第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

救急外来システム

[O6] O6群 救急外来システム

2019年10月4日(金) 16:20 〜 17:10 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:溝江 亜紀子(東京医科歯科大学医学部附属病院)

[O6-2] 急性冠症候群患者の救急外来における治療開始までの時間短縮を妨げる原因と対策

矢野 寛明, 別府 颯馬, 竹森 香織 (愛媛大学医学部附属病院)

【目的】急性冠症候群においては、できるだけ早期に再灌流を得ることが予後を改善する(ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン,2013)ことから、迅速な診断と治療を行うことが必須である。そのため、来院から治療開始(door-to-needle:以下DTN)までの時間を短縮する必要がある。本研究では、救急外来担当看護師(以下、救外看護師)を対象に、DTN時間の短縮を妨げる原因と短縮するための対策を明らかにする。

【方法】救外看護師に対して研究者が、急性冠症候群患者の救急外来における治療開始までの時間短縮を妨げる原因と対策についてインタビューガイドを用いて半構造化インタビューを行った。逐語録から研究目的に関する内容を抽出後、コード化・カテゴリー分類した。本研究は、所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。

【結果】救外看護師9名に対してインタビューを行った。対象者の年齢は平均31歳、看護師経験年数は平均9年で、救急看護経験年数は平均4年であった。分析した結果、時間短縮を妨げる原因は66コードから4カテゴリー、時間短縮のための対策は64コードから5カテゴリーが抽出された。時間短縮を妨げる原因は、『環境整備や物品管理の不備により余分な時間を使っている』『看護師と他職種間で診療・ケアの分業ができていない』『看護師と他職種間で診療・ケアの協業ができていない』『症例経験の少ない看護師が一人で対応している』といった物品管理や業務分担に関するカテゴリーが抽出された。時間短縮のための対策は、『他職種に分業・協業を依頼する』『診療・ケアを行うための事前準備をする』『医師と治療方針や細やかな流れを患者の来院前に決める』『患者の状態に合わせて優先順位をつけて処置を実施する』『救急外来とカテーテル室の引継ぎを口頭で行う』などのチーム医療に関するカテゴリーが抽出された。

【考察】研究で見出されたDTN時間の短縮を妨げる原因には、救外看護師と他職種との業務分担や連携不足があると考えられた。また、インタビューにおいて、症例経験の少ない看護師は、「搬入までの流れが十分に理解できておらず、搬入までの準備に時間がかかる」「自分の行っていることが正しいのか判断できず、次につながらない」といった意見があり、時間短縮のための行動ができていないことが明らかとなった。時間短縮のための対策に抽出されたカテゴリーの内容は、経験則に基づいており、個人特性があった。そのため、根拠に基づき看護基準や手順などに整備し、救外看護師が共有することで、DTN短縮につながるのではないかと考えた。急性冠症候群の患者対応においては、時間経過を意識しながら複数の看護処置を安全に実施する必要がある。時間短縮のためには、全ての救外看護師が統一された看護実践ができるよう教育が必要である。
今回、A病院の救外看護師9名のみのインタビューであり、他職種の意見は結果に含まれていない。今後、他職種や関連部門の看護師に対してもインタビューを行い、業務分担や連携のための対策を検討し、チーム医療を推進することも重要である。