第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD5] 救急医療におけるタスクシフト~新たな力の創造~

2019年10月5日(土) 14:40 〜 16:30 第3会場 (2F 中会議室201)

座長:山勢 博彰(山口大学大学院医学系研究科), 芝田 里花(日本赤十字社和歌山医療センター)

[PD5-1] 救急初療における特定行為研修修了看護師へのタスクシフティング

増山 純二 (長崎みなとメデイカルセンター)

タスクシフティングとは、WHOが医療人材不足を部分的に解決する手段として提唱した概念であり、医行為の一部を他職種へ委譲することをさしている。深刻な医療人材不足や緊急事態などの特定事例のみ適用されるべきであることが、2011年のアジア大洋州医師会連合(CMAAO)特別委員会で確認された。今回、救急初療における特定行為研修修了看護師へのタスクシフティングについて、A病院の救急医療体制を述べながら、特定行為研修修了看護師の役割について報告する。
 A病院は513床の二次救急医療施設であり、脳神経疾患、循環器疾患については24時間体制で患者の受け入れを行い、4日に1回の救急輪番体制をとっている。2018年度の実績は、ヘリ搬送37名、救急車4,197名、walk in4,396人の総患者数8,630名であった。2018年以降の診療体制は、救急科の常勤医師はおらず、1〜2名/日(8:30-22:00)の非常勤医師を中心に救急医療体制をとっており、非常勤医師が不在する時間は各科医師、もしくは外科主任診療部長(救急部長兼任)が代行する体制となっている。
 A病院の特定行為研修修了看護師は、2016年3月に公益社団法人日本看護協会、特定行為研修を修了し、現在は、救急科に所属し主に救急初療業務を担っている。特定行為区分として、「呼吸器(気道確保に係るもの)関連」「呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連」「呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連」「栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連」「創部ドレーン管理関連」「動脈血液ガス分析関連」「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」の研修を修了している。A病院における特定行為研修修了看護師の役割は、救急初療において、早期に患者へアプローチし、プライマリーケアを遂行し、問診、身体所見から緊急度の判断、緊急検査など、医師の診断計画の一助として実施し、患者の重症化の予防を図るとしている。具体的に4つの役割を担っている。1つ目は、患者来院時(救急車、walk in)の診察(予診)である。これは、救急医の不在時や輪番日で患者が多い場合は、医師が診察する前に予診を行い、必要時には検査を実施し、医師へ引き継ぐ役割である。2つ目は、医師と協働した緊急検査の実施である。動脈血採血、超音波検査の実施や血液検査、CT検査、MRI検査の指示を出している。3つ目は、トリアージ後の診察待ち時間を利用したレントゲン検査、感染症検査の指示である。4つ目は、初療室の調整を行なっている。これは、救急医や当直医師と相談しながら、看護師のリーダーと協働し、診察する研修医の決定、各科のコンサルトの調整、初療室のベッドコントロールの役割を担っている。
 このように、救急医の一部の役割を委譲した形で、特定行為研修修了看護師の役割として実践している。さらに業務を拡大することでタスクシフティングによる効果への貢献性が高くなるが、医療の安全性を担保しながら実践を行なわなければならない。また、これらのタスクシフティングの一環とした特定行為研修修了看護師の役割が、救急看護師のスペシャリストと言える役割であるかについて、皆様と議論したい。