第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD3] 認定分野統合・救急看護の優れた実践力を担保する

2019年10月4日(金) 15:30 〜 17:20 第5会場 (3F 中会議室302)

座長:剱持 功(東海大学看護師キャリア支援センター), 阿部 雅美(日本赤十字社和歌山医療センター)

[PD3-2] 次世代へ伝承していく救急看護の役割と実践力  現場における人材育成の視点から

菅原 明美 (公立置賜総合病院 救命救急センター)

私は救急看護の現場で後輩育成に関わり、自身の救急看護に対する指導力の曖昧さを痛感したことが、認定看護師の道を選択するきっかけとなった。もともとは助産師であり、その経験が長かった私にとって、ICUや救急での勤務は全てが新鮮であった。妊婦と一対一でじっくりと関わりながら分娩管理する助産業務と違い、診断がついていない状態で短時間に多くの患者との関わることに戸惑いがあった。そこで、救急看護を理解するために、看護師の役割は何かを模索していた。その看護師の役割を、自分の言葉で伝えることができなければ、業務的な指導方法にしかならないとの思いがあった。

 救急看護は、場所や対象を問わず、あらゆるところでの対応が求められる。そのため、常に臨機応変に対応できる実践力と、柔軟性を必要とする。その一つとして、多人数の患者に緊急度判定を迅速に行い、患者一人一人はもちろんのこと、常に全患者の緊急度判定を評価し続けなければならないという救急看護師としての役割がある。それには、フィジカルアセスメント能力が重要となってくる。また、救急領域は特に時間による制約も多いことから、タイムマネージメント能力も大切であり、限られた時間で最大限の医療を提供していく必要があると考えている。

 一方で、臨床の現場においてチームを円滑に動かすためには、人間性が大きな影響因子となる。つまり、救急看護で次世代に残していかなければならないことは、知識や技術ばかりではなく、自ら考え、人を心から動かす力ではないだろうか。私は5年前に院内の教育を担当する専従師長として勤務し、研修計画の成果について考える機会を得た。臨床で計画されている多くの研修会などは、教える側の努力がクローズアップされ、受け手の学びとして成立したかどうかの評価が出来ていない状態であった。学びが成立したときにはじめて「教えた」とみなされるはずが、教える側の「教えた」と「教えたつもり」で研修が成り立つためこれらを区別することが、教育改善の第一歩であると痛感した。つまりは、看護師一人一人の行動変容へつなげる本当の学びの機会が大切であると感じた。

 以上のことから、人材育成の視点でこの役割を時代に合わせて伝承していくにあたり、救急看護の特殊性を焦点化した学会認定等も考慮しながら、新しい取り組みとしての教育を検討していく必要性を感じている。これは、単なる資格認定だけではなく、現在の救急看護認定看護師の役割における大切な部分を伝承するために、人材育成の一つとして考え、実践し言語化できること、出来ていることを承認する指導者としての役割を兼ね備えた看護師を育成する必要があると考える。

 本発表では、現場での人材育成の視点から、救急看護の役割と実践力を次世代に伝承していくために、今までの経験と現場における指導者としての取り組みを報告したいと考える。