第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

チーム医療

[O24] O24群 チーム医療①

2019年10月5日(土) 14:20 〜 15:20 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:直井 みつえ(済生会宇都宮病院 栃木県救命救急センター)

[O24-3] 初療室稼働によるチーム制導入における医療者の実践の変化と課題

西川 久美子, 藤本 哉恵, 高橋 由香里, 大下 佳織 (北播磨総合医療センター)

目的
A病院は、急性期の地域中核病院であり、1次~2.5次の救急医療体制をとる独立した救急診療科である。開院5年目となる今年度、救急受診患者の増加に伴い、初療室を稼動し、患者を軽症・中症・重症のエリア別での診療を開始した。また、限られた医療者でも協力して患者対応ができるようチーム制を導入した。本研究では、チーム制導入に伴い医療者が感じている実践の変化を明らかにし、今後の課題について検討する。



研究方法
救急科医師3名・看護師5名の合計8名に、フォーカスグループインタビューを実施しデータを収集した。インタビューは1回約30分を2回行い、同意を得てICレコーダーに録音した。逐語録を作成しコード化した後、チーム制導入に伴い医療者が感じている実践の変化に着目し、類似した内容でカテゴリー化を行い分析した。全過程において院内の研究指導者にスーパービジョンを受けた。



倫理的配慮
本研究は、医師・看護師の同意を得て当院の看護部倫理委員会の承認を得て実施した。  
   

結果
逐語録より135のコード、33のサブカテゴリーと14のカテゴリーが抽出された。以下カテゴリーを【 】、サブカテゴリーを< >で示す。なお、14のカテゴリーのうち、医療者の実践の変化として顕著だった5つのカテゴリーについて述べる。
チーム制導入により、医師は<担当看護師がエリア別に明確であり、指示が出しやすい>と感じ、看護師は<医療者間の話をする時間が増えコミュニケーションが円滑になった>と感じていた。初療室で診療することで、医療者は、【初療室稼動により重症患者に対応する環境が整えられ動きやすくなった】と感じており、【初療室が個室のため患者、家族と密に関わることができ、プライバシーも保持できる】と、患者家族と看護師の関わりにも変化を感じていた。また<同じチームのメンバー看護師が患者の状態を把握してくれているので安心>と感じ、【チーム内での状況把握や協力体制ができる】と感じていた。教育への影響では<チーム全体で新人看護師に関わる>ようになり、【医療者の教育環境が整えられた】と感じていた。しかし、中症エリアに患者が集中する傾向にあることから<中症エリアの医療者の負担が大きい>など【エリア別の医療者の負担を平等にすることは難しい】と感じていた。

考察
医療者間のコミュニケーションについては、医師、看護師のどちらも、円滑になったと感じていた。重症患者を個室の初療室で対応することで、医療者は診療環境が整えられ、迅速な処置対応が行えるようになった。患者家族は周囲を気にすることなく、家族の時間を持つことができたと考える。   
救急外来は、緊急対応が必要な患者が多く、担当する看護師にとって正確な知識や技術が求められる。チーム制を導入したことで、患者が来院するまでに受け入れチームの決定ができ、治療やケアの予測を立てることが可能になった。そのため、チームで患者を把握することができ、担当看護師の不安、負担も軽減されたのではないかと推測する。またチームメンバーが互いに教え合い、学び合う環境は、新人看護師への教育にも適していることが分かった。引き続きスタッフの配置調整や、チーム制運用について、患者にとって有益な医療につながっているかの継続的な評価が必要である。