[O3-4] 急変時のチームビルディングスキル向上のための机上シミュレーション看護教育プログラムの検証
【目的】2018年度、A病院救急病棟スタッフの「急変対応に関する学習ニーズ」を明らかにした。その後、急変対応における効果的なリーダーシップに関与するノンテクニカルスキル(考える力、伝える力、決める力、動かす力)に焦点をあてた机上シミュレーション(以下、シミュレーション=Sim)の開発を行った。今回、机上Simのデザインについて検証することを目的とした。
【方法】机上Simにおける学習目標を「①患者の危機的状況回避に向けた状況判断・対応ができる」、「②チームビルディングスキルを向上することができる」とした。机上Simの学習目標到達の方略として、協同学習の基本技法であるThink-Pair-Shareを取り入れ、次のようにデザインした。1.シナリオ提示:学習者全体に夜勤での急変場面を想定したシナリオを提示し、机上Simに関する課題を与える。2.個人思考<think>:研究メンバーで独自に作成したワークシートに個人思考を記載する。3.集団思考<pair>:ワークシートを基に個人の思考をペアで共有しながら、課題達成に向けた方略を考える。4.全体で意見を交換する<share>。学習目標到達については、各ノンテクニカルスキルの視点から5段階で評価することとした。これらの内容をA病院救急病棟看護師数名に机上Simのβテスト参加者として協力依頼。βテスト後、研究メンバーとともに「学習目標到達に向けたSimデザインになっているか」の観点から約30分ディスカッションをした。机上Simの検証にあたり、ディスカッション内でメモした内容を質的データとして用いた。
【倫理的配慮】参加者には机上Sim本番の倫理審査申請に向けたプレテストであることを説明し、机上Simでのワークシート記載内容、個人・集団での思考はスタッフ評価に含まないこと、研究メンバー以外には口外しないこと等を約束した。
【結果】研究参加者は2名で、救急病棟でのリーダー経験は半年以内であった。Simデザインに関するディスカッション内容から、主に以下の〔3項目〕が抽出された。〔シナリオ〕は、臨床で遭遇する場面が反映されており、設定された患者の状況やチーム編成も現状に即していたことから、救急病棟全体のイメージができた。ノンテクニカルの視点から個人の思考を考える〔ワークシート〕は、設定されたシナリオのいつの時点での思考を求めているのか、何を記載すれば良いのかわからなかった。〔集団思考〕は、個人思考でまとめた自己の考えをもとに、他のメンバーとディスカッションしていく過程で一人では考えられなかった新たな気付きや解釈があった。その反面、研究者が傍にいると間違った解釈をしていないか、思考の評価がされているのではないかといったプレッシャーがあった。
【考察】本机上Simでは、学習者個人の思考を重視し、自由な発想で思考の整理がしやすいようなワークシートの活用を試みた。しかし、ワークシートは、各ノンテクニカルスキルの視点から思考を整理できる構成にはなっておらず、参加者に各問いや場面を分かりやすく表記する修正が必要と考えられた。また、集団思考の際に研究者が傍にいることで参加者にプレッシャーを与えていることが明らかとなった。参加者同士でディスカッションする際は、研究者と参加者との距離を検討する必要があると考えられた。Simにおいては学習者が心理的負担を感じることなく、学習目標到達に向けたデザインをしていくことが重要であるといえる。
【方法】机上Simにおける学習目標を「①患者の危機的状況回避に向けた状況判断・対応ができる」、「②チームビルディングスキルを向上することができる」とした。机上Simの学習目標到達の方略として、協同学習の基本技法であるThink-Pair-Shareを取り入れ、次のようにデザインした。1.シナリオ提示:学習者全体に夜勤での急変場面を想定したシナリオを提示し、机上Simに関する課題を与える。2.個人思考<think>:研究メンバーで独自に作成したワークシートに個人思考を記載する。3.集団思考<pair>:ワークシートを基に個人の思考をペアで共有しながら、課題達成に向けた方略を考える。4.全体で意見を交換する<share>。学習目標到達については、各ノンテクニカルスキルの視点から5段階で評価することとした。これらの内容をA病院救急病棟看護師数名に机上Simのβテスト参加者として協力依頼。βテスト後、研究メンバーとともに「学習目標到達に向けたSimデザインになっているか」の観点から約30分ディスカッションをした。机上Simの検証にあたり、ディスカッション内でメモした内容を質的データとして用いた。
【倫理的配慮】参加者には机上Sim本番の倫理審査申請に向けたプレテストであることを説明し、机上Simでのワークシート記載内容、個人・集団での思考はスタッフ評価に含まないこと、研究メンバー以外には口外しないこと等を約束した。
【結果】研究参加者は2名で、救急病棟でのリーダー経験は半年以内であった。Simデザインに関するディスカッション内容から、主に以下の〔3項目〕が抽出された。〔シナリオ〕は、臨床で遭遇する場面が反映されており、設定された患者の状況やチーム編成も現状に即していたことから、救急病棟全体のイメージができた。ノンテクニカルの視点から個人の思考を考える〔ワークシート〕は、設定されたシナリオのいつの時点での思考を求めているのか、何を記載すれば良いのかわからなかった。〔集団思考〕は、個人思考でまとめた自己の考えをもとに、他のメンバーとディスカッションしていく過程で一人では考えられなかった新たな気付きや解釈があった。その反面、研究者が傍にいると間違った解釈をしていないか、思考の評価がされているのではないかといったプレッシャーがあった。
【考察】本机上Simでは、学習者個人の思考を重視し、自由な発想で思考の整理がしやすいようなワークシートの活用を試みた。しかし、ワークシートは、各ノンテクニカルスキルの視点から思考を整理できる構成にはなっておらず、参加者に各問いや場面を分かりやすく表記する修正が必要と考えられた。また、集団思考の際に研究者が傍にいることで参加者にプレッシャーを与えていることが明らかとなった。参加者同士でディスカッションする際は、研究者と参加者との距離を検討する必要があると考えられた。Simにおいては学習者が心理的負担を感じることなく、学習目標到達に向けたデザインをしていくことが重要であるといえる。