[O28-1] 自殺未遂患者に対する保健所と救命救急センターの連携
【背景・目的】
2016年4月に自殺対策基本法が改正され、地方自治体に自殺を防ぐための計画を義務づけた。A市においては、2018年6月に「A市自殺対策推進条例」が制定され、10月に施行された。自殺対策を総合的かつ計画的に推進することを目的に、A市自殺対策推進計画が策定された。その計画の一つに自殺未遂者相談事業(いのちの相談支援事業)がある。この事業は、救命救急センターに搬送された自殺未遂者への早期介入から地域生活での再企図防止を図る支援である。
A市の自殺者数は、近年やや減少傾向にあるものの、概ね50~60人/年で推移している。救命救急センター退院後、自殺の再企図を防止する目的で、2018年4月~2019年3月の1年間にA市保健所とB救命救急センターが連携して実施した支援を報告する。
【方法】
対象者:自殺未遂によりB救命救急センターに搬送されたA市在住者を対象に、患者本人及びその親族から同意を得られた者
期間:2018年4月~2019年3月
A市自殺未遂者相談事業の流れを以下に示す。
1)B救命救急センターに自殺未遂患者が入院後、身体的治療が終了段階となると医師または医療相談員からの精神保健支援室の支援を受けるか否か確認する。
2)1)の説明後、同意の得られた場合は、医師または医療相談員からA市保健所(精神保健支援室)へ連絡を行う。
3)連絡を受けた保健所は、臨床心理士・保健師が入院施設で初回面談を実施する。
4)退院後には自宅へ訪問または保健所内での面接を実施する。
5)臨床心理士・保健師が支援を開始し、その結果をB救命救急センターに報告する。
【倫理的配慮】
得られたデータは匿名化を図り、機密性確保に努めた。また、研究発表後は再現不可能なかたちでデータは破棄をする。
【結果】
対象期間のうち、同意の得られた対象者は20名であった。年齢は、15〜83歳と幅広い年齢層で、疾患の内訳はうつ病6名、統合失調症1名、適応障害1名、アルコール依存症1名、解離性障害1名、診断名不明が7名であった。自殺企図に至った原因や動機は、家庭・男女問題と経済問題が半数以上であった。20名の対象者のうち、19名は継続支援を行っており、支援終了となった1名は再企図により死亡となった。
【考察】
自殺未遂者が多く搬送される三次救急医療機関と保健所が入院早期から連携することで、地域生活に戻った後の再企図防止に繋がる可能性が示唆された。残念ながら、1名の自殺者を出してしまったことから、介入頻度の検討やかかりつけ精神科医との連携は今後の課題である。救命救急センターの看護師として自殺未遂患者にできることは少ないが、患者の心に寄り添い、地域生活に戻っても医療者は支えていく旨を伝えることは欠かせない役割である。
本事業の協力医療機関は、三次医療機関であるB救命救急センターのみであるが、他の医療機関の協力が増えることで、多くの自殺未遂患者の再企図防止や心の健康に繋がると考えられる。今後の事業拡大により、自殺未遂患者やその家族の心の健康の維持・増進が期待される。
2016年4月に自殺対策基本法が改正され、地方自治体に自殺を防ぐための計画を義務づけた。A市においては、2018年6月に「A市自殺対策推進条例」が制定され、10月に施行された。自殺対策を総合的かつ計画的に推進することを目的に、A市自殺対策推進計画が策定された。その計画の一つに自殺未遂者相談事業(いのちの相談支援事業)がある。この事業は、救命救急センターに搬送された自殺未遂者への早期介入から地域生活での再企図防止を図る支援である。
A市の自殺者数は、近年やや減少傾向にあるものの、概ね50~60人/年で推移している。救命救急センター退院後、自殺の再企図を防止する目的で、2018年4月~2019年3月の1年間にA市保健所とB救命救急センターが連携して実施した支援を報告する。
【方法】
対象者:自殺未遂によりB救命救急センターに搬送されたA市在住者を対象に、患者本人及びその親族から同意を得られた者
期間:2018年4月~2019年3月
A市自殺未遂者相談事業の流れを以下に示す。
1)B救命救急センターに自殺未遂患者が入院後、身体的治療が終了段階となると医師または医療相談員からの精神保健支援室の支援を受けるか否か確認する。
2)1)の説明後、同意の得られた場合は、医師または医療相談員からA市保健所(精神保健支援室)へ連絡を行う。
3)連絡を受けた保健所は、臨床心理士・保健師が入院施設で初回面談を実施する。
4)退院後には自宅へ訪問または保健所内での面接を実施する。
5)臨床心理士・保健師が支援を開始し、その結果をB救命救急センターに報告する。
【倫理的配慮】
得られたデータは匿名化を図り、機密性確保に努めた。また、研究発表後は再現不可能なかたちでデータは破棄をする。
【結果】
対象期間のうち、同意の得られた対象者は20名であった。年齢は、15〜83歳と幅広い年齢層で、疾患の内訳はうつ病6名、統合失調症1名、適応障害1名、アルコール依存症1名、解離性障害1名、診断名不明が7名であった。自殺企図に至った原因や動機は、家庭・男女問題と経済問題が半数以上であった。20名の対象者のうち、19名は継続支援を行っており、支援終了となった1名は再企図により死亡となった。
【考察】
自殺未遂者が多く搬送される三次救急医療機関と保健所が入院早期から連携することで、地域生活に戻った後の再企図防止に繋がる可能性が示唆された。残念ながら、1名の自殺者を出してしまったことから、介入頻度の検討やかかりつけ精神科医との連携は今後の課題である。救命救急センターの看護師として自殺未遂患者にできることは少ないが、患者の心に寄り添い、地域生活に戻っても医療者は支えていく旨を伝えることは欠かせない役割である。
本事業の協力医療機関は、三次医療機関であるB救命救急センターのみであるが、他の医療機関の協力が増えることで、多くの自殺未遂患者の再企図防止や心の健康に繋がると考えられる。今後の事業拡大により、自殺未遂患者やその家族の心の健康の維持・増進が期待される。