第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護実践・倫理・その他

[O8] O8群 看護実践・倫理・その他

2019年10月4日(金) 14:00 〜 14:50 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:平尾 明美(神戸大学医学部附属病院)

[O8-4] A高度救命救急センター看護師が看護を行う上で対応に困難を感じた状況での感情と対処方法

石鉢 妙子 (札幌医科大学附属病院 高度救命救急センター)

目的 3次病院であるA高度救命救急センターでは、緊急性が高く、即座に高度な知識と技術が必要とされるだけでなく、受傷起点や生活背景などから治療や看護介入が困難な状況に直面する事が多い。そこで、A高度救命センター看護師が困難な症例における具体的な場面で感じた感情や対処方法を明らかにすることで、ケアで感じる感情への対処方法とバーンアウト防止への対策を考察する。
研究方法 本研究の対象者はA高度救命救急センターに在籍する初療経験者、女性15名、男性3名、平均年齢38.2歳の合計18名とした。研究方法は、看護を行なう上で困難を感じた時の状況、感情、対処方法についてインタビューガイドを作成し半構成的面接法によるインタビューを実施した。インタビューを基に逐語録を作成し意味内容に沿ってコードを抽出、コードからサブカテゴリー、カテゴリーを導きだし、状況・感情・対処方法と照らし合わせて考察を行なった。
倫理的配慮 A病院看護部の看護研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果 対象者の属性は配偶者あり6名(33.3%)、平均看護師経験年数は16.7年、平均救急領域経験年数は8.5年であった。インタビューは平均16分であり、困難な状況の内容として、【治療や看護に理解が得られない患者・家族への対応の場面】、【代理意思決定者の不在やサポート体制が破綻した患者への対応の場面】など11カテゴリーが抽出された。困難な場面での感情は【患者の言動から看護のやりがいや目標を見失い疲弊する感情】、【患者・家族の意思決定に対する治療や看護に伴う感情】など13カテゴリーが抽出された。それらの対処として【同僚や医師と話す】ことが最も多い対処方法として語られた他、【他の看護師や医師に交代してもらう】など8カテゴリーが抽出された。また、困難な経験を次の学習意欲へ転換していたケースもあり、それらは【感情を整理する】対処を行うことで〈経験を今後に生かす〉などポジティブな対処をしていた。一方で、〈辛くて当然だと思いため込んでいる〉など【困難な感情の対処方法がわからずため込んでいる】ケースもあった。
考察 救命することが優先される高度救命救急センターにおいて、倫理的配慮に基づく治療の適応や患者・家族の意思に沿った看護ができない事に対し落ち込みやジレンマを感じていることが明らかとなった。また、患者・家族からの言動に対する嫌悪感ややりがいの喪失は仕事への意欲を減退させるだけでなく疲弊感をもたらし、看護師としての目標を見失う大きな要因であることが明らかとなった。さらに、困難な状況をポジティブに転換したケースから、看護師がその場面の感情や対応を内省し、自身の感情を整理し納得する事が重要な作業である事がわかった。このことから、病棟内でのケースの振り返りと共有を行い同僚と話し合いができる環境作りやリフレクションの活用に加え、暴力対策など組織としての取り組みも重要である事が示唆された。