第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

看護教育

[O4] O4群 看護教育①

Fri. Oct 4, 2019 2:00 PM - 3:00 PM 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:諸岡 健一郎(社会医療法人 雪の聖母会 聖マリア病院)

[O4-4] 初療看護における思考教育がもたらす効果

新井 利維 (医療法人社団 明芳会 イムス東京葛飾総合病院)

【はじめに】緊急度・重症度の高い患者が混在する初療部門では迅速に問題を把握し、対処しなければならない。このような状況では思考と判断を働かせる必要があるとBenner(2005)は述べている。特に多様化・複雑化した現代社会では看護師が主体的に考え、物事の本質を捉える思考力が重要となる。ただ、思考は可視化しにくく、偶発的学習といった経験値を積むことで養われており、既存の教育においては体系化されていない。批判的思考として研究が見受けられるものの対象は学生である。今回、初療看護師に対して批判的思考力と概念的思考力について教授し、Kirkpatrickに準じて教育効果を可視化した。目的は思考教育の効果を明らかにすることである。
【方法】1)量的研究。2)期間:2018年12月~2019年3月。3)対象:院内ER所属の看護師20名。4)介入方法:初療での批判的・概念的思考の活用方法を1回目input中心型、2回目output中心型で教授した。5)データ収集方法:属性調査(経験年数、資格)、質問調査(5件法)、記述問題、思考力(批判的・概念的)と思考態度(主体性・協働性・即応性)の測定尺度。尺度は先行文献を参考に独自に作成した相対尺度の7件法を用いて点数化した(30項目)。6)分析方法:統計学的処理(p<0.05)。
【倫理的配慮】院内の倫理委員会の承認を得た。対象者には個人情報の保護等を説明し、同意を得た。
【結果】介入者8人。1)反応 介入後の質問調査より、平均値は満足度5、関連性4.88であった。2)学習 自信4.5、記述問題は正解率94%(介入前25%)であった。尺度に関しては内的整合性の確認のため、介入前のn=20の全項目点数よりCronbach’sのα係数を算出し、0.954であった。また構成妥当性の検討は初療部門の経験年数と総得点数の間でSpearmanの順位相関係数を求め、r=0.649(p<0.01)と相関を示した。他に思考力と思考態度はr=0.672(p<0.01)と正の相関を示した。介入前後の尺度比較にはWilcoxonの符号順位検定を用いて、思考力p=0.012(批判的p=0.012概念的p=0.012)、思考態度p=0.017(主体性p=0.035協働性p=0.106即応性p=0.031)であった。3)行動 1ヶ月後の質問調査より、平均値は批判的思考の活用4.25、概念的思考の活用4.13、看護実践の変化3.75であった。
【考察】教育は総じてlevel2の達成に留まっているが、臨床で成果を残す行動がとれるように支持することが重要である。今回、level3まで一定の成果を認めた。思考教育は懐疑的姿勢を身につけ、問題の核心に迫るため、McTighe&Wiggins(2004)が提唱する知の構造から学習効果が高まり、level3に至ったと考える。また尺度より思考力と思考態度の相関を認め、考える力が高まることにより、習得したものを主体的に活用するといった行動に繋がった。今教育は思考力と同時に主体性や即応性を高め、行動を変化させた。迅速性が求められる初療においては効果的な教育であり、臨床で継続的に活用することができれば、質の高い看護が提供できると推測される。しかし、尺度の信頼性・妥当性を立証できたとは言い難く、成果の普遍性は示せていない。またLevel4まで測定できてない。今後は、評価方法を検証するとともに対象の行動変容を長期的に支持し、看護の質といった成果を示せる教育の設計が課題である。