第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

シミュレーション

[O3] O3群 シミュレーション

2019年10月4日(金) 10:30 〜 11:20 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:市村 健二(獨協医科大学病院)

[O3-5] 急変対応のための机上シミュレーション実施前後のノンテクニカルスキルの変化

中村 祐美子1, 船木 淳2, 小迫 瞳1, 清水 愛香1, 平野 通子2, 﨑山 愛4, 山口 優3, 江川 幸二2 (1.神戸市立医療センター中央市民病院 1北病棟, 2.神戸市看護大学 急性期看護学分野, 3.九州大学大学院医学研究院 保健学部門看護学分野, 4.九州大学大学院人間環境学府行動システム専攻心理学コース)

【はじめに】急変時のチームビルディングにはリーダーシップが求められるが、全ての看護師が急変対応に精通したリーダーシップが発揮できるとは限らない。A病院救急病棟では、急変対応に苦手意識を抱いている看護師が多い。そのため、教育プログラムの一環としてノンテクニカルスキル(考える力、伝える力、決める力、動かす力)向上に焦点をあて、リーダーシップにつながる机上シミュレーション(以下、シミュレーション=Sim)を開発した。
【目的】急変時のチームビルディングスキル向上のための机上Sim前後でのノンテクニカルスキルの変化を明らかにする。
【方法】2019年2月に救急病棟リーダーを経験している4-6年目看護師と今後病棟リーダーとなる3年目看護師、ならびに7-10年目の異動既卒看護師の合計44名を対象に机上Simへの参加協力を文書で依頼。机上Sim前後・1か月後にノンテクニカルスキルの変化を5段階で評価し、その理由を自由記述で回答する無記式質問紙調査を実施した。3か月後にも質問紙調査を実施する予定であったが1か月後評価への協力者が少なく、経時的な変化が追えないと判断し中止した。評価は統計学的分析(t検定)と質的内容分析(自由記述)の手法を参考に行った。質問紙の回答は所定のボックスへ投函、またはQRコードを読み取りWeb上で入力し回答できるようにした。
【倫理的配慮】研究メンバーが所属する施設の研究倫理委員会の承認を得てから実施。研究への参加協力は文書で依頼し、机上Sim前に再度口頭で説明。机上Simへの参加、質問紙への回答をもって本研究への同意とした。また、本研究では、スタッフ評価に関することは一切しないこと、机上Sim内で得られた個人情報は口外しないこと、質問紙またはWeb入力から得られた情報は研究代表者で管理し個人の特定はしないこと等を説明した。
【結果】机上Simは合計7回にわたり実施し22名の看護師(6年目:2名、5年目:5名、4年目:6名、3年目:8名、異動既卒者:1名)から参加協力が得られた。ノンテクニカルスキルの得点を机上Sim前と直後で比較したところ「考える力」、「伝える力」、「決める力」、「動かす力」の全項目に有意な変化が見られ(p<0.05)、机上Sim後に上昇していた。机上Sim前後での各ノンテクニカルスキルの変化に関する自由記述では「思考を口にして明確に伝えることの重要性が分かった」、「話し合うことで意見の広がりが生まれたため、もっとコミュニケーションをとって急変対応をしていく必要性が分かった」、「他の看護師と話をしてみて、自分の判断が間違っていないことに自信が持てた」、「的確に指示が出せるかまだ自信が持てない」などの記述があった。1ヵ月後評価は3名から協力を得られたが、人数が少ないため分析から除外した。
【考察】机上Simによって各ノンテクニカルスキルが上昇していたことから、開発した机上Simはノンテクニカルスキルの重要性の理解、向上につながるものであるといえる。しかし、机上Sim後に各ノンテクニカルスキルが向上することは想定内であり、本研究においては個々のスキルの継続的な推移を明らかにすることが重要であったといえる。しかし、今回はそこまで至ることができず、研究手法の再検討が必要となった。今後は、机上Simでトレーニングした思考が実践に活用できているかの観点から模擬環境下でのSimを計画している。行動レベルで客観的評価ができることで、ノンテクニカルスキルの維持・向上に関する個々の課題が明確になると考えられる。