第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

チーム医療

[O25] O25群 チーム医療②

Sat. Oct 5, 2019 3:20 PM - 4:20 PM 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:小笠原 美奈(秋田赤十字病院)

[O25-4] 外国人患者対応における体制作りと救急外来における現状と課題

牧野 祐也, 三浦 康平, 髙田 久美 (社会福祉法人恩賜財団済生会 福岡県済生会福岡総合病院)

【はじめに】
2018年の訪日外国人旅行者数は対前年比8.7%増の3119万人であり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり更なる増加が見込まれる。九州には年間511万人訪れており、中国人と韓国人が80%程を占めている。訪日外国人旅行者数の増加に伴い、病院を受診する外国人患者も増加しており、各施設で適切な医療の確保に向けた対策が望まれている。当院においても、2018年は741名の外国人患者が受診しており、85名の患者が入院となっている。また、40%程の外国人患者は日本語を話せなかった。外国人患者の受け入れにあたり問題となるのが、「言語の違い」、「文化の違い」、「無保険や医療費」の問題が挙げられる。また、母国での継続医療を求める際には国をまたいだ病院間の連携、搬送の手配等の対応も求められる。多くの医療機関ではこれらの問題を抱えた中で、体制整備に追われている。当院においても同様の状況にあり、2017年に国際医療支援室を立ち上げ、中心となって対策を講じている。主な対策内容は、「翻訳ツールの導入」、「中国語・韓国語ができる通訳者の介入」、「対応の中で生じた問題への介入」である。救急外来においては、時間外の体制が手薄な状況において、一刻を争う医療の提供と並行して、コミュニケーションが不十分な中で医療に対する同意を求めなければならない。今回、上記対策だけでは対応できなかった救急外来における外国人対応で難渋した3症例の経験から、体制整備における問題点が示唆されたため報告する。   
【倫理的配慮】
個人が特定されないよう配慮し、発表にあたっては所属施設の看護部倫理委員会の承認を得た。
【事例紹介】
1.緊急で心臓カテーテル検査や入院加療が必要であったが、検査に同意が得られず、飛行機を利用して帰国を希望した事例
2.心停止で搬送されたが、家族が不在であり、その後のご遺体の取り扱いに大使館が介入した事例
3.汎血球減少を認め入院加療を勧めたが、費用の問題で入院加療が難しく、外来で輸血し長時間滞在となった事例
【まとめ】
3事例においては、事前に講じていた外国人対応への対策だけでは不十分であり、診療時間の遅延や医療現場の混乱につながった。支援ニーズや要求レベルが異なる外国人対応においては、予測し得ない問題が発生する。そのため、その都度関連部門で情報共有し対策を講じていく必要がある。夜間等の時間外に対応する救急外来においては、体制が手薄であるため解決策を導きにくい状況にある。事前に対策を講じていなければ対応困難となり、外国人対応にマンパワーや時間が割かれ、他患者への診療にも影響を与えかねない。今後は情報共有と院内対策の周知を図り、限られた人員であっても対応できるシステム作りが必要である。