[RTD12-3] 集中治療室で発生したVRE感染拡大予防
【はじめに】
バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci: VRE)は、バンコマイシンに耐性を獲得した腸球菌である。健常者の場合は、腸管内にVREを保菌していても通常、無害、無症状であるが、術後患者や感染防御機能の低下した患者では敗血症や腹膜炎、肺炎など重症感染症を引き起こし、死亡する場合もある。
胸腹部外科手術後や移植術後、急変患者などの重篤な患者が入室しているA病院ICUに入室した患者3名にVRE感染症が発生した。その経過と感染拡大予防に向けての取り組みを報告する。
【倫理的配慮】
患者は匿名化、患者情報は最小限として個人が特定されないように配慮した。
【経過】
・○月4日、患者1よりVRE検出
(ICUよりB病棟へ転棟後に検出、7日、11日、12日、13日、18日の検体陽性)
・○月7日、患者2よりVRE検出
(複数病棟を経由しICUに入室後に検出、8日、9日、13日の検体陽性)
・○月11日、患者3よりVRE検出
(ICUよりB病棟へ転棟後に検出、12日、13日の検体陽性)
ICU内個室aに患者1が退室後、患者2が入室。
【感染拡大予防対応】
VRE検出患者のICU内ベッド位置関係、人の流れを調査し、ICU内で感染したことが強く疑われた。VRE検出患者は個室管理とし、受け持ち看護師は検出患者のみを担当するようにした。検出患者のみならず、全患者に接する際にマスク、ガウン、手袋を装着すること、手指消毒が5つのタイミング、個人防護具(PPE)の正しい着脱について、ICUに出入りする全職種に対して指導、徹底した。
従来、速乾性擦式消毒薬の使用量を1ヶ月毎にデータとしてまとめて評価していたが、1勤務での使用量を計測、記録するように変更して全スタッフに見える化した。
感染制御部による環境調査が行われたが、環境培養の結果を待たずして、環境整備の内容と頻度を変更した。環境整備の回数増加により看護師の業務負担増が予測されたため、清掃外部業者、看護補助の協力を得られるよう調整した。
感染拡大予防を最優先に考え、ICUの入室制限をし、術後患者はER-ICU入室とすることを感染制御部へ要望した。主治医、B病棟師長、救急医など関連職種、部署と連携し、ER-ICU入室となった。
スタッフ指導として、感染拡大の情報を周知するとともに、易感染状態の患者が感染した場合の考えられる成りゆきを説明した上で、厳格な標準予防策、接触予防策を指導した。
患者・家族へは、VRE感染が増えていること、厳重な感染対策を行っていること、標準予防策、接触予防策の重要性を説明し協力を求めた。
以上について、適宜看護部へ報告、連絡、相談しながら実施した。
【結果】
VRE検出患者が増加することなく経過し、VRE感染は収束した。
【考察】
VREは接触感染であり、手指を介した微生物の伝播を遮断することが接触感染を防止する有効な手段となる。厳格な標準予防策、接触予防策の徹底したことが感染拡大予防につながったと考える。
適宜、感染制御部と連携し情報、指示を得たが、指示を待たずして即時対応したことも感染拡大予防となった。VREの一般的対応については感染制御部より情報提供してもらいながらも、救急看護認定看護師として、クリティカルな患者の特徴とICUの環境を踏まえて考え、行動したことも感染拡大予防の一助となったと考える。また、救急看護認定看護師が看護副部長、ICU師長であったため、看護部内での連携もよく迅速に対応できたと考える。
【おわりに】
感染拡大防止は迅速な対応が求められ、対応の遅れ、誤りは致命的な結果をもたらす。今回の対応は、限られた時間の中で、必要な情報を選別しながら収集し、成りゆきを予測した上で総合的に判断して行動するという救急看護実践の経験が活かされた。
バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci: VRE)は、バンコマイシンに耐性を獲得した腸球菌である。健常者の場合は、腸管内にVREを保菌していても通常、無害、無症状であるが、術後患者や感染防御機能の低下した患者では敗血症や腹膜炎、肺炎など重症感染症を引き起こし、死亡する場合もある。
胸腹部外科手術後や移植術後、急変患者などの重篤な患者が入室しているA病院ICUに入室した患者3名にVRE感染症が発生した。その経過と感染拡大予防に向けての取り組みを報告する。
【倫理的配慮】
患者は匿名化、患者情報は最小限として個人が特定されないように配慮した。
【経過】
・○月4日、患者1よりVRE検出
(ICUよりB病棟へ転棟後に検出、7日、11日、12日、13日、18日の検体陽性)
・○月7日、患者2よりVRE検出
(複数病棟を経由しICUに入室後に検出、8日、9日、13日の検体陽性)
・○月11日、患者3よりVRE検出
(ICUよりB病棟へ転棟後に検出、12日、13日の検体陽性)
ICU内個室aに患者1が退室後、患者2が入室。
【感染拡大予防対応】
VRE検出患者のICU内ベッド位置関係、人の流れを調査し、ICU内で感染したことが強く疑われた。VRE検出患者は個室管理とし、受け持ち看護師は検出患者のみを担当するようにした。検出患者のみならず、全患者に接する際にマスク、ガウン、手袋を装着すること、手指消毒が5つのタイミング、個人防護具(PPE)の正しい着脱について、ICUに出入りする全職種に対して指導、徹底した。
従来、速乾性擦式消毒薬の使用量を1ヶ月毎にデータとしてまとめて評価していたが、1勤務での使用量を計測、記録するように変更して全スタッフに見える化した。
感染制御部による環境調査が行われたが、環境培養の結果を待たずして、環境整備の内容と頻度を変更した。環境整備の回数増加により看護師の業務負担増が予測されたため、清掃外部業者、看護補助の協力を得られるよう調整した。
感染拡大予防を最優先に考え、ICUの入室制限をし、術後患者はER-ICU入室とすることを感染制御部へ要望した。主治医、B病棟師長、救急医など関連職種、部署と連携し、ER-ICU入室となった。
スタッフ指導として、感染拡大の情報を周知するとともに、易感染状態の患者が感染した場合の考えられる成りゆきを説明した上で、厳格な標準予防策、接触予防策を指導した。
患者・家族へは、VRE感染が増えていること、厳重な感染対策を行っていること、標準予防策、接触予防策の重要性を説明し協力を求めた。
以上について、適宜看護部へ報告、連絡、相談しながら実施した。
【結果】
VRE検出患者が増加することなく経過し、VRE感染は収束した。
【考察】
VREは接触感染であり、手指を介した微生物の伝播を遮断することが接触感染を防止する有効な手段となる。厳格な標準予防策、接触予防策の徹底したことが感染拡大予防につながったと考える。
適宜、感染制御部と連携し情報、指示を得たが、指示を待たずして即時対応したことも感染拡大予防となった。VREの一般的対応については感染制御部より情報提供してもらいながらも、救急看護認定看護師として、クリティカルな患者の特徴とICUの環境を踏まえて考え、行動したことも感染拡大予防の一助となったと考える。また、救急看護認定看護師が看護副部長、ICU師長であったため、看護部内での連携もよく迅速に対応できたと考える。
【おわりに】
感染拡大防止は迅速な対応が求められ、対応の遅れ、誤りは致命的な結果をもたらす。今回の対応は、限られた時間の中で、必要な情報を選別しながら収集し、成りゆきを予測した上で総合的に判断して行動するという救急看護実践の経験が活かされた。