[RTD10-5] ハリーコール事後検証から院内救急看護教育の課題を考察する
(はじめに)
平成24年7月に救急看護認定看護師となり、7年が経過した。これまで、認定看護師として最も力を注いできた活動は、院内における救急看護の質向上を目的としたBLS、ICLS教育や急変の兆候に気づき、SBARを用いて報告する能力を高めることを目的とした教育である。しかし、徐々に受講希望者が減少し、動機付けが不十分であると考えた。そこで内発的動機を持たせること、急変時対応についての問題を見出すことにより今後の救急看護教育への示唆を得るため、昨年度より発生病棟看護師とともにハリーコール症例の事後検証を開始した。この事後検証内容を振り返り、考察を加え報告する。
(事後検証体制について)
事後検証は当該病棟に出向き、病棟スタッフとともに実施しており、可能であれば医療安全管理師長も同席している。時期は、ハリーコール発生後、できる限り速やかに実施できるよう病棟師長と調整している。事後検証会開催までに、対応した看護師が速やかに報告書を作成し、その報告書と電子カルテ内の情報をもとに、良い点や問題提起する内容を検討し臨んでいる。また、病棟看護師も事後検証会までに報告書を読み、改善点などの意見を持って臨むようにしている。
(実際)平成30年4月から平成31年3月までに発生したハリーコール症例は21例であった。そのうち事後検証会を行った症例は11例である。ハリーコール症例全体の平均年齢は78±16.9歳であり、診療科は47.6%(10例)が循環器内科であった。発生時間は日勤帯、準夜帯、深夜帯に大差はなかった。ハリーコール起動理由で最も多かったのは、心肺停止状態であり47.6%(10例)、次に意識なしだが呼吸、脈ありが28.5%(6例)、呼吸なし、意識ありがそれぞれ9.5%(2例)ずつであった。急変前の気づきに関する問題としては、何かしらの症状を察知しているが適切な対応がとれていなかった症例が19.0%(4例)ずつあった。BLSに関しては、意識なし以上の重篤な状態の18例のうち38.9%(7例)で急変の認識及び応援要請に問題があった。
(考察)
ハリーコール症例の平均年齢や診療科、発生時間帯、起動理由は5年前に調査した結果と大きな変化はなかった。しかし、5年前の調査では25ヶ月間でのハリーコール症例は24例であり、今回の調査では12ヶ月で21例である。このことを考慮すると、起動理由の中で心肺停止状態が最も多いという結果に変化がみられていないことは、急変の兆候に気づき、SBARを用いて報告する能力を高めることを目的とした研修の効果が出ていないといえる。急変前の気づきに関して、何かしらの症状を察知しているが適切な対応が取れていないことから、これらの気づきを急変の兆候として認識し、危機意識を持てるような教育が必要と考える。今回、病棟看護師とともに事後検証を行えた症例は全体の半数程度であったが、事後検証を徹底して実施することにより、その時点では急変の兆候として認識できなかった症状を急変と結びつける学びの場となると期待できる。また、BLSについては、現場にいなければCPRの質について評価できないため今回問題として挙がっていない可能性もあるが、CPR開始以前の急変の認識及び応援要請に問題が多かった。質の高いCPRは救命処置の中で大変重要であるが、同様に急変の認識及び応援要請も重要であることを強調した研修内容への修正が必要と考える。
平成24年7月に救急看護認定看護師となり、7年が経過した。これまで、認定看護師として最も力を注いできた活動は、院内における救急看護の質向上を目的としたBLS、ICLS教育や急変の兆候に気づき、SBARを用いて報告する能力を高めることを目的とした教育である。しかし、徐々に受講希望者が減少し、動機付けが不十分であると考えた。そこで内発的動機を持たせること、急変時対応についての問題を見出すことにより今後の救急看護教育への示唆を得るため、昨年度より発生病棟看護師とともにハリーコール症例の事後検証を開始した。この事後検証内容を振り返り、考察を加え報告する。
(事後検証体制について)
事後検証は当該病棟に出向き、病棟スタッフとともに実施しており、可能であれば医療安全管理師長も同席している。時期は、ハリーコール発生後、できる限り速やかに実施できるよう病棟師長と調整している。事後検証会開催までに、対応した看護師が速やかに報告書を作成し、その報告書と電子カルテ内の情報をもとに、良い点や問題提起する内容を検討し臨んでいる。また、病棟看護師も事後検証会までに報告書を読み、改善点などの意見を持って臨むようにしている。
(実際)平成30年4月から平成31年3月までに発生したハリーコール症例は21例であった。そのうち事後検証会を行った症例は11例である。ハリーコール症例全体の平均年齢は78±16.9歳であり、診療科は47.6%(10例)が循環器内科であった。発生時間は日勤帯、準夜帯、深夜帯に大差はなかった。ハリーコール起動理由で最も多かったのは、心肺停止状態であり47.6%(10例)、次に意識なしだが呼吸、脈ありが28.5%(6例)、呼吸なし、意識ありがそれぞれ9.5%(2例)ずつであった。急変前の気づきに関する問題としては、何かしらの症状を察知しているが適切な対応がとれていなかった症例が19.0%(4例)ずつあった。BLSに関しては、意識なし以上の重篤な状態の18例のうち38.9%(7例)で急変の認識及び応援要請に問題があった。
(考察)
ハリーコール症例の平均年齢や診療科、発生時間帯、起動理由は5年前に調査した結果と大きな変化はなかった。しかし、5年前の調査では25ヶ月間でのハリーコール症例は24例であり、今回の調査では12ヶ月で21例である。このことを考慮すると、起動理由の中で心肺停止状態が最も多いという結果に変化がみられていないことは、急変の兆候に気づき、SBARを用いて報告する能力を高めることを目的とした研修の効果が出ていないといえる。急変前の気づきに関して、何かしらの症状を察知しているが適切な対応が取れていないことから、これらの気づきを急変の兆候として認識し、危機意識を持てるような教育が必要と考える。今回、病棟看護師とともに事後検証を行えた症例は全体の半数程度であったが、事後検証を徹底して実施することにより、その時点では急変の兆候として認識できなかった症状を急変と結びつける学びの場となると期待できる。また、BLSについては、現場にいなければCPRの質について評価できないため今回問題として挙がっていない可能性もあるが、CPR開始以前の急変の認識及び応援要請に問題が多かった。質の高いCPRは救命処置の中で大変重要であるが、同様に急変の認識及び応援要請も重要であることを強調した研修内容への修正が必要と考える。