第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

重症患者看護

[RTD2] RTD(CN)2群 重症患者看護

2019年10月4日(金) 14:00 〜 15:00 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:青木 梢(公益社団法人日本看護協会 看護研修学校)

[RTD2-4] A病院における特定行為研修を修了した看護師の呼吸器離脱に関する介入で気管切開・失声を回避できた一例

本田 弘志, 平野 里美 (霧島市立医師会医療センター)

【目的】2025年問題に向け、保健師助産師看護師法37条改訂による特定行為研修受講で、平成27年10月より手順書に基づく特定行為が可能となった。今回、特定行為研修を修了した看護師が、ICUのないA病院において特定行為実践を行い、呼吸器離脱及び気管切開・失声を回避できた一例を経験した。本症例を振り返り、特定行為実践の評価とA病院における活動の示唆を考察する。

【倫理的配慮】収集したデータは個人が特定されないように記号化し、電子媒体にて厳重に管理、個人が特定されないよう配慮、学会発表することの同意を得た。

【症例】80歳代女性、腹痛、嘔吐を主訴に201X年B月C日かかりつけ医を受診。小腸イレウス疑いでA病院紹介となった。来院時、明らかなイレウス所見はなく、腸炎に伴う亜イレウスと診断。既往に橋梗塞、 顔面多発骨折術後と気管切開歴、低酸素脳症があった。

【方法】第6病日より介入開始。主治医と全身状態を確認し、IPPV設定変更、鎮静剤投与量変更、意識覚醒トライアル(以下SAT)、自発呼吸トライアル(以下SBT)の特定行為指示書を共同で作成、1回/日トライアルし、主治医、院内呼吸サポートチーム及び病棟看護師、担当理学療法士と連携、呼吸器離脱を目指した。

【結果】患者は来院時よりⅡ型呼吸不全を認め、入院後2日目より意識障害とアシドーシス進行からNPPV使用開始。改善なく気管挿管+IPPV導入された。既往から気管狭窄があり、気管切開が検討されたが気管チューブ抜去困難になる可能性があった。家族は低酸素脳症や気管切開から回復した経験から、呼吸器離脱への希望が強く、気管カニューレ下の生活や失声への不安もあった。第6病日より呼吸筋緩和・呼吸筋維持目的に上下肢モビライゼーションを行った上で、指示書に基づく鎮静量調整、BGA等見ながら人工呼吸器設定とSATを開始。第8病日よりSBTを行った。第9病日にSAT及びSBT60分、第11病日にSBT120分達成し、第12病日に呼吸器離脱、抜管に至った。入眠後のCO2ナルコーシスを懸念しNPPV使用。呼吸リハビリを継続し、PaCO2は60mmHg前後で推移。アシドーシス進行や意識障害再燃なく、第27病日に転院となった。

【考察】特定行為指示書は、厚生労働省平成27年度「特定行為に係る事例集」を参考に、特定行為の対象、病状の範囲、施行中の確認事項や安全対策を検討・作成した。SBTに至る前に酸素化および換気保持目的にPCVよりVCVへ変更しPCO2の低下及びPO2改善が図れた。また夜間の睡眠確保目的に夜間のみミタゾラム使用し入眠が図れた。患者は橋梗塞の既往から、平時のPCO2のベースが不明で、過剰な酸素投与によるCO2ナルコーシスの再燃リスクがあったが、SAT・SBT施行中は再燃に留意し、RASS=-1~0、P/F=121~173、 A-aDO2=228~144と正常域ではなかったが、それぞれ改善傾向を確認、RSBI=50~75で推移し離脱が図れた。
 A病院はICUがなく、担当医が患者の呼吸器離脱を病棟看護師と行う。外来診療や手術時は迅速な診察や設定変更は困難な事もあり、今回特定行為としてベッドサイドでタイムリーな呼吸器設定変更、SAT・SBTが実践・評価でき、家族へも随時、状態説明が行えた事は、患者の呼吸器離脱とともに家族ケアに寄与できた。

【まとめ】特定行為による介入により、人工呼吸器離脱及び予定された気管切開を回避でき、家族ケアの一助にもなった。A病院における特定行為実践で介入の有効性を増やす事で、特定行為実践看護師の専任化が望まれた。