第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

トリアージ

[O30] O30群 トリアージ④

2019年10月5日(土) 14:20 〜 15:20 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:西尾 宗高(杏林大学医学部付属病院)

[O30-2] 小児の呼吸器系における緊急度判定の現状 -看護師の観察に焦点をあてて-

鈴木 麻未, 池田 典子 (JA愛知厚生連 安城更生病院 救命救急センター)

【はじめに】当院救命救急センターでは、2014年7月よりJTASを導入し、徒歩受診で来院した患者に対して緊急度判定を行っている。受診総数の約33%が小児であり、そのうちJATSの症候リストで「呼吸器系」を選択された症例は29%であった。そして、2018年度における小児の緊急度判定では、呼吸器系でアンダートリアージが最も多かった。小児では呼吸不全から心停止に至る症例が多い(船曳,2010)ほか、自覚症状を言語として表現することが難しい特徴がある。よって、緊急度判定において看護師による他覚所見の観察及びプロセスが重要となる。
【目的】JTASを用いた小児の緊急度判定において、看護師の観察が呼吸器系の緊急度判定に及ぼす影響を明らかにする。
【方法】対象と期間:2018年4月~2019年3月に当センターを徒歩受診し、JTASの症候リストで「呼吸器系」と判定された小児
調査方法:トリアージ用紙、診療録から調査項目を後方視的に調査した。トリアージ認定看護師と救急科医師により事後検証を行った。
調査項目:身体所見(呼吸様式、顔色、咳嗽、喘鳴)、バイタルサイン(体温、脈拍、呼吸数、SpO2)及び既往歴聴取の有無、対象者の性別及び年齢、緊急度判定の妥当性
分析方法:IBM SPSS Statistics(version21)を用いてχ2検定を行い、有意確率をp<0.05とした。緊急度判定の妥当性においては、アンダートリアージ症例のコードの内訳を単純集計した。
【倫理的配慮】所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。(管理番号R-19-002)
【結果】対象者は140症例であった。アンダートリアージは37例あり、そのうち「呼気性喘鳴」の症候リストを選択した症例は16例(43%)と最も多かった。次いで、「息切れ」が7例(19%)、「アレルギー反応」が3例(8%)であった。身体所見の観察は、「喘鳴」の観察が103例(74%)と最も多く、「喘鳴」とともに「呼吸様式」(p<.001)、「SpO2」(p=.004)の観察をしていた群が有意に多かった。また、「年齢」が3歳以下の小児に対して、「既往歴聴取」の問診が有意に行われていた(p=0.12)。緊急度判定の妥当性は、アンダートリアージにおいて「喘鳴」の観察をしていた群に有意差を認めた(p=.038)。その他の観察項目と緊急度の妥当性に有意差は認めなかった。
【考察】他覚所見の観察について、看護師は聴診時に胸腹部を観察し、「喘鳴」から予測される病態を考えた結果、「喘鳴」と共に「呼吸様式」「SpO2」を観察していたと考える。呼吸器系の症候リストには既往歴に関連するものが多い。加えて、当院が総合周産期母子医療センターを有し、基礎疾患を抱えている小児が多いことが影響し、既往歴の聴取につながったと考える。しかし、「喘鳴」を観察した場合の方が、アンダートリアージが多く、他覚所見を観察したにも関わらず、それを緊急度判定に活かせていない現状があった。観察した所見をアセスメントし、総合的に判断することが必要である。そのため、今後は他覚所見を観察後、判定までのプロセスに焦点を当てた介入が必要であると考える。