第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

チーム医療

[O24] O24群 チーム医療①

2019年10月5日(土) 14:20 〜 15:20 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:直井 みつえ(済生会宇都宮病院 栃木県救命救急センター)

[O24-1] 看護部に所属する病院救急救命士への教育を通して見えたその役割と今後の課題

福田 安津子, 髙井 千晶 (聖隷横浜病院 救急外来)

【はじめに】

近年、病院においての救急救命士(以下救命士)の雇用が増加している。業務内容は施設によって様々であり、対応できる医療行為の範囲を定める法律もない。当院では、現在8名の救命士が働いており、院外の業務は行っていない。2016年度より救命士を担当し、当時は外来での看護助手業務が主なものであった。何を教えていいのか試行錯誤し、看護師と救命士の認識にも解離があり課題は多くあった。関わりの中で見えてきた救命士の役割と今後の課題について報告する。

【目的】

看護師が救命士を指導することで得た役割と課題を明らかにする

【方法】

対象:期間中に雇用された救命士

期間:2016年4月~2019年3月

実施内容

年1回救命士・看護師へアンケート調査

2016年度:仕事内容と教育課程の把握、BLS教育へ参加

2017年度:救命士会開始、救命士の使命の提示、年間の目標・役割の設定、ラダー評価作成・個人評価実施

2018年度:ラダー他者評価実施、救命士業務として救急カート管理と病棟患者の画像検査搬送業務開始

目標はあるべき姿を設定、ディスカッションを行い救命士自身が考えられるように介入。教育システムはパトリシア・ベナーのラダー理論より初心者から達人の5段階レベルに設定し段階的な到達目標を設けた。テクニカルラダーと称して評価表を作成し可視化した。

【倫理的配慮】個人が特定されないよう配慮した

【結果】

2016年度:教育課程から専門科目の履修時間は87単位、看護学部103単位と比較すると少なかった。主な違いは治療と経過に関するものがなかった。救命士は救急外来で救急の仕事を行いたい希望が強く、看護師からは、助手業務を望む意見が多く解離していた。

2017年度:院内での救命士の使命を「患者の救命と安全を守る」とした。救命士自身も病院の中で何をするべきか混沌としていた中で、繰り返し話し合い、救命士自身が自分たちで解決できる目標の設定を実施し提示した。BLS研修のインストラクションを担い、救命士の存在を様々な職種へアピールした。

2018年度:評価(3段階)の8人の平均は2017年度の自己評価は1.4、2018年度の中間評価の他者評価は0.64、最終評価では0.78でラダー1が5人であった。知識の向上が図れたことで、救急カートの管理と画像検査の搬送業務は、病棟看護師へのアンケートから有効な変化があった67%、タスクシェアリングとして有用57%の評価を得た。搬送時に迅速評価を行い、異常所見をみつける系統立てた観察を実施し実践で異常の早期発見ができ評価を得た。

【考察】

使命を提示することや目標設定は、救命士自身の病院内で行う業務や考え方の基本となった。病院の中にない職種が仕事を獲得して組織の一員となるには、組織の中での自分たちの役割を明確にすることが重要と考える。

救命士の持つ知識や技術を病院の中で安全に活用するための教育には、背景を知ることが大切であった。今ある知識や技術を最大限に生かせる業務として、救命士が得意とする蘇生に関する救急カートの管理とBLS教育の実施は多職種とお互いを認識でき、大きな役割を担うことができたと考える。搬送業務について、救命士は安全な搬送方法についての学習は深く、就職後に系統立てた観察を学習することで、安全性の面で効果がありタスクシェアリングとして組織の中でも有効な業務となったと考える。

評価は、自己課題が明確となり、実践の上でも異常の早期発見につながるため継続していく必要がある。

今後、救命士が病院の中で専門性を発揮し、安全に多職種と協働できるようさらなる役割拡大を考える必要がある。