第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

特定医行為・地域連携

[RTD14] RTD(CN)14群 特定医行為・地域連携

2019年10月5日(土) 13:30 〜 14:50 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:川谷 陽子(愛知医科大学病院高度救命救急センター)

[RTD14-5] 救急領域の意思決定支援における取り組み

村松 武明1, 尾田 優美子2 (1.聖隷三方原病院 高度救命救急センター, 2.社会福祉法人 聖隷福祉事業団  訪問看護ステーション細江)

【はじめに】
 救急外来では、急な体調変化や事故など外傷で重症な状態で救急車搬送されることがある。患者本人の意識が不明瞭で受け答えができない場合は、家族などに病状説明や治療について説明し、患者に変わって代理意思決定をすることになる。しかし、多くの場合は、急なことで動揺が強く現状を飲み込めないことや、患者本人ともしもの時について話しをしていないことがあり、「お任せするしかない」といった返答となることがある。A病院と密に連携しているB訪問看護ステーションにおいても、利用者の救急受診の場合、どこまでの治療を望むのか、本人の意思が家族も含め曖昧なことが多い現状があった。救急と在宅医療の連携充実には、意思決定と表明が重要な課題の一つとしてあげられており、意思決定と表明に対する支援が重要であると考え、救急看護の立場から支援体制の構築に取り組むことにした。

【目的】
 患者本人が病気や外傷などで「もしもの場合の治療」について意思決定と表明ができるための支援体制を構築する。

【具体的な活動内容と結果】
 B訪問看護ステーションと協働し、意思決定支援プロジェクトチーム(以下チーム)を立ち上げ、訪問看護ステーション利用者を対象として意思決定支援シート(以下シート)作成に取り組んだ。チーム員は、病院・訪問看護師、大学教員、社会福祉士、地域包括ケア施設職員、介護福祉施設職員から構成し、シート作成には、チームの中でワーキンググループを立ち上げた。

 シートについては、すでに取り組んでいる地方自治体があり、複数の自治体の担当者と地域の医療や意思決定における現状や問題点など検討の場を設けた。検討からの意見やチームで会議を繰り返し作成した。また、作成と並行しA病院看護師、地域の訪問看護ステーション、介護福祉施設、ケアマネージャーなど地域の医療・福祉に関わる職員を対象に意思決定支援における研修を行い、加えて使用していく訪問看護師へは、意思決定支援やシートの学習会を複数行った。さらに、医師会やB訪問看護ステーションで診療を依頼している診療所や病院などにも説明し理解を得られるようにした。どの職種においても意思決定支援の重要性を理解でき、訪問看護師がシートを使用し展開する意思決定支援についても賛同を得ることができた。

 シートは、完成し運用開始となった。しかし、開始3ヶ月後の訪問看護師への聞き取りでは、「どのように話し始めていけばいいか難しい」や「聞き取る内容が重複して進め方に困る」など使用していく上で困難な意見が聞かれ、シート使用が円滑に進んでいない現状がわかった。

【評価と今後の課題】
 シートは、訪問看護の中で円滑に活用できていない現状がある。その要因の一つとしては、利用者と関係性が保たれていても、意思決定支援に対してこれまで実践経験がなく、何をどこから話しをすれば良いのか、話しをする一歩が大きな壁であると考えられた。そのため、シミュレーションなどトレーニングを活用し訪問看護師が少しでもイメージ化できるよう働きかけていく必要がある。また、シートの見直しをすること、利用者をはじめとした地域住民への救急医療の実際を理解してもらい、意思決定について考える機会を作ること、意思決定に関わることが多くなるケアマネージャーに対しても意思決定支援における研修の開催などが必要になると考えている。