本救急医学会が公表する全国の救命救急センター289施設の各看護管理者計289名。調査期間:2018年11月~12月。データ収集方法:自記式質問紙は各救命救急センターの看護師長宛で郵送、三次救急外来の看護管理者1名による質問紙への回答を求めた。調査内容:「三次救急外来での終末期患者家族ケアの実践度評価30項目」、「施設の基本属性4項目」、「三次救急外来での終末期患者家族ケアの提供体制15項目」を作成し使用した。データ分析方法:得られたデータは記述統計量を算出し、回答の分布について分析した。三次救急外来での終末期患者家族ケアの実践度評価30項目については、探索的因子分析から構成因子を抽出し、「看護管理者による三次救急外来での終末期患者家族ケアの実践度評価得点」を作成、合計得点を従属変数、「施設の基本属性」と「三次救急外来での終末期患者家族ケアの提供体制」を独立変数とした強制投入法による重回帰分析から関連因子について抽出した。統計処理には、IBM SPSS 25.0 J for Windowsを使用した。倫理的配慮:所属大学の研究倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】三次救急外来での終末期患者家族ケアの実践度評価30項目の探索的因子分析では、因子負荷量0.45を基準に5因子24項目の「看護管理者による三次救急外来での終末期患者家族ケアの実践度評価得点」を採用した。各項目の評価において、肯定的な評価の割合が高い上位3項目は、「医師や看護師は、家族の質問に正直に答えている」(96.6%)、「医師や看護師は、身体を向け、目や顔を見て話している」(94.0%)、「医師や看護師は、礼儀正しい態度で接している」(93.9%)であり、最も肯定的な評価の割合が低いものは、「看護師は、治療を待つ家族に付き添うように努めている」(63.7%)であった。重回帰分析の結果では、三次救急外来での年間死亡患者数(β= -0.213, t=-2.174)、多職種連携体制の有無(β=0.248, t=2.278)、ケアの評価の有無(β=0.438, t=3.865)、標準化されたケアプランの有無(β=0.241, t=2.515)が得点に関連する因子として抽出された。関連を認めた提供体制に関する各変数の回答の分布については、「多職種連携体制」をとる施設は31.5%であり、職種別では「ソーシャルワーカー」(11.4%)が最も多くの施設が連携体制をもつ職種であった。また、「ケアの評価」を実施している施設は41.6%で最も多くの施設が実施するケアの評価方法は「カンファレンス」(53.0%)であり、「標準化されたケアプラン」のある施設は20.1%であった。【考察】三次救急外来での年間死亡患者数の多い施設ほど看護管理者によるケアの評価は低く、多忙な業務環境による人員不足が終末期患者家族ケアの実践を阻害する要因であることが示唆された。また、多職種連携体制をとり、ケアの評価を実施し、標準化されたケアプランを整備している施設ほどケアの評価は高く、十分なケアを実施するための人員が不足している現状においては、ケアに活用できる人的体制を整備し、ケアの効率化を図ることがその提供に求められる体制であることが示唆された。