第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O4] O4群 看護教育①

2019年10月4日(金) 14:00 〜 15:00 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:諸岡 健一郎(社会医療法人 雪の聖母会 聖マリア病院)

[O4-6] 重症患者の看護ケアを通して関わった経験の浅い看護師への支援

高橋 涼子1, 村上 香織2, 西林 百合3, 荒瀬 典子3 (1.名古屋市立西部医療センター 救急外来, 2.近畿大学医学部附属病院 救命救急センター, 3.公益社団法人 大阪府看護協会)

はじめに中西は、「急性期の患者の特徴は、原疾患の進行度や治療方法、生理的な機能、意識レベル、不安や不穏の有無、安静度、合併症の有無、環境、家族等々、多くの要因が複雑に絡み合っている。そのために、アセスメントは非常に複雑である」と述べている。患者の全体像を把握するためにはこれらを総合的にアセスメントしなければならない。 
 K病院の救急病棟は入退院が激しく、重症度や緊急度の高い患者の疾患も多岐にわたる。また、勤務する看護師は経験値の浅い看護師が多く、受け持ち患者は日々変わり、業務が煩雑な状況である。その中で経験の浅い看護師は、患者の状態が変化した際の対応は行えるが、検査結果など客観的データを活用し患者の全体像を把握することが不十分な現状であった。そのため、経験の浅い看護師は患者の全体像を十分にとらえることが難しく、症候と病態を整理する思考が必要と考えた。今回、実習期間中にK氏を受け持っている研修生が経験の浅い受け持ち看護師と患者の看護ケアを通して、収集した情報をともに整理し病態把握につなげることができるよう思考を整理することで、経験の浅い看護師が患者の全体像を把握し看護援助に活用できるのではないかと考え支援した。

【目的】重症患者の看護ケアを通してクリティカルケア領域における看護知識や技術をもった研修生が経験の浅い受け持ち看護師に実施した支援を振り返る。

【倫理的配慮】本研究はK病院看護部の倫理審査を受け承諾を得た。また、診療録、看護記録、研修生の患者カンファレンス記録、実習記録、実習中の活動ノートからデータを収集するため、病院長、看護部長、救急病棟の看護長の承諾を得た上で、事例を通して知り得たデータを厳重に管理し研究終了後に破棄し、本研究を提示するにあたり個人が特定できないよう配慮した。

【方法】クリティカルケア領域における看護知識や技術をもった研修生が重症患者看護事例を通して関わった5年目以下の経験の浅い看護師に対する支援内容と研修生が関わる前後の受け持ち看護師の行動や気持ちの変化を診療録、看護記録、研修生の患者カンファレンス記録、実習記録から抽出し、抽出した情報をベナーの臨床知の行動と比較する。

【結果】経験の浅い看護師に対して不足情報の提供や収集した情報を一緒に整理した。具体的に患者の経過を意味づけすることで、今後起こりうる病態を予測しながらケアをともに行った。結果、受け持ち看護師は、カルテから検査結果、画像所見を確認するだけでなく、聴診で呼吸音を観察しカルテに記載することができ、勤務交代時に今後予測される病態を伝える、観察した項目を詳細に記録に残すなど、K氏の病態を共有する行動もでき始めた。そして、受け持ち看護師から「一緒に観察したことを考えてもらって、K氏の状態がよく分かるようになった」との発言もあった。

考察ベナーは「状況下での学習は、(熟練者と学習者の)両者が状況の展開を目にすることができるため、熟練者の推論を聞きながら学習者は論理的に考える能力が高まる」と述べている。経験の浅い看護師とともに不足した情報を補いながら収集した情報を整理したこと、看護師のアセスメントの気づきを促すことで、自ら検査結果、画像所見を確認し患者の全体像を把握するための行動がみられた。また、気づきの大切さを伝え、実践して効果が認められること(成功体験)で継続看護に繋がった。