第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

トリアージ

[O30] O30群 トリアージ④

Sat. Oct 5, 2019 2:20 PM - 3:20 PM 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:西尾 宗高(杏林大学医学部付属病院)

[O30-5] 皮疹を主訴としアナフィラキシーと診断された院内トリアージの現状調査

白石 尚子, 石原 寿宏, 五十嵐 裕司, 村山 ゆかり, 鈴木 好, 石塚 久美子 (小田原市立病院救急センター)

【はじめに】
A病院では独歩患者に対し看護師が院内トリアージを実施している。アナフィラキシーは急激な症状の増悪、再燃の可能性がある緊急疾患である。しかし来院時主訴が皮疹のみの場合、アナフィラキシーの可能性を考慮すべきか、トリアージ看護師の問診によって判定のばらつきがみられた。今回、皮疹を主訴としアナフィラキシーと診断された院内トリアージの現状を調査したため報告する。
【目的】
皮疹を主訴としアナフィラキシーと診断された院内トリアージの現状を明らかにする。
【方法】
2018年1月~2019年4月までに皮疹を主訴に来院した35名中アナフィラキシーと診断された患者8名のトリアージ記録から
JTASレベル、既往、バイタルサイン、随伴症状、経過、レベル判定の理由を振り返る。
【倫理的配慮】
A病院の倫理審査委員会の審査を受けた。
【結果】
 アナフィラキシーと診断された8名のトリアージ判定の内訳はJTAS2が3症例、JTAS4が5症例。
 皮疹以外に呼吸器症状、消化器症状、神経症状を呈していた。
 JTAS2の3症例中、1症例目はアレルギーの既往歴有り。バイタルサインの異常は認めず。来院時に呼吸困難感と嘔気、持続する腹痛がありJTAS2と判定。2症例目は既往歴無し。バイタルサインでは頻呼吸、頻脈、発熱を認めていた。来院時、呼吸困難感を認めJTAS2と判定。3症例目の既往歴は喘息がありバイタルサインでは頻脈を認めていた。同日2回の意識消失があり皮疹を伴い救急搬送されたが帰宅となった後、再度皮疹が出現し増悪したため来院。来院時、口唇の腫脹のみ認めた。JTAS3と判定したが2回目の受診であるためトリアージレベルを上げてJTAS2としていた。
 JTAS4の5症例中、4症例には既往歴無し。バイタルサインに異常は認めず。いずれも発症時に呼吸困難感を自覚していたが来院時は軽快しJTAS4と判定。5症例目はアレルギーの既往歴有り。バイタルサインは頻脈を認めていた。来院時、発疹の増悪あり呼吸器症状や消化器症状は認められなかったが点滴治療中に嘔気が出現した。
【考察】
 JTAS2の3症例中、2症例は来院時継続した複数の症状からアナフィラキシーを疑い緊急度が高いと判断したと考えられる。またレベルを上げた3症例目は、二相性反応を疑ったためと考えられる。
 JTAS4の5症例中、4症例はいずれも発症時に呼吸器症状を認めたことを問診で聴取していたが、来院時には軽快し皮疹以外認められなかった。バイタルサインも正常であったためJTAS4と判定したと考えられる。5症例目は発症時にも皮疹以外の症状は認められなかった。しかしアレルギー歴があり来院時の皮疹増悪、来院後の随伴症状の出現によりアレルギー反応の再燃、増悪が考えられる。この症例では主訴が皮疹のみであっても重症化する可能性を考慮すべきであったと考える。
 現状では問診でアナフィラキシーを疑う情報を得ても来院時、随伴症状は軽快、または消失、また随伴症状を認めず主訴が皮疹のみの場合では非緊急となる傾向にある。アナフィラキシーは即時性以外にいくつかのパターンを呈するものがあるが鑑別は困難なものが多い。そのためアナフィラキシーを疑う情報が得られれば来院時に症状が軽快していても重症化する可能性を考慮してトリアージ判定することが妥当であると考える。
【結語】
アナフィラキシーと診断された院内トリアージの現状が明らかになった。今後は更に継続した調査を行うとともにトリアージ看護師のアナフィラキシーに対する知識の研鑽に努めていきたい。