第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O5] O5群 看護教育②

2019年10月4日(金) 15:10 〜 16:10 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:宮田 佳之(長崎大学病院 高度救命救急センター)

[O5-3] 救急外来に導入した10分間学習会の取り組み~自己評価からみえた効果と満足度~

野中 美奈子, 山崎 朋子 (千葉市立青葉病院)

【背景】 救急患者対応は、時間的制約のある中で限られた情報から患者の状態を多角面にアセスメントする能力が求められる。当院では、2018年6月より救急患者対応におけるアセスメント能力の向上を目的とし、勤務時間内に10分間、患者不在の空き時間を活用した“10分間学習会”を導入した。生体侵襲・急性呼吸障害・急性循環障害・急性神経障害など20項目のテーマをあらかじめ設定し、救急看護師全員が講師を担当するよう計画した。また、4名で構成された学習会係が、開催に必要な調整や講師のサポートを行った。今回、救急看護師の10分間学習会に対する自己評価を調査し、学習会の効果と満足度について報告する。
【方法】 学習会の参加率について参加者確認簿をもとに後方視的に調査した。また、救急看護師を対象にアンケート調査を実施した。調査内容は、①講師としての評価②受講者としての評価③学習会全体についての評価に関するものとし、調査結果は単純集計して学習会の効果と満足度について検討した。
【倫理的配慮】 当院看護部倫理委員会の承認を得て調査・研究を実施した。
【結果】 回答した救急外来看護師は13名で回収率は100%であった。平均年齢40.6歳(SD=5.4 range32.2)、救急看護経験平均5.8年(SD=2.9 rang9.3)であった。①救急看護師全員が講師を1~2回経験した。講師をするにあたり、学習時間は平均6.6時間、 資料作成は平均5.1時間、プレゼンテーション準備時間は平均4.6時間かかっていた。資料作成の負担や限られた時間内に講義をする難しさを感じたという意見があった反面、資料作成方法を習得する機会が持てたことや人に教えることの面白さを新たに感じることができたという意見が複数あった。②受講者としては、参加率が平均97.9%であり、10分間という時間については「適切であった」と全員が回答し、学習会で得た知識は、救急患者のアセスメントやトリアージの場面で活用しているとの意見が得られた。③学習会全体の評価については、空き時間の有効活用となったことや学習内容の幅を広げることができたという意見がきかれ、10分間学習会の満足度(0~10点)については平均満足度 8.1点であった。
【考察】アメリカ国立訓練研究所によると、「他人に教える」ことでの平均学習定着率は最も高く90%であると言われている。全員が講師をしたことは、パワーポイントを用いた資料作成など、学習会の準備に必要な時間の確保が困難であり負担が大きいと感じる者もいた一方、自己学習を通して自身の学びも深められたと考えられる。また、他者にプレゼンテーションをすることや限られた時間で必要なことを伝えることの難しさを経験したことが新たな学習につながっていたと考えられる。受講者としては、勤務時間内の短時間に学習する場を持つことができた上に、救急患者アセスメントに必要な看護の視点を重視した講義内容であったことから、習得した知識を患者の状態把握やトリアージなどの場面で活かせている実感が持てたと考えられる。勤務時間内の開催については、業務調整をすることで、時間と受講者の確保が可能となり、空き時間の有効活用につながった。池谷は「15分の集中を積み上げる方が長時間続けて学習をするよりも学習結果が良い」と述べている。10分間に限定すること、実践に活かせる内容であったことから、効果的かつ効率的に学習する機会となった。さらに、学習会係からのサポート体制があったこと、部署全体で取り組んでいるという感覚を得たことが10分間学習会への高い満足度に影響したと考える。