第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD1] 外傷初期看護は患者の命と生活をどう支えていくのか

2019年10月4日(金) 15:20 〜 17:20 第1会場 (2F コンベンションホールA)

座長:小池 伸享(前橋赤十字病院), 笠原 真弓(浜松医療センター 看護部)

[PD1-2] 外傷病院前救護における標準教育(JPTEC・ITLS)の成果と課題

張替 喜世一1,2, 兼崎 陽太3 (1.国士舘大学大学院救急システム研究科, 2.JPTEC協議会, 3.ITLS日本支部)

【背景】我が国の病院前救護における救急隊員等の観察・処置能力の向上を通じ、外傷患者の救命率の向上と早期社会復帰に寄与することを目的として平成15(2003)年にJPTEC協議会が発足され、病院前救護外傷教育の標準化を目指してJPTEC(Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care)を展開している。また,多様なニーズに対応したコースの新設が検討され,主に医療機関内の医療資格者を対象としたミニコースと,外傷現場で救急隊到着に先行して対応する可能性がある者を主な対象としたファーストレスポンダーコースを開発し、平成28(2016)年からコース展開をしている。また、それ以前には、外傷による防ぎ得た死と疾病を教育と救急外傷処置によって防ぐ事を目的としてITLS(International Trauma Life Support)コースが1982年からACEP(アメリカ救急医学会)の地方プロジェクトとして開始され、現在では世界27カ国でコースが開催されている。本邦においても平成12(2000)年からAdvanceコースを中心にコース展開している。

【目的】これまでのJPTECコース及びITLSコースの開催数及び受講数を報告すると共にその成果と課題について検討する

【方法】平成31年3月31日までに本邦で開催されたJPTEC(プロバイダー、インストラクター、プロバイダー資格更新、ミニコース、ファーストレスポンダー)コース及びITLS(Advanced、Instructor、Pediatric、Access)コースについて集計した。

【結果】JPTECコースは、プロバイダーコース 平成15年から4,762コース開催、119,347名受講。インストラクターコース 855コース開催、18,144名受講。プロバイダー資格更新コース 平成18年から2,564コース開催、27,469名受講。ミニコース 平成28年から103コース開催、1,315名受講。ファーストレスポンダーコース 262コース、4,981名受講。平成31年3月末現在の有資格者数38,053名であった。ITLSコースについてはAdvancedコース 平成12年から251コース開催、6,298名受講。Instructor コース 251コース開催3,248名受講、Pediatricコース 平成16年から118コース開催、2,063名受講。Accessコース 平成20年から214コース開催、3,096名受講であった。

【考察】外傷現場で活動する救急救命士や救急隊員への標準教育の効果は客観的な数字はないが、隊員間の共通認識により現場における活動時間の短縮や観察処置判断の向上に寄与することが期待できる。また、病院内の医師や看護師などがコースを受講することにより、救急隊との共通の認識や言語が獲得することが出来、傷病者受入の円滑が図れると考える。さらには、ドクターヘリやドクターカーにおける病院外での救急隊との連携や効果的な医療活動にも期待が出来る。課題としては、外傷病院前救護標準教育を受講した客観的な評価方法が確立されていない事が挙げられる。日本外傷データバンクとの連携を図るなど今後の検討が必要と考える。