第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

トリアージ

[O29] O29群 トリアージ③

Sat. Oct 5, 2019 1:30 PM - 2:20 PM 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:田中 浩(東京都立広尾病院 看護部 救命救急センター)

[O29-1] A施設における院内トリアージ記録の検証 ~トリアージナースの傾向分析から~

植松 恵 (東海大学付属八王子病院)

【はじめに】A施設では、実施した院内トリアージ記録は、看護師により一次検証を行い適切なトリアージが実施されているか検証するとともにトリアージナースの教育に役立てている。一次検証を実施する中でトリアージナース個人の傾向があることが感じられた。トリアージナースは自分の傾向や限界を認識し現場の調整を行う能力が必要であるとされており、トリアージナース自身が傾向を認識できるよう教育することはトリアージの質の向上につながると考えられる。【研究目的】院内トリアージ記録の検証によりトリアージナース個人の傾向をとらえトリアージ教育の方法について検討する。【研究方法】期間:2018年4月1日~2018年9月30日 対象:A施設の看護師26名 方法:この期間において対象の看護師が記載した院内トリアージ記録から以下の①~⑥のデータを抽出し記述統計を実施した。その上で⑦~⑨の属性別の傾向を調べた。(t検定)①アンダートリアージ(以下UT:JTASレベルⅡ以上をⅢ以下と判断)の有無 ②バイタルサイン測定・身体観察内容が適切か ③接触時間・トリアージ判断時間遅延の有無 ④初期対応・待機場所選定が適切か ⑤記載不備の有無 ⑥再トリアージが適切か ⑦看護師経験年数 ⑧救急外来経験年数 ⑨JTAS受講の有無【倫理的配慮】研究者が所属するA施設臨床研究審査委員会の承認を得た。【結果】看護師平均経験年数9.3±4.0年、救急外来平均経験年数6.1±4.1年、平均トリアージ件数76.8±46.8件、JTAS受講者11名(42.3%)であり、1998例の患者の院内トリアージ記録からデータを抽出した。平均は、UT:1.65±1.47%、バイタルサイン・身体観察内容不適切:11.7±11.1%、接触時間・トリアージ判断時間遅延:9.65±9.13%、初期対応・待機場所不適切:2.05±3.45%、記録不備:17.7±12.5%再評価不適切:5.05±6.43%であった。平均値とトリアージナース個人の割合を比較し、個人の割合が上回っていた項目(以下これを個人課題とする)数を算出した。その結果、個人課題が6項目:2名、5項目:3名、4項目:2名、3項目:8名、2項目:1名、1項目:5名、0項目:5名であった。6個の検証項目それぞれにおいて個人課題があるトリアージナースとないトリアージナースの群に分類し、看護師経験年数と救急外来経験年数、およびトリアージ件数についてt検定を行った結果、すべての検証項目で有意差を認めなかった。JTAS受講者と未受講者の群に分類し、個人課題数と、6個の検証項目の割合についてt検定を実施したところ、いずれにおいても有意差をみとめなかった。【考察】トリアージナース26名において、個人課題数とその項目の特定によりトリアージナースそれぞれの未達成と考えられる課題を見出すことができた。経験年数と個人課題の有無に関連性はなく、経験年数に応じた教育方法よりもトリアージナース個々における課題にアプローチした教育方法が有効である可能性が示唆された。トリアージナース自身が自己の傾向について把握できるよう、研究結果の提示が教育に役立つと考えられた。トリアージ件数と6個の検証項目、および個人課題数についても関連性はなく、件数に関係なく課題が生じていると考えられた。また、JTAS受講の有無と6個の検証項目、および個人課題数についても関連性はなく、JTAS受講者の中でも個人課題数や種類にばらつきがあり個人に合わせた教育が必要であると考えられた。