第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O5] O5群 看護教育②

2019年10月4日(金) 15:10 〜 16:10 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:宮田 佳之(長崎大学病院 高度救命救急センター)

[O5-2] 心停止症例検討会を通した急変回避のための看護師教育ー予測性と準備性についての一考察ー

岡崎 智絵 (地方独立行政法人 明石市立市民病院)

<目的>A病院では、事前のDNARオーダーがある症例以外の予期しない心停止症例の発生時に、看護師主体による心停止症例検討会(以下、症例検討会)を3年前から実施し、症例毎にリフレクションをしている。この症例検討会を通して看護師の急変回避につながる予測性と準備性に対する思考の変化を調査し、今後の看護師教育の示唆を得る。
<方法>データ収集方法:2017年4月から2019年3月まで実施した症例検討会での記録。分析方法:2017年4月から2019年3月までに実施した症例検討会の内容をデータ化し、急変回避につながるコードを抽出する。それを予測性と準備性のカテゴリに分類し内容の変化を考察する。
<倫理的配慮>症例検討会の内容は個人が特定できないようにすべてをデータ化し、匿名性を保証する。A病院看護部倫理委員会の承認を得て実施した。
<結果>症例検討会は当該部署毎に行い2017年度に14回、2018年度に19回実施した。この症例検討会では、「発見からの初動」「BLSやALSのスキル」「チームワーク」「看護師のリーダーシップ」「環境調整」「記録」「家族対応」「できたこと」「次回への課題」について看護師の視点でリフレクションを行っている。その中での急変回避につながるコード数の変化を表1に示す。『予測性』のカテゴリは94のコードから「病態からの急変予測」「ブリーフィング」「患者観察」「モニター波形の観察」「家族への意思確認」「周囲の状況から判断」のサブカテゴリで形成された。『準備性』のカテゴリは76のコードから「トレーニング」「緊急時対応物品の確認」「急変に対する意識改革」のサブカテゴリで形成された。
<考察>急変回避につながるコード数は前年比約2倍となっており、これは2年間の過程を経てリフレクションの内容が心停止状態発見時のことだけでなく、予測性を持った患者観察や準備性を重要視する思考に変化してきた結果であると考える。リフレクティブサイクルの中での「推論」では参加者に意識的に成功体験を語ることを促し、「評価」「行動計画」では行動を言語化できることに重点を置いてファシリテートすることで、参加者が患者の心停止を発見する以前にも看護師としての思考と行動があることに気づくことができたと考える。
<結論>症例検討会でのリフレクションは、病態からの急変予測の思考を身に付ける機会となり、準備性を重要視する看護師教育の一助となることが示唆された。
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