第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O5] O5群 看護教育②

2019年10月4日(金) 15:10 〜 16:10 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:宮田 佳之(長崎大学病院 高度救命救急センター)

[O5-1] 受講者からみたe-Learningを取り入れた急変対応研修事前学習の有効性について

杉 美紀 (京都府立医科大学附属病院)

Ⅰ.目的

A病院では看護師を対象に毎年急変対応の研修を実施している。有意義な研修を行うために、講義形式よりも知識定着が良いとされる演習に時間を多く確保することを目指している。研修時間は限られているため、事前学習を取り入れ講義時間を短縮させている。学習方法は電子カルテ内に教育ビデオが入っており、それを閲覧するというものである。しかしこの方法では職場でしか閲覧することができない欠点があった。その欠点を改善するために、場所や時間を選ぶことなく自由に何度でも閲覧することができると先行研究で報告されているe-Learningへ切り替えることにした。しかし一方で、ネット環境の整備不良や自己学習の不安という欠点も報告されている。e-Learningで行う事前学習を受講者がどう捉えたか、活用は有効か把握するために調査することにした。

Ⅱ.方法

対象者:2018年度2年目看護師対象の急変対応研修受講者60名

対象者に研修1ヶ月前にe-Learningで心肺蘇生の事前学習をおこなうよう伝えた。

研修後「インターネットデバイス所持の有無」「事前学習時間・内容、実施場所やアクセスの困難の有無・困難時対応」「e-Learning使用感とその理由」について質問した。

Ⅲ.倫理的配慮

A大学の倫理委員会の承認(ERB-E-390)を得て実施した。

Ⅳ.結果

研究への同意が得られ、質問紙の回答に欠損がなかった57名(95%)

インターネットデバイスは全員が所持していた。事前学習の所要時間と内容について質問したが、時間は98.2%が「適切」と回答した。内容も全員が「理解しやすい」と回答した。

学習はどこで行ったのか、問題なくアクセスできたかを質問したところ、場所は自宅が最も多かった。またアクセスの方法では、「すぐにわかった」「とまどったがアクセスできた」がともに45.6%「アクセス方法を忘れてしまった」8.8%であった。また「とまどったがアクセスできた」「アクセスの方法を忘れてしまった」と回答したものに対応方法を質問したところ「同期にきいた」21.2%、「キャリアセンターにきいた」9%、「以前の知識をたよりにアクセスした」57.6%、「以前配布された資料をみた」が7%であった。

96.5%がe-learningは使いやすかったと回答した。またその理由は「自分の都合のいいときに閲覧できる」が一番多かった。一方「内容に疑問が生じても解消できない」「コンテンツが見にくい」という回答もあった。

Ⅴ.考察

インターネットデバイスの所持率は高く、また学習場所は自宅が最も多くなっていることから先行研究が欠点で挙げていた環境不備は問題がないと考える。「自分の都合のいいときに閲覧できる」という意見が一番多く、先行研究で報告されている利点を今回の研究でも確認できた。また学習内容・時間双方において好意的な意見が半数以上を占めており、事前学習にe-learningを取り入れることで受講者の自由な時間場所で学習することが可能と考える。その一方で「コンテンツが分かりくい」「内容に疑問が生じても解消できない」という意見や54.4%がアクセスに手間取っている。e-learningの使い方の説明は入職時研修に一度行われるのみであり、活用の頻度は各個人に委ねられている。このため活用頻度が少ない受講者にとっては、アクセスに戸惑いや不安が生じやすい。こうした問題発生時に相談できる窓口を設け、円滑な学習支援体制を整えていく必要がある。支援体制があればさらに学習効率向上が期待できるため、e-Learning活用は有効と考える。