第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

特定医行為・地域連携

[RTD14] RTD(CN)14群 特定医行為・地域連携

2019年10月5日(土) 13:30 〜 14:50 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:川谷 陽子(愛知医科大学病院高度救命救急センター)

[RTD14-4] 救急看護認定看護師が在宅医療に関わる意義を検討する~地域医療での実践を通して~

磯本 一夫 (長門総合病院訪問看護ステーション)

【はじめに】
 A市は、高齢化率が40%を超えており、在宅医療に関る医師の高齢化や勤務医師の不足という問題を抱えている。私は、A市で基幹病院の役割を担うB病院に所属し、救急看護認定看護師(以下、認定看護師)を取得後、院内の訪問看護ステーションに配属された。現在は特定行為研修修了者として地域で活動している。日本看護協会は、2020年より特定行為研修を組み込んだ認定看護師教育課程を開始するにあたり、新たにクリティカルケア分野に期待される能力を設定した。私は、看護実践において、認定看護師の能力が地域医療の場で十分に活かされることを実感している。以下に、在宅療養者の状態変化時の対応から、認定看護師が地域医療に従事する意義を検討したため報告する。
【目的】自身の経験から認定看護師が地域医療に従事する意義を検討する
【倫理的配慮】当院倫理委員会の承認を得た
【結果と考察】
 C氏は、80代男性で後縦靭帯骨化症のため下半身不随があり、尿道バルーンカテーテルを留置中。主介護者は高齢の妻で、訪問看護は清潔の援助や排泄ケアのために介入している。
 休日待機日に、C氏の妻から食欲不振と点滴希望の連絡を受け訪問した。訪問時、C氏の呼吸が早いことを認識し、早急に一次評価を行った。呼吸回数28回/分でSBPが80台に低下していた。腋窩の乾燥を認めたことから、脱水の補正のため手順書に従い細胞外液の点滴を施行した。また、病歴聴取で悪寒を伴う発熱があったという情報から重症感染症を想起し、q₋SOFA2項目以上で敗血症を鑑別診断に挙げた。C氏の病院受診に対する意思決定支援は、本人の意向を確認しながら重症化のリスクを伝えることで行った。また、介護タクシーが休日に動かないことや、臥床状態での移動が必要であることを話し合い、病院への救急搬送をC氏と共に決定した。係りつけ病院への状態報告と受け入れ調整、救急隊到着時の状態報告やケアマネージャーへの報告を行い、受診後に尿路感染症の診断で入院した。以下に、本事例での対応をクリティカルケア分野において期待される能力に併せて検討する。
 迅速な病態判断から、タイムリーな細胞外液点滴施行までの場面では、「あらゆる場で急性期にある患者の症状及び重症度・緊急度に応じて、高い臨床推論力と病態判断力に基づき、問題の優先順位を迅速に判断し、適切な初期対応を行うことができる」と、「急性かつ重篤な患者の健康問題をアセスメントし、高い臨床推論力と病態判断力に基づいた重篤化回避及び早期回復の向けた実践を行うことができる」の項目が該当する。
 受診に繋げる意思決定支援から、搬送手段決定までの場面では、「あらゆる場で急性期にある患者と家族に対し、心理・社会状況をアセスメントし適切な支援を行うことができる」の項目が該当する。
 係りつけ病院の受け入れ調整から、救急隊到着時の状態報告やケアマネージャーへの報告の場面では、「クリティカルケア分野において、多職種と協働しチーム医療のキーパーソンとして、役割を果たすことができる」の項目が該当する。また、一連の患者対応を通して、「クリティカルケア分野において、患者・家族の権利を擁護し、自己決定を尊重した看護を実践できる」の項目が該当した。在宅医療の場において、認定看護師の能力の重要性が示唆された。
【おわりに】
 現在、認定看護師が実践する場の多くは病院である。今回検討した結果から、認定看護師が地域医療の場で実践することの意義は非常に大きいといえる。更なる高齢化に伴い、在宅医療へのニーズが増していく中で、多くの認定看護師が地域で活躍できることが望ましい。