第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

トリアージ

[RTD13] RTD(CN)13群 トリアージ

Sat. Oct 5, 2019 10:30 AM - 11:50 AM RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:平山 幸枝(帝京大学医学部附属病院)

[RTD13-5] JTASに基づく院内トリアージの実施率と質向上に向けた取り組み

糸数 卓弘 (医療法人沖縄徳洲会 南部徳洲会病院)

当院の救急外来では2015年から、院内トリアージ支援システム(以下JTAS)による院内トリアージを開始しています。院内トリアージには専門的な知識が必要で、患者さんの安全を守るためにアンダートリアージを避け、医療資源の有効活用のために妥当性のある判定を行う必要があります。しかし、当院では勉強会の時間確保が困難で、スタッフへの教育は勤務時間内に行う簡易的な内容であるため、トリアージ判定のスキルはスタッフによって差がありました。そのような状況で、院内トリアージの実施率と質向上に向けた取り組みを報告いたします。
 当院の診療体制として、時間外外来は救急外来の看護師が問診を行います。救急外来看護師の看護師経験年数は平均20.5年と長く、救急外来経験年数は67%が5年以内という特徴があります。
 私は、認定教育課程で初めて、JTASとiPadを使用した標準的な判定方法を学び、自施設でもぜひ導入したいと考えていましたが、教育課程終了後、自施設に戻るとJCI(国際医療評価機構)の認証を受け、JTASによる院内トリアージが開始されていました。しかし、JTASによる院内トリアージは開始されたばかりで、トリアージ判定は個々の経験値によって行われているのが現状だと感じました。そのため、スタッフ全員が標準的なトリアージ判定が実施できる体制を構築する必要があると考えました。
 スタッフ全員が標準的なトリアージ判定が実施できるよう、JTASのアプリを入れたiPadを時間外問診室専用に常設しました。スタッフへ操作方法、判定方法を教育しましたが、数多くの患者さんへのトリアージ判定に、十分な時間的余裕がないことも感じていました。また、トリアージ判定後、緊急性がなければ診察は受付順になります。しかし、これからはトリアージを行う看護師が、診察の順番を変更できるよう判定の根拠を説明できるレベルに達するべきだと強く思いました。
 トリアージに関心が持てるよう次は違う視点からのアプローチが必要と考え、トリアージ実施率の調査を行いました。実施率の結果は80%台でした。スタッフへ口頭でトリアージ実施の周知を行いましたが、実施率の向上は一時的なものでした。トリアージ未実施症例を分析すると、問診テンプレートが複数あり実施者により使用するテンプレートが異なりました。そこで、改善策として、複数のテンプレートを1つに集約したところ、実施率は97%以上に上昇しました。実施率のモニタリングは毎月継続し、低下の要因があれば改善策を検討し実行しています。
 トリアージ実施率が上昇したため、平成30年4月からトリアージ判定の質向上の取り組みを開始しました。私が、朝礼後スタッフに対して週に1回1症例、5分程度でトリアージ検証用紙を使用し、振り返りを実施しました。振り返りの内容として、私がどのように臨床推論を行いトリアージ判定に至ったのか、思考過程をスタッフに説明しました、開始から3ヶ月後には、スタッフにも振り返りを実施していただいております。
 平成30年1月から8月まで、毎月150症例を無作為抽出しトリアージ判定のサンプリング調査を行いました。その結果「妥当48%」「アンダー33%」「オーバー12%」でした。平成31年1月より実施率調査チーム、質調査チームを作り役割を移譲しました。質調査ではスタッフへ毎月、前月のサンプリング調査対象者を10症例ずつ割り当て、JTASの判定結果に沿っているか振り返り調査をしていただいております。現在では、トリアージ判定の振り返りをスタッフ同士で検討する姿もみられるようになりました。