第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

教育

[RTD11] RTD(CN)11群 教育③

2019年10月5日(土) 15:00 〜 16:20 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:黒田 啓子(東海大学看護師キャリア支援センター)

[RTD11-3] 新人看護師に対してシミュレーションを取り入れてフィジカルアセスメント研修を行った効果と課題

斉藤 大介 (国立病院機構 北海道医療センター)

【目的】
A病院では認定看護師が関わり新人教育を行っている。救急看護の分野として急変対応の他にフィジカルアセスメントの研修を担っている。新人看護師は4ヶ月目頃より夜勤業務を始めるため、フォロー体制も少なくなる。そのため、新人看護師も患者を観察する能力が求められる。看護学校における基礎教育でもフィジカルアセスメントについて教育を受けているが、臨床の場面で活かしきれていない新人看護師が多いため、研修にシミュレーションを取り入れフィジカルアセスメントする能力を養ってもらうために研修を行った結果、効果と課題が明らかになったため報告する。
【方法】
 フィジカルアセスメント研修を卒後4ヶ月目に行った。研修は第一印象の把握と患者の状態を把握するために模擬患者を作り、各グループにファシリテーターを配置して実施した。第一印象については、ABCDの順に系統的に患者を観察すること、また模擬患者に対してフィジカルイグザミネーションを駆使して患者の状態を観察し、その結果についてSBARを用いてリーダー看護師に報告するという内容である。認定看護師は、研修の進行と各グループの演習を観察し、適宜助言を行った。研修後アンケートを実施し、得られた結果から効果と課題を検討する。
【結果】
2017年受講者25名、アンケート回収25名(100%)、2018年受講者38名、アンケート回収36名(95%)であった。【研修を今後に生かすことができるか】という問いに関して、2017年【十分できる】13名(52%)、【できる】12名(48%)、2018年【十分できる】6名(17%)、【できる】29名(80%)【あまりできない】1名(3%)であった。
【考察】
 アンケート結果より研修自体の満足度は高く、臨床に活かすことができるという結果が得られた。A病院では看護技術に関してeラーニングを取り入れており、eラーニングを用いて事前学習してもらい、不足部分を講義にて補い、研修の大部分をシミュレーションとグループワークに重点を置いた。その結果、シミュレーションを通して自ら学んだことを確認し、不足している部分を研修で補い、そしてグループワークを通して話し合うことで自分たちの理解度を確認することができたことが満足度の高い結果につながったと考える。研修後のアンケート結果から、第一印象の把握は系統的にアプローチすること、また患者を観察した結果をうまくリーダー看護師に報告することのできなかった新人看護師が多かったため、SBARを用いてリーダーへ報告することを研修に取り入れたことは大変効果的であった。
この研修では、知識と運動のスキルを学ぶことを目的としている。新人看護師の早い時期に状態の悪化した患者を観察するためのスキルを身につけ、得られた結果から新人看護師なりにアセスメントする能力を養うことで、患者の状態を総合的に捉える習慣を得てもらう必要があると考える。今後の課題としては、この研修で得られたものを継続的に学習していく環境を整えることにある。臨床に戻ると新人看護師は業務をこなすことに精一杯となる傾向にある。そのため現在教育担当師長とも話し合い、各ラダー別にフィジカルアセスメントの研修を開催できるように調整している。
研修の課題としては、A病院には高機能シミュレーターが1台あるが、新人看護師研修として割り当てることのできる時間が限られており、シミュレーター1台に対して新人看護師の人数が多く、効果的な研修を組むことができない現状にある。今後は、高機能シミュレーターを効果的に用いることができるように研修内容の改善する必要である。