[O4-2] 初期治療室における多職種連携教育の実践 ~学習者のモチベーション維持に向けた取り組み~
【目的】
A病院の救命救急センターでは、初期治療室業務(以下ER業務)開始前に、必要な知識技術を獲得するため、机上の学習やシミュレーションで人材育成を実施してきた歴史がある。しかし、近年はER業務に対し不安や恐怖を感じるスタッフが多く、それが学習の継続とモチベーションの維持に影響している現状がある。不安や恐怖を感じる理由は、医師をはじめとした専門職者の思考過程を共有できておらず、さらに看護師として病態経過を見据え、起こり得ることの予測、判断をしていく思考が形成されていないことでERでの実践を困難にしていたためであった。そこで、多職種の視点で診療のゴールとプロセスを共有することで多職種の思考を知り、それを意識することで、救急看護師としての思考を形成し行動化につなげていく多職種連携教育を試みた。この多職種連携教育の成果を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は、これから新たにER業務を担当する看護師6名、救急初期診療の経験の浅い医師2名、病棟担当薬剤師2名とした。事前課題として、以下の2点を課した。1)当院救命救急センターで使用している、外傷診療プロトコルの用語で説明できないものは調べておくこと、2)救急隊からのホットラインの情報を提示し、予想される外傷とそれに対する準備、最善のゴールとそれを阻害する因子についてグループウェア(Microsoft Teams)上で考え、共有した。その後、看護師3名、医師1名、薬剤師1名のグループで対面セミナーを実施した。各グループのファシリテーターにはER業務経験豊富な看護師を割り当てた。事前課題を基に、それぞれの職種の視点で考えてきたことをグループで話し合い、発表を行った。評価の方法は、ケラーのARCSモデルを用いてアンケートを実施した。
【倫理的配慮】
研究の目的、方法、期待される結果と対象者の利益、不利益について説明し、同意を得た。また、研究の過程と公表にあたっては匿名性と個人情報保護について配慮した。
【結果・考察】
対面セミナー後、看護師のアンケート結果では、6名中5名から回答が得られた。チームで実践したくなったかどうかの項目では平均4.0、実際の現場で活用しようと思ったかは4.2、やりがいがあったかは4.6、自信が持てたかは3.4、満足度は4.4であった。自信が持てたかに対しては3.4と低かった。自信に関する点数の低さは、経験豊富な看護師の思考を知り、能力差が浮き彫りになったことが影響していた。実際に多職種連携教育によってER業務に対する不安や恐怖が直接的に軽減に繋がるとは言えない結果となったが、「チームで実践したくなった」、「現場で活用しようと思った」などのやりがいに繋がる結果が得られた。これは多職種連携教育によって、多職種の視点で診療のゴールとプロセスを共有したことによって、患者のゴールを最善に考えた看護師としての役割が明確化して、各個人へモチベーションの向上をさせている可能性が高いと考える。またモチベーションの向上が、継続的な学習機会の動機付けにも繋がる。今回の調査では、初期治療室における救急看護師に必要な思考を構築させることまでには至らなかったが、多職種の視点で診療のゴールとプロセスを共有したことによって、患者のゴールを最善に考えた看護師としての役割を明確化させ、モチベーションの向上を図ることが、救急看護師に必要な思考を構築させるための重要な第一段階であると示唆された。
A病院の救命救急センターでは、初期治療室業務(以下ER業務)開始前に、必要な知識技術を獲得するため、机上の学習やシミュレーションで人材育成を実施してきた歴史がある。しかし、近年はER業務に対し不安や恐怖を感じるスタッフが多く、それが学習の継続とモチベーションの維持に影響している現状がある。不安や恐怖を感じる理由は、医師をはじめとした専門職者の思考過程を共有できておらず、さらに看護師として病態経過を見据え、起こり得ることの予測、判断をしていく思考が形成されていないことでERでの実践を困難にしていたためであった。そこで、多職種の視点で診療のゴールとプロセスを共有することで多職種の思考を知り、それを意識することで、救急看護師としての思考を形成し行動化につなげていく多職種連携教育を試みた。この多職種連携教育の成果を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は、これから新たにER業務を担当する看護師6名、救急初期診療の経験の浅い医師2名、病棟担当薬剤師2名とした。事前課題として、以下の2点を課した。1)当院救命救急センターで使用している、外傷診療プロトコルの用語で説明できないものは調べておくこと、2)救急隊からのホットラインの情報を提示し、予想される外傷とそれに対する準備、最善のゴールとそれを阻害する因子についてグループウェア(Microsoft Teams)上で考え、共有した。その後、看護師3名、医師1名、薬剤師1名のグループで対面セミナーを実施した。各グループのファシリテーターにはER業務経験豊富な看護師を割り当てた。事前課題を基に、それぞれの職種の視点で考えてきたことをグループで話し合い、発表を行った。評価の方法は、ケラーのARCSモデルを用いてアンケートを実施した。
【倫理的配慮】
研究の目的、方法、期待される結果と対象者の利益、不利益について説明し、同意を得た。また、研究の過程と公表にあたっては匿名性と個人情報保護について配慮した。
【結果・考察】
対面セミナー後、看護師のアンケート結果では、6名中5名から回答が得られた。チームで実践したくなったかどうかの項目では平均4.0、実際の現場で活用しようと思ったかは4.2、やりがいがあったかは4.6、自信が持てたかは3.4、満足度は4.4であった。自信が持てたかに対しては3.4と低かった。自信に関する点数の低さは、経験豊富な看護師の思考を知り、能力差が浮き彫りになったことが影響していた。実際に多職種連携教育によってER業務に対する不安や恐怖が直接的に軽減に繋がるとは言えない結果となったが、「チームで実践したくなった」、「現場で活用しようと思った」などのやりがいに繋がる結果が得られた。これは多職種連携教育によって、多職種の視点で診療のゴールとプロセスを共有したことによって、患者のゴールを最善に考えた看護師としての役割が明確化して、各個人へモチベーションの向上をさせている可能性が高いと考える。またモチベーションの向上が、継続的な学習機会の動機付けにも繋がる。今回の調査では、初期治療室における救急看護師に必要な思考を構築させることまでには至らなかったが、多職種の視点で診療のゴールとプロセスを共有したことによって、患者のゴールを最善に考えた看護師としての役割を明確化させ、モチベーションの向上を図ることが、救急看護師に必要な思考を構築させるための重要な第一段階であると示唆された。