第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

トリアージ

[O31] O31群 トリアージ⑤

2019年10月5日(土) 15:20 〜 16:20 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:松﨑 八千代(筑波メディカルセンター病院)

[O31-4] トリアージの記録を用いて腸閉塞をトリアージナースが見つけ出すルールの作成

林 智美1, 川野 貴久2, 高山 裕喜枝1 (1.福井大学医学部附属病院 看護部, 2.福井大学医学部附属病院 救急部)

【目的】

腸閉塞は特徴的な症状に乏しい場合、胃腸炎と鑑別が難しく救急外来において、アンダートリアージされてしまうことが多い。今回の研究では腸閉塞の可能性がある患者を見つけ出すルールを作成することを目的とする。

【方法】

この研究は2016年12月から2018年12月末までA病院救急外来を受診し消化器症状を呈していたトリアージレベル4または5(JTASによる重症度分類)の患者を対象に後ろ向きに行った。トリアージ記録と患者のCTの読影記録からデータを抽出し、放射線科医が画像診断した腸閉塞をアウトカムとした。決定樹解析を用いて、患者の年齢、性別、主訴(嘔吐、下痢、便秘、吐き気、腹部膨満感、頭痛、めまい)とバイタルサインを用いて、トリアージ情報をもとに腸閉塞を見つけるルールを作成した。

【倫理的配慮】

研究者の所属する施設の倫理審査委員会の承認を得た。患者情報は個人情報保護のため連結可能匿名化を行った。

【結果】

対象期間に消化器症状を示しトリアージレベルが4、5でありデータに欠損がなかった患者は1721人であり、そのうち腸閉塞は22人(1.28% 95%CI 0.80%~1.93%)。トリアージの段階で腸閉塞の患者は22人/22人(100%)腹部膨満と吐き気を訴えていたが、腸閉塞以外の患者は腹部膨満19人/1699人(1.1%)と吐き気150人/1699人(8.8%)であった。決定樹解析の結果、ルールは①下痢なし②めまいなし③嘔吐あり④61歳以上:体温≧36.5℃ 61歳未満:心拍数<72となった。このルールの感度、特異度は54.6%(95%CI 32.2%~75.6%)、93.3%(95%CI 92.0%~94.4%)であった。陰性的中率は99.4%(95%CI 99.0%~99.6%)であった。

【考察】

今回、トリアージで得られる情報を用いて軽症患者より腸閉塞の患者を探すルールを作成した。救急外来でのトリアージの際に看護師でもこの①~④の問診とバイタル測定を行うことにより、腸閉塞の可能性のある患者を絞り込むことが出来ると考えられる。
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