第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

その他

[RTD12] RTD(CN)12群 その他②

2019年10月5日(土) 09:00 〜 10:20 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:石ヶ森 重之(日本医科大学多摩永山病院)

[RTD12-5] 災害時に対応できる看護部組織を作る第一歩 ~看護師長の学習会を試みて~

清水 明美, 平柳 和奈 (公立昭和病院 看護部)

はじめに
 A病院に求められる災害対応は、災害急性期に患者対応を迅速に実施する事、また、地域との役割機能に応じた医療の提供、協働を実施していくことが必要とされる。災害時には、災害の規模や種類にあった医療体制が調整され、災害時に対応できる病院運営が可能になるような組織作りが求められる。A病院の災害マニュアル・事業継続計画手順書(以下BCP)は、平成2014年に作成され、マニュアルを基に火災訓練と地域を交えた防災訓練が年2回実施されている。災害訓練の実態は、発災から数時間経過したところから訓練が開始となり、発災直後の初動訓練は実施せず、エリアは立ち上がり、設営や必要な物品などすべて整い、準備万全から訓練が開始となる。災害訓練から見えてきた問題は、初動の訓練がされていないこと、参加メンバーに偏りがあること、課題を洗い出せるような訓練を実施することが不足し、具体的な課題が抽出できていないことがあげられた。
 自身は救急認定看護師として、「災害時に対応できる看護部組織を作る第一歩」とし、看護師長の災害対策への取り組みについて現行の活動を報告する。
実践報告
 自身は看護部に働きかけ、平成2017年度より看護師長会に「災害時の看護管理」として学習会を企画実施した。看護師長の災害に対する意識調査と、取り組むべき内容を具体的に行動レベルまで考え学習会を実施した。看護師長の初動アクションカード作成、看護スタッフ初動アクションカード検討し、看護体制について看護師長と共有した。しかし、初動訓練に対する看護師長の不安が増強、病院全体で組織について考え体制を整えることはできていない。平成2018年度に実施した災害訓練直後のリフレクションで、看護師長の役割と看護スタッフの役割検証をおこなった。検証方法は、災害訓練に参加した看護師長を対象に、得られた情報をグループワーク、看護師長会で検討することで、病院全体で取り組むべき役割、看護師長・看護スタッフの役割について問題点が浮き彫りとなった。更にこの結果を基に看護師長会において、災害対策委員長を交えてA病院の規模・対応能力について考慮しながら看護師長の学習会を開催した。看護師長は、BCPを基に多数傷病者受け入れや情報をどのように入手し、状況の判断をしていくのか、次の行動につなげる必要性を理解し、自らの動きを行動レベルで考える機会を設けることで、災害対策がイメージ化された。しかし最も問題となったのは、BCPを理解していないことであった。
BCPは、131項目270ページにわたり、これを理解することこそが災害時に対応できる看護部組織を作る第一歩であると考えた。災害対策本部の一員である看護師長は重要なポジションである。災害時災害対策本部の混乱は、各担当部署の運営に悪影響を及ぼしてしまうことや、災害対策本部取り組みが不足することは、病院全体の進むべき方向を意味しているため、適切な対応が出来るよう訓練が必要である。そこで今年度の看護部が実践する災害体制の取り組みとして、毎月1回計10回の看護師長会を災害対策学習機会と定め、担当を決め災害マニュアルの読み合わせを開始した。災害マニュアル読み合わせ実施後は倫理的配慮から無記名の災害確認テストを実施し提出している。また、看護師長会学習会を今年度4回計画実施していく予定である。
 看護部組織を作る第一歩として、BCP、災害アクションカードの整合性を高め、職員全員で能動的に災害に立ち向かっていけるよう、看護師長の災害対策について今後も継続して取り組んでいく必要があると考える。