[O30-3] 院内トリアージ実施患者における主訴と診断結果との関連
Ⅰ.はじめに
A病院は二次救急指定病院であり救急搬送以外の患者(以下、Walk-In患者とする)を対象にトリアージ専任看護師を配置し、JTAS(Japan Triage and Acuity Scale)を使用した院内トリアージを実施している。年々増加するWalk-In患者へ安全かつ効率的に対応するために、トリアージの質向上が求められている。そのため2017年度のトリアージ実践結果データを集計し、その結果から一番多い主訴の「腹痛」に焦点を当て、Walk-In患者の特徴と自施設の実態を明らかにすることでトリアージの質向上に対する学習効果に繋げることができるのではないかと考えた。
Ⅱ.目的
本研究は、A病院のトリアージ実践結果の中で、主訴と診断結果の関連性を明らかにすることを目的とする。
Ⅲ.方法
1.期間:2017年4月〜2018年3月 2.対象:8:30~17:00までの日勤帯の中でトリアージ専任看護師がJTAS評価を行ったWalk-In患者4311人 3.データ収集と分析方法:対象トリアージ表から得た結果をデータ化し、単純集計・分析し、主訴数・種類、月毎の件数、診断結果を抽出した。
Ⅳ.倫理的配慮
本研究はA病院倫理審査委員会の承認を得て実施した。
Ⅴ.結果
1.救急外来受診患者総数は21034人、Walk-In患者数は11727人であり、その中で日勤帯では4311人受診し、月平均数は359人であった。上位を占めた主訴は腹痛(23%)・発熱(14%)・息切れ(10%)であった。
2.腹痛を主訴とし入院した患者は全体の39%だった。また受診数による季節変動はなかった。診断結果で上位を占めた診療科は外科(32.1%)と消化器内科(34.0%)であった。
3.診断された疾患数は53疾患あった。外科領域で上位を占めた診断結果は「急性虫垂炎」「イレウス・腸閉塞」「胆石発作」で、消化器内科領域では「急性胆嚢炎」「急性膵炎」「急性腸炎」、婦人科領域では「卵巣腫瘍茎捻転」「子宮外妊娠」「卵巣腫瘍破裂」であった。
Ⅵ.考察
「腹痛」からの診断結果としては、緊急手術適応や高度医療を要し、いずれも緊急性・重症性ともに高かった。この傾向は一般的なWalk-In患者でみられるものであり、A病院もこれに矛盾していないといえる。今回の結果から緊急度判定が高い場合にはトリアージ専任看護師として臨床推論を用いて分析、パターン認識を行い、緊急手術・処置・検査を想定した必要な情報収集や、より安全・安楽を考慮した診察までの初期対応の必要性が考えられた。トリアージ専任看護師が幅広い知識・対応方法の事前習得の必要性を言われているが、今回の結果から「腹痛」の症状だけでも膨大な学習量であるため、効率的な学習方法が必要である。そのため自施設の特徴を把握し、多く有する症状・疾患看護から優先的に取り組むという学習方法が効率的である。また当院では重症集中管理や救急看護経験がないスタッフなど様々な教育背景のトリアージ専任看護師がいることを踏まえると、効果的な部署内教育としての取り組みが重要といえる。自施設の特徴に合わせた学習を進めることは、安全な医療の提供を行う上で、また即応性を求める救急看護領域においても患者や家族へ満足度の高いケアの提供につながり、個々のスタッフの救急看護能力の向上へも繋がるのではないかと考えた。
Ⅶ.結論
自施設の特徴を知ることでトリアージという限られた時間・情報の中での看護実践を安全かつ効率的に提供するための学習課題を得ることができた。部署内教育として取り組むための学習計画展開の検討が示唆された。
A病院は二次救急指定病院であり救急搬送以外の患者(以下、Walk-In患者とする)を対象にトリアージ専任看護師を配置し、JTAS(Japan Triage and Acuity Scale)を使用した院内トリアージを実施している。年々増加するWalk-In患者へ安全かつ効率的に対応するために、トリアージの質向上が求められている。そのため2017年度のトリアージ実践結果データを集計し、その結果から一番多い主訴の「腹痛」に焦点を当て、Walk-In患者の特徴と自施設の実態を明らかにすることでトリアージの質向上に対する学習効果に繋げることができるのではないかと考えた。
Ⅱ.目的
本研究は、A病院のトリアージ実践結果の中で、主訴と診断結果の関連性を明らかにすることを目的とする。
Ⅲ.方法
1.期間:2017年4月〜2018年3月 2.対象:8:30~17:00までの日勤帯の中でトリアージ専任看護師がJTAS評価を行ったWalk-In患者4311人 3.データ収集と分析方法:対象トリアージ表から得た結果をデータ化し、単純集計・分析し、主訴数・種類、月毎の件数、診断結果を抽出した。
Ⅳ.倫理的配慮
本研究はA病院倫理審査委員会の承認を得て実施した。
Ⅴ.結果
1.救急外来受診患者総数は21034人、Walk-In患者数は11727人であり、その中で日勤帯では4311人受診し、月平均数は359人であった。上位を占めた主訴は腹痛(23%)・発熱(14%)・息切れ(10%)であった。
2.腹痛を主訴とし入院した患者は全体の39%だった。また受診数による季節変動はなかった。診断結果で上位を占めた診療科は外科(32.1%)と消化器内科(34.0%)であった。
3.診断された疾患数は53疾患あった。外科領域で上位を占めた診断結果は「急性虫垂炎」「イレウス・腸閉塞」「胆石発作」で、消化器内科領域では「急性胆嚢炎」「急性膵炎」「急性腸炎」、婦人科領域では「卵巣腫瘍茎捻転」「子宮外妊娠」「卵巣腫瘍破裂」であった。
Ⅵ.考察
「腹痛」からの診断結果としては、緊急手術適応や高度医療を要し、いずれも緊急性・重症性ともに高かった。この傾向は一般的なWalk-In患者でみられるものであり、A病院もこれに矛盾していないといえる。今回の結果から緊急度判定が高い場合にはトリアージ専任看護師として臨床推論を用いて分析、パターン認識を行い、緊急手術・処置・検査を想定した必要な情報収集や、より安全・安楽を考慮した診察までの初期対応の必要性が考えられた。トリアージ専任看護師が幅広い知識・対応方法の事前習得の必要性を言われているが、今回の結果から「腹痛」の症状だけでも膨大な学習量であるため、効率的な学習方法が必要である。そのため自施設の特徴を把握し、多く有する症状・疾患看護から優先的に取り組むという学習方法が効率的である。また当院では重症集中管理や救急看護経験がないスタッフなど様々な教育背景のトリアージ専任看護師がいることを踏まえると、効果的な部署内教育としての取り組みが重要といえる。自施設の特徴に合わせた学習を進めることは、安全な医療の提供を行う上で、また即応性を求める救急看護領域においても患者や家族へ満足度の高いケアの提供につながり、個々のスタッフの救急看護能力の向上へも繋がるのではないかと考えた。
Ⅶ.結論
自施設の特徴を知ることでトリアージという限られた時間・情報の中での看護実践を安全かつ効率的に提供するための学習課題を得ることができた。部署内教育として取り組むための学習計画展開の検討が示唆された。