第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護実践・倫理・その他

[O8] O8群 看護実践・倫理・その他

2019年10月4日(金) 14:00 〜 14:50 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:平尾 明美(神戸大学医学部附属病院)

[O8-5] 救命救急センターで勤務する看護師のWork Engagementに達成動機と自律性が及ぼす影響

林谷 学1,2, 升田 由美子3 (1.旭川赤十字病院, 2.旭川医科大学大学院修士課程看護学専攻, 3.旭川医科大学医学部看護学科)

【目的】救命救急センターで勤務する看護師のWork Engagement(以下、WEとする)に達成動機と自律性が及ぼす影響を明らかにすることである。
【方法】全国の救命救急センター288施設に勤務する看護師経験が1年以上の看護師(准看護師を除く)915名を研究対象とした。WEを従属変数、属性、就業内容、職務に関する認識、達成動機、自律性を独立変数とした重回帰分析をおこなった。研究の趣旨、方法、結果の公表、データの破棄方法、調査は無記名であり個人や医療機関が特定されることはないこと、研究への参加は対象者の自由意志であることを文書で説明し、質問紙の返送をもって同意が得られたものとした。研究者所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】回答は329名(回収率36.0%)より得られ、UWESに未回答があった11名を除く318名(有効回答率96.7%)を分析対象とした。UWES総得点の基準点による分類は低値207名(65.1%)、普通81名(25.5%)、高値30名(9.4%)の割合となった。強制投入法による重回帰分析の結果、WEに影響していた独立変数は、達成動機尺度総得点(β=0.319)、看護婦の自律性測定尺度総得点(β=0.129)、継続意志(β=0.149)、仕事への満足有り(β=0.242)で調整済み決定係数R²は、0.344であった。WEを構成する「活力」「熱意」「没頭」を従属変数とした重回帰分析の結果、活気に満ちている状態を示す「活力」に影響していた変数は、仕事への満足(β=0.351)、達成動機尺度総得点(β= 0.234)であった(R²=0.220)。自らの職務に意義を見出し仕事に誇りをもつ「熱意」に影響していた変数は、達成動機尺度総得点(β=0.288)、自律性測定尺度総得点(β=0.214)、性別(β=0.150)であった(R²=0.365)。集中し仕事にやりがいを見出す「没頭」に影響していた変数は、達成動機尺度総得点(β=0.333)、継続意志(β=0.208)、平均残業時間1時間未満(β=-0.257)であった(R²= 0.287)。
【考察】救命救急センターで勤務する看護師のUWES総得点からは、6割以上の者がUWES低値という結果となった。また、WEの総得点とすべての下位尺度に影響していた変数は達成動機尺度総得点であった。達成動機は価値のある目標を成し遂げようとする意欲であり、目標を達成するための行動は、仕事への活力となり、熱意をもって仕事に没頭し、エンゲイジしていくと考えられる。また、看護婦の自律性測定尺度総得点がWEに影響していたことから、看護上の判断や実践から職業的な価値を高めて看護の専門性を発揮していくことは、WEに影響すると考えられる 。WEの下位概念である「活力」に仕事への満足が影響していたことから、満足のいく仕事ができれば自信となり活気に繋がるのではないかと推察された。「熱意」に自律性測定尺度総得点が影響していたことから、看護の専門性を発揮することが熱意に繋がると推察された。「没頭」に継続意志が影響していたことから、仕事にやりがいを見出すことができれば自分自身の喜びとなり、継続意志に繋がると推察される。