[O28-4] 心肺停止後症候群の患者に対する退院支援・調整の現状
【背景・目的】
救急医療の現場では、患者の早期回復を目指した支援と生活の再構築に向け、患者の視点に立った退院支援と新たな搬送患者に備えた速やかな病床稼働も同時に求められる。しかし、A救命救急センターにおける心肺停止後症候群の患者のうち、蘇生後脳症が残存し、人工呼吸器等の医療依存度の高い患者においては、急性期治療終了後の療養先は少なく、次の療養先の空床確保までの期間を当院で過ごすことになる。このことからベッド稼働が滞り、新たな搬送患者の受け入れが困難になる。
平成30年度A救命救急センターにおける救急搬送患者は1193名で、そのうち、来院時心肺停止患者は423名であった。A救命救急センター全体の平均在院日数は15.3日間であるが、心肺停止後症候群の患者に限っては41日間と3倍近くと長期化している。以上の現状から、心肺停止蘇生後の患者を対象に、退院支援・調整が難渋した理由やその背景にある問題を明らかにすることとした。
【方法】
心肺停止後症候群のうち、蘇生後脳症が残存し、かつ、人工呼吸器等の医療依存度が高く、社会復帰困難となった40歳以上の15名の患者を対象に電子カルテより、後ろ向きに調査した。調査項目は、原疾患、転帰、気管切開術の有無、気管切開術に対してのインフォームドコンセント(以下IC)日、転院についてのIC日、転院についてのIC日から転院調整開始日、転院依頼日から転院日、転院調整に難渋した理由、医療ソーシャルワーカー(以下MSW)の初期面談日、追加面談日とした。
【倫理的配慮】
電子カルテから得たデータは匿名化を図り、機密性確保に努めた。また、研究発表後は再現不可能なかたちでデータは破棄をする。
【結果】
対象患者の心肺停止の原因は内因性疾患が多く、内訳は不詳が5名、循環器疾患(急性心筋梗塞・心不全・大動脈解離)が5名、気道異物による窒息が2名、電解質異常が1名、縊頚が1名であった。気管切開術ICから転院ICまでの平均日数は6.5日間で、最長は31日間であった。転院ICから転院調整を開始するまでの平均日数は10.6日間で、最長は28日間であった。転院依頼日から転院日までの平均日数は8.6日間で、最長は21日間であった。転院調整に難渋した理由においては、病状の安定化等の要因が5名、受け入れに関する家族の要因が2件、転院先の事情が3件であった。MSWとの面談は14件中12件行っており、入院初期に行った面談において転院が必要になる可能性について説明していることから、転院調整についての家族からの不信感や不安言動を聞かれることはなかった。
【考察】
A救命救急センターの退院支援・調整において長期化していると感覚的に持っていた理由は、A救命救急センター側の問題と転院依頼先の問題と2つあることが明らかとなった。A救命救急センター側の問題の中には、病態が安定しない患者の依頼を保留にしていたまま期間が過ぎていることや看護師の能力差により早期に退院支援・調整に動き出していないなど、システムが整えられれば解決できる問題が含まれていた。この様に、医療者の能力差で患者の退院調整期間を延ばしていることが明らかとなったため、医療チームとしてシステムを整えていくことが円滑な病床稼働に繋がることが示唆された。
救命救急センターの看護師として、円滑な病床稼働を視野に入れながら、状態の安定を見極める能力を持つことや危機的状況に陥った家族の受け入れがなされるように関わることが退院支援・調整には重要である。
救急医療の現場では、患者の早期回復を目指した支援と生活の再構築に向け、患者の視点に立った退院支援と新たな搬送患者に備えた速やかな病床稼働も同時に求められる。しかし、A救命救急センターにおける心肺停止後症候群の患者のうち、蘇生後脳症が残存し、人工呼吸器等の医療依存度の高い患者においては、急性期治療終了後の療養先は少なく、次の療養先の空床確保までの期間を当院で過ごすことになる。このことからベッド稼働が滞り、新たな搬送患者の受け入れが困難になる。
平成30年度A救命救急センターにおける救急搬送患者は1193名で、そのうち、来院時心肺停止患者は423名であった。A救命救急センター全体の平均在院日数は15.3日間であるが、心肺停止後症候群の患者に限っては41日間と3倍近くと長期化している。以上の現状から、心肺停止蘇生後の患者を対象に、退院支援・調整が難渋した理由やその背景にある問題を明らかにすることとした。
【方法】
心肺停止後症候群のうち、蘇生後脳症が残存し、かつ、人工呼吸器等の医療依存度が高く、社会復帰困難となった40歳以上の15名の患者を対象に電子カルテより、後ろ向きに調査した。調査項目は、原疾患、転帰、気管切開術の有無、気管切開術に対してのインフォームドコンセント(以下IC)日、転院についてのIC日、転院についてのIC日から転院調整開始日、転院依頼日から転院日、転院調整に難渋した理由、医療ソーシャルワーカー(以下MSW)の初期面談日、追加面談日とした。
【倫理的配慮】
電子カルテから得たデータは匿名化を図り、機密性確保に努めた。また、研究発表後は再現不可能なかたちでデータは破棄をする。
【結果】
対象患者の心肺停止の原因は内因性疾患が多く、内訳は不詳が5名、循環器疾患(急性心筋梗塞・心不全・大動脈解離)が5名、気道異物による窒息が2名、電解質異常が1名、縊頚が1名であった。気管切開術ICから転院ICまでの平均日数は6.5日間で、最長は31日間であった。転院ICから転院調整を開始するまでの平均日数は10.6日間で、最長は28日間であった。転院依頼日から転院日までの平均日数は8.6日間で、最長は21日間であった。転院調整に難渋した理由においては、病状の安定化等の要因が5名、受け入れに関する家族の要因が2件、転院先の事情が3件であった。MSWとの面談は14件中12件行っており、入院初期に行った面談において転院が必要になる可能性について説明していることから、転院調整についての家族からの不信感や不安言動を聞かれることはなかった。
【考察】
A救命救急センターの退院支援・調整において長期化していると感覚的に持っていた理由は、A救命救急センター側の問題と転院依頼先の問題と2つあることが明らかとなった。A救命救急センター側の問題の中には、病態が安定しない患者の依頼を保留にしていたまま期間が過ぎていることや看護師の能力差により早期に退院支援・調整に動き出していないなど、システムが整えられれば解決できる問題が含まれていた。この様に、医療者の能力差で患者の退院調整期間を延ばしていることが明らかとなったため、医療チームとしてシステムを整えていくことが円滑な病床稼働に繋がることが示唆された。
救命救急センターの看護師として、円滑な病床稼働を視野に入れながら、状態の安定を見極める能力を持つことや危機的状況に陥った家族の受け入れがなされるように関わることが退院支援・調整には重要である。