第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

トリアージ

[O31] O31群 トリアージ⑤

Sat. Oct 5, 2019 3:20 PM - 4:20 PM 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:松﨑 八千代(筑波メディカルセンター病院)

[O31-5] A病院救急外来におけるアンダートリアージの要因と対策~循環器疾患のアンダートリアージ減少を目指して~

渡邊 朝子, 林田 明美, 柴尾 嘉洋, 松野 ひとみ (済生会熊本病院救命救急外来)

【目的】A病院救急外来では、年間約10000人のウォークイン患者の院内トリアージを実施している。過去4年間のトリアージ対象者は約40000人であり、そのうちA病院が定義するアンダートリアージ(以下UT)は106例であった。UTとなった症例の振り返りを行いトリアージのスキル向上に努めているが、トリアージナースがUTを減少させる高いスキルを習得するには、症例の積み重ねと事後検証による臨床推論の学習が必要であると考える。よってA病院では1回/月、医師・救急看護認定看護師によるトリアージ検証会を実施している。106例の中でUTの割合が多かった循環器疾患は、緊急度の高い疾患が多く、早期の治療介入が患者の予後を左右するため、迅速で的確なトリアージが求められる。そこで、安全で的確なトリアージを行うため、UTとなった患者の傾向を分析したので報告する。
【期間・方法】2014年4月~2017年3月31日にウォークインで受診し、UTとなった106例のカルテ検索。単純集計Excel12010、統計学的集計 SPSSver22を使用、後ろ向きのコホート研究
【用語の定義】アンダートリアージ(UT):A病院の院内トリアージで緑判定(低緊急)とされICU、EHCU、HCUへ入院となった症例
トリアージナース:看護師経験年数4年以上かつ救急外来の勤務期間が6ケ月以上で、救急看護認定看護師による研修を受け、院内トリアージ検証会にて一定の基準を満たし承認を受けた者
【倫理的配慮】 今回の結果は本研究のみで使用し、個人が特定できないよう配慮し研究終了後に破棄する。A病院看護部の倫理審査で承諾を得た。
【結果】診療科別でのUTの割合は、脳神経内科・脳神経外科43例(40.5%)が最も多いが、緊急を要する疾患ではなかった。次に循環器科が23例(21.7%)を占めており、内11例は緊急カテーテル検査を行い、11例中7例は、経皮的冠動脈形成術を施行しており、迅速な判断が必要な病態であった。循環器疾患のUT全例でバイタルサインに異常は認めず、NRSの程度、発症時期にはばらつきがあり緊急度・重症度の評価は困難であった。循環器疾患のリスクファクターには、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心疾患の既往などがある。循環器疾患のUT23例中の87%が、何らかのリスクファクターの既往を有していた。内訳は4つの既往を有している患者が9%、3つの既往が17%、2つの既往が22%、1つの既往が39%であり、23例のうち48%に喫煙歴があった。主訴分類は、胸痛・胸部違和感・胸部圧迫感30%、呼吸苦26%、倦怠感・気分不良13%、背部痛8%、腹痛8%、嘔吐4%、浮腫4%、下腿痛4%であった。
【考察】循環器疾患の割合が多い理由として、緊急度が高い疾患が多いが、バイタルサインに異常がない、来院時の症状・痛みの軽減(NRS 3以下)、第一印象で重篤感がないことが理由でUTとなっている可能性が考えられる。また、胸痛・胸部圧迫感などの典型的な症状のものから倦怠感・気分不良など非典型的な症状を訴えることもあり、トリアージの段階で心原性かを判断するのは容易ではないことも要因と考える。トリアージの質の向上には、事後検証のフィードバックによる臨床推論の学習を継続し、病態を見抜く能力を習得する必要がある。
【結語】①緊急性が高く、早期の治療介入が予後を左右する循環器疾患を疑う患者に対しては、症状・バイタルサインだけでなくリスクファクター要因を聴取することでUT減少につながる。②トリアージの事後検証により、臨床推論のスキルを向上させることが重要である。